【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

４

「伊桜君が、告られたって知ってます？」

椎乃天音が私に聞いた。
全く、知らなかった。

天音の話では、告白したのは製菓学科の学生だった。
その子は、入学前の奨学金授与式から伊桜君に恋心を持っていた。
想いを抑えきれずに、伊桜君に告白したのだ。

「それで、どうなったの？」

「好きな子がいるって、断わってます」
そっちの方が気になる。

好きな子って、誰？

以前に、今は彼女がいないって話していた。
あれから、一月以上経っている。
その間に、稜也はレストランでアルバイトを始めている。
うちの学生とは、決めつけられない。

「間違いない話なの？」
一応、確認した。

「告白した子の友達が、私の同級生なんです。
直接、聞きました」

「ありがとう、教えてくれて」

「八神さん以外には、話してません」

「その方がいいかもね」
どうせ話は広がるだろうが、わざわざ言う必要はない。
プライベートな話だ、知らない事にしておく。

昼休みになると、色々と話が入ってくる。
誰と誰が付き合ってるとか、もう別れたとか。
系列の調理師学校の学生と合コンするので、参加者を募っていたりしていた。
若い子が集まると、恋の話は必修科目だ。

私は、楽しかった大学時代を思い出していた。