上 下
119 / 323
第七章 紆余曲折

11

しおりを挟む
土曜日は大阪のサイン会を終わらせて、新幹線で博多に入った。
久しぶりに家族が来ていて、一緒に食事をする。

泊まっているホテルの和食レストランで、鍋料理を頂く。
両親と姉、俺で乾杯した。
月奈も一緒なので、妹がメイクをして欲しそうにしている。

「沙保里、メイクしてもらいたい?」顔を真っ赤にして、うなずいた。

「真凛ちゃんと同じ系統の顔だから、美人になるよ」
月奈がメイク道具を拡げた。
手際よく、プロのメイクが進んでいく。
出来上がって手鏡を渡された妹が、自分の顔を見ている。

「自分じゃないみたい」

真凛が高校生ならこういう感じだろうなっていう顔になっている。
家族全員から褒められて、みんなから撮影されていた。
月奈は、姉も母もメイクを手直しした。
みんなプロの技に驚いていた。

「兄貴のおかげで、俺も大学に行く」弟の拓海が言った。

「俺のおかげじゃない、親に感謝しろ」

「判ってる」
ちょっと見ないうちに、ガキから男になっていた。

家族でスマホ撮影会になった。
弟と妹に腕を組んで撮影してやった、高校で自慢するつもりだろう。
見せてもいいが、コピーや受け渡しは禁止しておいた。
あれほど心配していた母が、頑張れって言ってくれたのは嬉しかった。

日曜日、天神の書店でフォトブックの受け渡し会が行われた。
福岡だけじゃなく、九州中からファンが集まってくれた。
サイン本を渡していると、元カノが来た。
ボーイッシュな感じから、キレイなお姉さんになっている。

月奈に言って、楽屋に呼んできてもらった。

「亜衣梨、久しぶり。
連絡貰った時は、事務所から返事をするなって言われて出来なかった」

「蒼海がデビューした時、ビックリした」

「取材とか来なかった?」

「来たけど断った。高校時代の蒼海は、私だけのもの。
青春の思い出を売って、何が楽しいの」

「ありがとう。俺も亜衣梨がいて、今がある」

「蒼海、立派になった。
今日会ってくれたから、プレゼントをあげる」

蒼海個人のスマホに、50枚の画像を送ってきた。
二人でいた時の俺だ、上半身裸で寝てるのも数枚あった。

「青春の記念に取っていたの。一生どこにも出さないから心配しないで」
彼女の実家は、地元の名家だ。
今更、過去の画像を出して傷つくのは彼女だろう。

「信じてる」

「キスして欲しいけど、今彼に悪いからハグでいい」

俺は抱きしめてやった。

「蒼海も噂の彼女と仲良くしてね」

「ああ、大事にするよ。亜衣里も彼と仲良くして」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...