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エピローグsideR

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「……ん」
 朝日昇る部屋。ポカポカとする寝床にエリナの暖かな体温がそばに。
 緩やかな微睡みに包まれ、自分が漸く討伐も王都にいることも必要なくなった事を思い出していた。面倒も嫌なことも全部乗り越えた。

 隣に寝ているエリナを抱きしめ自分の過去を思い出す。

 俺は子供の時、他国との国境にある森で拾われた。
 スキンファクシ騎士団に見つけられた俺は協会の孤児院ではなく騎士団の子として育てられた。エリナのような子供が騎士団で暮らしているからここで見ても変わらないと。小さい奴隷や召使いとしてではなくただの子供として扱ってもらえた。


「……私はずっと一緒にいるからね。ラズも私と一緒にいてね」
 忘れない。忘れられない。
 その声を、言葉を、表情を。

 エリナは捨てられていた俺と一緒にいてくれると誓ってくれた。自分は何者か、自分の存在意義は何かと年齢に合わず考えていた俺はその言葉に救われた。

 その言葉を胸に数年。体格が大きくなって騎士として働き始める。そして、気づいたのだ。自分が、普通では無いことに。エリナの料理の強化が普通では無いことに。でも、エリナがエリナならそれで良かった。

 俺を、勇者だと迎えに来られたのはそれから少し経ってからのこと。そして、そこで俺が魔物の血、それも魔王の血が通っていることを知った。
 小さくもずっとあった違和感が解消された。そうか、そうなのかと大きく納得した。自分の中に疼く力はいつも倒す彼奴らの。だけど、正直に言えばそれをそれ以上に重く取ることはなかった。エリナの力がやはり特殊な能力だと知ってもそれは変わらない。俺にとってはエリナが隣にいてくれればそれ以上の情報はいらなかったから。

 俺は途中フレドリッヒに取り引きを持ちかけた。俺はエリナと辺境に居たい、フレドリッヒは自分が王となった時に力になる者が欲しい。同時に叶えられればと持ち出し彼に了承された。

 そこからは覚えていられないほど早かった。ドゥランの転移魔法が強すぎたのだ。フレドリッヒも俺も剣の一太刀で倒せるほど魔物は衰弱していたし、体力や体に何かあってもヴィニーアが治癒してくれたのだ。
 旅自体はエリナの飯がいつも通り美味かったこと以外、特に特筆することも無い。わぁわぁと喚く者を薙ぎ倒し、脅し、殺した。俺の身を外へ捨てたものたちを屠ったはずなのに感慨もない。そんなことより、この後に行うエリナを手に入れる計画の方が気になっていた。


 ……ああ、でも、計画が上手く行ってよかった。必要以上の犠牲を出さなかったのだから大成功だ。エリナが思っていたより靡いてくれたのも計画に良かったのだ。もし誰かに妨害されていたら、俺がどれ程そいつに被害を与えるか分からない。


 あいつらに渡したりなんてしてたまるか。
 エリナは俺にとっての女神だから。

 髪を一筋とって小さく口付けをした。俺以外誰もいない誰も気づかない、そんな今。隠しきれない気持ちが顕になって自分がそのままの姿になったような気持ちを持って。

「エリナ……愛してる」
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