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第一章

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 ピピピピっピピピピっ

 「ふあ。眠い」

 起き上がって伸びをして、未だ鳴っている目覚まし時計を止めた。

 私の名前は朝日奈あさひな美結みゆ。乙女ゲームを元にした世界に転生しちゃった転生者だ。ちなみにモブ。転生してしまったことに気づいた初めの頃は、前世の記憶があることに絶望していたけど、今となっては受け入れることが出来ている。私が受け入れることが出来た理由は、まあ、今はいい。

 パジャマを脱いで、今日から通う高校の制服に袖を通して、キュッとブラウスの上から細いリボンを結ぶ。左右均等にリボンが結べたことを鏡の前で確認。そのまま、今世の亜麻色の髪を櫛でとかしていく。そう、私は今日から二度目の高校生なのだ。
 髪をとかし終わったら、唇にリップを塗る。私が通う高校は校則が緩いらしいからメイクはしても良いらしいけど、まだ高校生だし肌もきれいなのでメイクはしない。だから、身だしなみの準備はほぼ終わり。
 鏡に映る今の私を見ると、宝石のような水色の目がこちらを見ている。亜麻色の髪に、パライバトルマリンのような目。それが今の私だ。この宝石のような目は結構気に入っていたりする。この姿を見ていると、前の私とは違うって思うし、この世界が前の世界とは違うって分かる。乙女ゲームらしく髪や目がカラフルなのだ。鏡でおかしなところがないかをもう一度入念に確認して、ニッコリと笑う。

 「さて、と。起こしに行きますかね」

 私の部屋から出て、その隣の部屋のドアの前に立つ。コンコンとノックをして呼びかけるけど、やっぱり返事がない。一応、「入るよ」と声をかけて遠慮なくドアを開けて、部屋に入ると、気持ちよさそうに眠っているこの部屋の主がいた。まったく、と心の中でため息をつく。

 「お兄ちゃん!起きて~!!朝だよ!」
 「んーあとごふん」

 カーテンを開けて、軽く体を揺さぶって声をかけるけど、全然起きようとしない。思わず、むぅと口を尖らせる。結構大きな声で呼んだんだけど。

 「こうなったら…」

 お兄ちゃんのベッドに乗り上げてお兄ちゃんの上にまたがるように勢いよく乗っかった。

 「お兄ちゃん!朝だってば!遅刻しちゃうよ?」
 「ぐぇっ……美結」

 お腹へのダイブはキツかったのか、ミルクティーベージュの髪をかきあげて、翡翠の目で恨めしそうにこっちを見るお兄ちゃん。優しく起こしてる内に起きないからだよ。

 「あ~眠……美結も一緒に寝るか?」
 「もう!起きてってば」

 それでも起き上がる気配のないお兄ちゃんに、そのままの体勢で体を揺らした。

 「あーわかったわかった。起きるから。美結は自分のことしていいぞ」
 「うん。お兄ちゃんも、起きて着替えたら降りてきてね」

 この寝起きの悪い男が私のお兄ちゃん、朝日奈直生なお。私と同じく、この乙女ゲームでは出てこない完全なるモブだ。しかし、私は未だにお兄ちゃんがモブであることを何故なのか疑問に思っている。だって、お兄ちゃん、妹の私から見ても、イケメン、性格も良し、安定した収入、と超優良物件だ。ブラコン?なんとでも言え。
 私が転生したこの乙女ゲームは【煌めきのloverライフ】、通称【キララバ】は舞台は私立高校。私が今日から通う高校で、その周辺の街なども一部含まれている。イベントが盛り沢山だから仕方ない。そして、【キララバ】は攻略対象者が多いことで有名だった。確かキャッチコピーが、「きっと見つかるあなたの推し」だ。つまり、だ。学園モノ、攻略対象者はたくさん。それで分かるように、攻略対象者には「大人の魅力枠」として、教師も含まれているのだ。ここまで来るともう分かると思う。お兄ちゃんは、【キララバ】の舞台で、私が今日から通う高校の、教師だ。

 (本当に。何でお兄ちゃん、攻略対象者じゃないんだろう)





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