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「明けまして、おめでとう」

正午、時間通りに田島圭吾氏はやって来た。
手土産に、冷凍されたタラバ蟹の脚を持って来ていた。

「紗栄子さん、今日はまた渋いお着物ですね」

「佑樹さんのプレゼントです」

「若い人が渋い着物を着るのも、またいいものです」

中央におせち料理が、置かれたテーブルに案内した。
ジャケットを脱いで、セーター姿でリラックスして貰う。

最初に、お屠蘇を飲む。
お酒を入れた片口に屠蘇袋を入れて、代用した。
お猪口に注いで、順番に飲んだ。

お雑煮は、家によって全然違う。
彼に聞いたが覚えが無いと言うので、私のやり方で作った。

「お餅が丸くて、焼いてある」
田島氏の実家は、切り餅でそのまま煮たお餅が入っていたようだ。

「正月にどんなお雑煮を食べていたか、記憶に無いんだよ」
彼の子供時代が気になった、何を食べてたんだろう。

お腹が落ち着いたところで、シャンパンを出して乾杯した。
おせちの重を広げて、自由に食べて貰う。
私は、ナマコの小鉢と筑前煮の大鉢を並べた。

彼が立ち上がって、日本酒を出してきた。
ナマコに合わせるようだ。
筑前煮も欲しいと言うので、鉢に装った。

相当なお値段のおせちに、余り手をつけない。
彼が、昨日の天ぷらの話をしていた。
家に居たから呼んで欲しかったと、田島氏が言う。
俺たちの邪魔をするなと、彼が言って笑った。

彼から聞いた話では、田島氏は日本の銀行から外国銀行に転職した。
そこから世界有数の経営コンサルティング会社に、スカウトされていた。
相当に優秀だが、恋愛は不器用らしい。
仕事が恋人タイプだった。

「あの会社に勤めてると、モテるでしょう?」

「会社名に釣られる女性しか、寄って来ません」
田島氏も、彼と同じ様な事を言った。

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