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3-1 休息の訪れ

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 馬車が私を揺らす。ご飯や休憩の時間はあったが特に関係が進むことも会話も無く、数時間かかって街の宿らしき豪奢な建物の前で止まった。
「私たちはここで1晩休んで、明日王城へ向かいます」
「ああ。分かった」
「部屋は5部屋お願いしていますの。ラズ様、貴方様、御者の3部屋、私たち用としては2部屋」
「2部屋?」
「私とエリナ様は同室にいたしましたの。エリナ・フランシュ様がお嫌でしたら私の侍女でありますのでアリナと同室にいたしますけれど」
「……好きにしたらいい」
 王子様はペトラ様を当たり前のようにエスコートされて馬車を降りていく。口調は冷たいが動きは慣れたように綺麗だ。

「あいつらなんなんだよ。ずっと喧嘩腰でいやがって。めんどくさい関係してんな。はぁ……エリナ。手は握らないで置くようにしてくれ」
「あ、うん。ありがとう」
 私たちも彼女たちと同じようエスコートのため、手を取る。こんな服で良かったのだろうか。ソワソワと慣れない感覚をもって彼女たちに着いていく。高級そうな木で出来た家具が置かれ、ふかふかとしたカーペットが敷かれた宿は多分この国の中でも1級品のようだ。何もかもが違う。

「では、ラズ様、フレドリッヒ様、また明日お会いしましょう。私たちは今日は疲れもありますから部屋で夕食にいたしますので」
「そうだったのか。まぁ、それもそうだな。エリナ、おやすみ」
 チカチカと凄い景色に押されていると別れの時間となっていた。ご飯も部屋もそうなんだと何もかもが事後報告だ。

「えっと……うん。おやすみなさい」
「ペトラもしっかりと休息を取るように」
「……っ!え、ええ。もちろん。御手を煩わせるような真似はいたしません」
「それならいい。ではまた明日」
 彼らはくるりと踵を返して部屋へ向かっていく。

 私らそのクラクラとしているまま、ペトラ様とアリナさんに連れられ2階の端にある部屋に着いた。
 パタンと扉を閉じられて漸く3人だけになるとペトラ様は酷く疲れた顔を晒す。

「……エリナ様はここまでの道の何もかもを知らないのですよね。ごめんなさい。ご説明をしなければですよね。私からできる限りのお話をさせていただきますわ」
「え?」

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