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夏休み 1

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「夏休みに2回、オープンキャンパスがあるの。
八神さんに手伝って欲しい」

去年、私が入学する相談に乗ってくれた、伊藤先生に頼まれれば断れない。
一つだけ条件を出すと、快諾してくれた。
第1、第4日曜日に、参加者の実習経験のサポート役を務める。
社会人の担当で、参加者の質問に答えたり、作業のアドバイスをする予定だ。

夏休み初めの5日間と終わりの5日間は実習室が使えるので、2回ほど自習グループが使う申請を出した。

夏休み最初の木曜日、自習グループの皆が集まった。
休み中なので、14人と普段より少ないがやる気のメンバーばかりだった。

みんな自分の好きな食パンを作る。
私は、ライ麦を4分の1ほど加えたパンを作っていた。
前日から仕込んでいた醗酵種を保冷バッグから出して、今日の材料に混ぜ合わせる。
一生懸命にこねてると、武尊がやって来た。

「また、人と違うことしてる」

「ライ麦パン、何度も失敗してるんだ」

「グルテンが無い分、難しいよ」

「今日は無理をしないで、ライ麦の分量を減らしてみた」
一生懸命こねて、発酵。3倍くらいに膨らんでいる。
成型して2次発酵、オーブンで焼きあげる。

2個作ったので、ひとつを試食する。
薄くスライスして、みんなに食べて貰った。

「ライ麦パンって、体にいいんですよね」
麻未が聞いてくる。

「体に良くても、美味しくなきゃダメなんだよ」
私は今日のパンを噛みしめて、言った。

「残った分、俺にくれない?」
武尊が欲しがったので、あげた。

本当は、高代氏にあげるつもりで作った。
だけど、人にあげるレベルじゃない。

夏休みは、ライ麦パンを食べ続ける羽目になりそうだ。
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