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第十章 成長

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日曜日の深夜、札幌から沙織が帰ってきた。
メンバーのほとんどは翌日帰郷だが、美雪を含めた高校生メンバーは最終便で帰ってきている。

「楽しかった。長崎とここには、お土産を送っておいた」
少し周りに気が使えるようになっていた。

「美雪の両親が観に来ていて、お母さんが泣いてた。
古田美那先輩とデュエットで歌ったのが、嬉しかったんだろうな」

風呂に入れてあがったら、もう居眠りをしていた。
聖苑が髪を乾かして、スキンケアをする。
ベッドに運んで、眠らせた。

翌朝。きついだろうが叩き起こして、高校に送り出した。

……
コンタクトレンズのwebドラマ第6弾が公開された。

原宿の竹下通りを、出雲沙織と加藤みさきが歩いている。
爽やかなワンピースのみさきと、ボーダーTシャツにパンツの沙織が対照的だ。
服を見たり、コスメの店を覗いたり、二人で遊んでいる様子が流れていた。
最後に、金曜日20時に最終話のドラマが公開される予告が出た。

「この3人の関係がやっと分かる」
「本当は誰と誰がつき合ってるんだ?」
「曖昧な結論だと、承知しないぞ」

みんな三角監督の手のひらで踊らされていた。

金曜日の夜、聖苑と二人でモニターの前で待つ。

沙織が自分の部屋で、制服とワンピースを迷っている。
ワンピースを当てて、姿見に映る自分を見ていた。

場面は変わって、陸上競技場のトラックを武内貴史が走っていた。
5000m最後の1周で、4位に落ちてインターハイを逃した。

陸上部に割り当てられた控室のベンチに、貴史が座っていた。
後ろから来た制服姿の沙織が、貴史の背中を抱きしめる。

一瞬の静寂の後、貴史が立ち上がり沙織を抱きしめた。
顔を見合わせると、沙織が眼を閉じた。

二人がkissをする。
離れると、沙織の瞳から涙が流れていた。

ここでドラマが終わった。
俺は、妹のfirst kissを映像で見る羽目になった。

「散々、あちこちでkissした罰よ」
聖苑が言った。

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