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第一章 始まり

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オリエンテーションの最後は、教科書販売とサークルの新人募集解禁だ。

「明日は、本気のスタイリングをしてあげる。
女の子にしてあげるから、一緒に行こうね」

どうやら彼女の中では、俺がメイクで大学に行くことは決定事項らしい。
早速、明日の服装を選んでいる。

「スッピンでもナンパされるんだから、メイクしても一緒でしょ。
その代わり、スカートは勘弁してあげる」
白いニットに、ナチュラルカラーのワイドストレートパンツを合わせて、俺に見せた。

「敢えて、女の子っぽさを抑えてみた。これなら、不満は無いでしょ」
聖苑は、自信満々だ。
俺はメイクして大学に行くなんて、了解して無いんだが。

……

翌朝、俺が作った豚肉と白菜、溶き卵の中華スープとライ麦パンのトーストを食べ終えたら、洗顔して着替える。
聖苑が、俺の顔にメイクをしていく。
俺は黙って、されるままだ。

「蒼海君が気にならないように、ナチュラルメイクにしてみた。
アイラインも引いてないし、チークも塗ってない。シャドウも最低限だよ。
口紅も止めて、ピンクのリップクリームなら安心でしょ」

確かにピンクで明るいメイクに比べて、自然な肌色に感じた。
最後にビューラーで睫毛を上に上げられて、マスカラを塗られて出来上がり。
今までで一番、違和感を感じない。

聖苑は、ネイビーに白のストライプが入ったクラシカルなワンピース。
ストレートな金髪に、切れ長な瞳を強調したメイクが映えている。

二人分の教科書を入れる大き目のリュックを背負って、大学に向かう。
正門に着くと、書店がある学生会館まで両側にサークルのブースが並んでいた。
待ち構えている先輩たちに捕まらないように、集団の後ろに付いていく。

「二人共、スタイルがいいね。うちのサークルに入らない?」
「ショートボブの彼女、名前くらい教えてよ」
「せっかく大学に入ったんだから、サークルに入らないと損だよ」

嫌って言うほど、勧誘される。
聖苑は押しが強い、片っ端から断って行く。
それでも、チラシを差し出してくる手が鬱陶しい。

何とか学生会館に着いて、教科書を購入する。
netで調べた結果、専門書は二人で一冊あればいい。
聖苑が買って、俺は借りることにした。
必要になれば、古書店で買えばいいし。
俺は、英語やフランス語、一般教養のテキストだけを購入した。

専門書と教科書類をリュックに詰めて、俺たちは騒然とする中をもう一度通り抜けた。

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