【完結】 悪女は今日もパンを焼く 【R18】

スタート １

カフェは、無事に営業スタートした。

最終点検で出た問題点を解決するために、席が２割減らされた。
キッチンが、料理の出来上がり時間を守れるまでの処置だ。
これにより、フロアメンバーの不足も解消される。

ただ２ヶ月の暫定措置だ。
その間にキッチンは効率化して、フロアは人を確保しなければならない。

白のブラウスは、胸にスペイン語のロゴが書かれている。
黒のパンツに、腰にエプロンを巻く。
この制服も可愛くて、お気に入りだった。

ただ２３時までの勤務なので、駅から家までが怖い。
自転車を買おうか、検討している。

４月に入ると、グローバル製菓専門学校の入学式がある。
第一日曜日に、学校の近くの貸会議場で行われる予定だ。
父兄も参列出来るので、大きな会場を使う。

私は、一人で参加する。
八神智貴が凄く参加したがったが、丁重に断った。

３月の終わり、山下美優ちゃんと食事をした。
新橋の個室居酒屋で、魚料理を注文して日本酒を飲む。

「紗栄子さんが辞めて、寂しくなりました」

「学校が始まるから、仕方がなかったの」

「入学前から、あんなパンが焼けるなんて凄いです」

「美味しかった？」

「美味しいし、食べごたえがありました」

「今日も食べてもらおうと、持って来た」

「頂いていいんですか、嬉しい」

その後、恋の話や新しい店の話、美優ちゃんの就活事情まで、いっぱい話した。
心に溜め込んだ事を吐き出したので、心が軽くなった。
東京で一人暮らしすると知らないうちに、ストレスが溜まる。

話を聞いてくれる友人のありがたさが、身に沁みた。