上 下
226 / 323
第十三章 変革

11

しおりを挟む
「来週の収録は、大変だぞ。
財界有数の大物がいる銀行がある。佐藤頭取が会ってくれるかな?」
田中社長が嬉しそうに脅してくる。

「女性で訪問になってるから、一縷の望みはあるかもしれない」
俺は微かな期待が有った。

3月のJLWまでに収録を終わらせる為に、週に2本ペースで収録が行われる。
当日、事務所で月奈が限りなくナチュラルに見えるメイクをしてくれた。
ロケバスに乗って、都市銀行本店の営業部に到着する。
広報部の女性マネージャーが出迎えてくれた。
すぐに窓口行員用の制服を渡されて、更衣室で着替える。

「さすがにモデルさん、着こなしが完璧ですね」

「ありがとうございます。
こういう機会はもう無いと思うので、楽しみたいと思います」

お客様の邪魔にならないところで、窓口業務を体験させてもらった。
100万円の帯封付きの束が、まるでゴミの様に転がっている。
異次元の感覚に、ちょっとひいた。

午前中の収録が終わって、社員食堂に案内されると行員さんに囲まれる。
並んでもらって、ツーショットを撮り続けた。
結局、持って来たおにぎりを食べて、午後の収録に入った。
広報の役員と若手の行員に、金融についてレクチャーを受けた。

「ここ1カ月くらい、スマホ決済以外使ってないんです。
これは、もっと進化するんでしょうか?」
自分の感覚で聞いてみる。
流石に、理路整然とした答えが返ってきた。
会議室のドアがノックされて、秘書らしき女性が入ってきた。

「頭取がお会いするそうです、10分でお願いします」
何が良かったかは判らないが、期待してなかっただけに嬉しい。

「本日は訪問の機会を設けて頂き、ありがとうございました」

「休憩時間を潰して、行員の撮影につき合ってくれたそうだな。
室長が報告してくれた。君の行動に感謝する」

「私に出来るお返しは撮影ぐらいなので、別に苦ではありませんでした」

「いい眼をしている。一ノ瀬社長が可愛がるのも判るな」

「ご存知なのですか?」

「ああ、大学の後輩だ」

頭取が握手を求めてきたので、がっちり手を握った。
室長なる人物が、撮影していた。
ここで時間が来て、退場した。

「まさか、頭取と握手出来るとは思わなかった」
番組ディレクターが驚いている。

お約束の質問は、広報の役員が最終面接に残れるとお墨付きをくれた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...