268 / 275
3
しおりを挟む
「祐樹さんてお金持ちだとは分かってたけど、本物のお坊ちゃんだったのね」
釣書を見た母は、資産よりも育ちの良さに興味を持っていた。
私がお正月に行った実家の話をすると、納得した顔をしている。
母親と一緒に、夕食の用意をしていた。
尾頭付きの鯛が、大皿にお造りになっている。
さっき近所の魚屋さんが、配達してきたようだった。
祖父母、両親と私たちで、ささやかな宴会を楽しむ。
家庭料理に飢えている彼の為に、自宅で開くことにしたようだ。
母の作った煮物や炊き合わせが一緒に並んだ。
我が家はみんな、酒が強い。
祖父と父親は麦焼酎、私たちと母は日本酒を飲んだ。
お酒もすすんで一息ついたところで、彼がいきなり切り出した。
「結婚式は、外国でもいいですか?」
「何処か、あてがあるの?」
私も聞いてなかった。
「アメリカの大学時代に辛いことが有ったら、チャペルのミサに参加していたんだ。
信者では無かったけど、参加は自由だった。
結婚式も行われていたのを、遠くから見たことがあるんだ。
現地に、下見に行こうかと考えてる」
「紗栄子の為なら、世界中どこでも行くぞ」
「そうね、たまには海外旅行もいいわね」
私より、両親の方が乗り気のようだった。
「東京では、友人を呼んでパーティーを開きたい。
もちろん、彼女とよく打合せしてからです」
彼の話を黙って聞いている。
私の事を考えてくれているのが、十分過ぎるほど伝わっていた。
「紗栄子も過去の反省を活かして、君との事を考えているようだ。
娘を頼む」
父の言葉が、私を包んでくれた。
「過去が有って、今があるんです。
俺は、今の紗栄子さんが好きなんですよ。
幸せにする努力は、全てする覚悟です」
彼の力強い宣言に、涙が溢れて止まらなかった。
釣書を見た母は、資産よりも育ちの良さに興味を持っていた。
私がお正月に行った実家の話をすると、納得した顔をしている。
母親と一緒に、夕食の用意をしていた。
尾頭付きの鯛が、大皿にお造りになっている。
さっき近所の魚屋さんが、配達してきたようだった。
祖父母、両親と私たちで、ささやかな宴会を楽しむ。
家庭料理に飢えている彼の為に、自宅で開くことにしたようだ。
母の作った煮物や炊き合わせが一緒に並んだ。
我が家はみんな、酒が強い。
祖父と父親は麦焼酎、私たちと母は日本酒を飲んだ。
お酒もすすんで一息ついたところで、彼がいきなり切り出した。
「結婚式は、外国でもいいですか?」
「何処か、あてがあるの?」
私も聞いてなかった。
「アメリカの大学時代に辛いことが有ったら、チャペルのミサに参加していたんだ。
信者では無かったけど、参加は自由だった。
結婚式も行われていたのを、遠くから見たことがあるんだ。
現地に、下見に行こうかと考えてる」
「紗栄子の為なら、世界中どこでも行くぞ」
「そうね、たまには海外旅行もいいわね」
私より、両親の方が乗り気のようだった。
「東京では、友人を呼んでパーティーを開きたい。
もちろん、彼女とよく打合せしてからです」
彼の話を黙って聞いている。
私の事を考えてくれているのが、十分過ぎるほど伝わっていた。
「紗栄子も過去の反省を活かして、君との事を考えているようだ。
娘を頼む」
父の言葉が、私を包んでくれた。
「過去が有って、今があるんです。
俺は、今の紗栄子さんが好きなんですよ。
幸せにする努力は、全てする覚悟です」
彼の力強い宣言に、涙が溢れて止まらなかった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる