上 下
5 / 28
第1部

GW 2

しおりを挟む
駅を出て繁華街に向かうとすぐに、お目当てのカラオケボックスがあった。

受付で部屋を確認してパーティールームに入ると、もう歌が始まっている。
見回すと粟田 璃乃アワタ リノ下村 若葉シモムラ ワカバが手招きしている。
隣に座って部屋を見廻すと、クラスメイトが10人ほど集まっていた。

「この前は怒鳴って悪かった。ちょっとイライラしてて」
誰かが絶叫して歌う中、隣の粟田に謝った。

「童貞をこじらせてるから、イライラするのよ。今から抜け出して、私とホテルに行く?」
顔を近づけて耳元で囁く。

まったく想像してなかった返しに、一瞬、理解出来なかった。
必死に、童貞、ホテルとワードをつなぎ合わせる。
確認するように粟田の顔を見ると、ニコニコしている。
こっちは頭の中が真っ白で、返事が出てこない。

下村が歌うバラ―ドの間に、少し冷静になる。
粟田璃乃は、「今のは冗談よ」とかは絶対に言わない。
クラスの女子で一番性格が大人で、同級生から魔女とか呼ばれてる。
そんな彼女がホテルに行くということは、SEXをするということだ。
どうする、どうする、いくら考えても答えが出ない。

「即答しないってことは行かないってことね。弱虫」

「ごめん」それしか言えない。

「まだ、織田 沙也加オリタ サヤカのこと、引きずってる?」

粟田が思ってもみない名前を出したので、怒りが沸き上がる。

「織田先輩の名前を出すな。」
つぶやくように答える。

「怒るってことは、図星?」
彼女の一言一言がナイフのように心を傷つける。

「何故、そう思う?」俺が聞く。

「二年も貴方に片思いしてるのよ。それくらいわかるわ」

もう何も言葉が出てこなかった。 
盛り上がる会場の中、一人殻に閉じこもる。
それでも順番が回って来たので、1曲歌う。
歌は得意じゃないけど、モジモジするのが一番ダサいのでさっさと終わらせる。

「私のためにラブソングぐらい歌って欲しかったなあ」
最後にトドメを刺された。

カラオケ大会もお開きになり、いつもの連中と駅に向かう。
鈴木が下村を無理やりデートに誘って、俺たちと別れた。
二人になって俺が切り出した。

「2年も片思いって、気がつかないでゴメン」

「ホテルに行こうって誘いはまだ生きてるわ。私じゃだめ?」

「嫌じゃない、嬉しかった。ただ今のままの俺じゃお前に失礼だ。」
自分なりに出した答えを話す。

「わかったわ。今日はキスで許してあげる」

俺は、唇にチュっと中学生みたいなキスをした。

「いつまでも待てないから、夏休みに入るまでに結論を出してね」

彼女は期限を切って、俺とは別方向のホームに消えて行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...