【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

婚姻届け １

「結婚するって、簡単なんだね」

役所に書類を出して受理された私達は、婚姻届受理証明書を受け取った。
私は正式に、高代紗栄子になった。

「結婚するのは簡単だけど、離婚は大変よ」

「俺から言い出すことはないから、心配するな」

一応、入籍前に専門学校の伊藤先生を通じて相談した。
プライベートには、関与しない。
勉強に差し支えなければ問題は無いとの事で、安心している。

驚いたのは、彼がラジオの生放送で結婚発表をしたことだ。
アシスタントの女性アナウンサーは聞いてなかったようで、しどろもどろになって番組は終った。

週末のNetTV番組では冒頭に発表があり、花束を受け取っている。
どんな奥様ですかと聞かれて、お金に無頓着な人ですと答えていた。

日曜日に、二人で銀座の宝飾店に行った。
ピンクダイヤモンドの指輪を、私のサイズに直して頂いた。
彼の父親が購入した店だったので、快く引き受けて頂き、完璧な仕上がりだった。
対応してくれた係が、今では手に入らない品です。
大事になさってくださいと、言っていた。
相当な価値があるんだろう。

私がパンを作るのに邪魔で、普段は指輪をしない。
結婚指輪は保留になり、ネックレスか時計で迷っている。

彼がアメリカで結婚式をあげると言うので、パスポートの変更も手続き中だ。
他にも、生命保険、運転免許証、クレジットカードなど、面倒な手続きに追われている。

その夜の便で、彼が渡米した。
結婚式や披露パーティーなど、決めてくるようだ。
こっちは全てお任せなので、気持ち良く送り出した。

一人の間は、自分の部屋に戻って生活する。
寂しいが、自分のペースでいいので息抜きになるだろう。