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「紗栄子さん、また御一緒出来て嬉しいです」

8月最後の日、私は高代佑樹氏とビアガーデンに来ていた。
夏の終わりを、此処で見送りたい。

「明日から、学校が始まります。
この夏の思い出に、もう一度来たかったんです。
お誘い頂き、ありがとうございます」

「あの時より、夕暮れが早くなっています。
早速、乾杯しましょう」
ジョッキを軽く合わせて、乾杯する。
まだ暑いが、野外で飲むビールは最高だ。

直ぐに空は暗くなって、ビルの明かりが煌めいている。
運ばれてくる料理に合わせて、ビールが替えられる。
ジョッキより小さめの、フルートグラスで頂いた。

「高代さんが、TVに出演されているのを拝見しました。
堂々とお話されていたのに、驚いてます」

「友人のプロデューサーに頼まれて、仕方なく出演しました。
経済番組と聞いてましたが、ワイドショーでしたね」

「ちょっとだけ、FIREという言葉の意味が判りましたよ」

「欧米ではもう当たり前の考え方ですが、日本ではまだ異端児扱いです」

「この国は、古い価値観に支配されてますから」

「紗栄子さんが感じる事がありますか?」

「勿論です。
医者と離婚したので、実家には帰れません」

「まあ両親からすれば、将来安泰と思ったでしょうね」

「私が旧姓に戻らなかったのも、大きいです」

「なるほど。
旧姓に戻るのが当然と考えてる人が多いのは、確かですね」

「ところで、作戦は成功しましたか?」
智貴との逢瀬について、聞かれる。

私は3泊4日の出来事を、簡潔に話した。


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