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第一章 始まり

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ほうれん草とキャベツを、たっぷりのお湯で茹でる。
茹で上がった野菜を切ってツナと合わせて、醤油、マヨネーズで味付けをした。
仕上げに擦り胡麻をかけて、出来上がり。

「夕食は、お腹いっぱい食べない方がいい。
翌朝、空腹で目覚めるくらいが一番いいんだ」
そう言って、皿に山盛りになったキャベツとほうれん草の胡麻和えを並べる。
ご飯の代わりに、冷奴にした。

「これだけ食べたら、お腹いっぱいになっちゃうよ」

「全部食べても、それほどカロリーは無い。
安心して、食べろ」
俺からしたら物足りない量だが、彼女には十分過ぎたようだ。
野菜は完食したが、豆腐は俺にくれた。

「これだけしてくれるなら、スマホ代なんて安いよ」
そう言って、iPhoneを渡された。
セットアップされていて、決済アプリには10万円が入っている。

「食費は、そこから支払いをして」

「判った。明日は部屋に戻って、生活に必要な荷物を取ってくる」

「私も蒼海の部屋が見たいよ」

大学のサークル紹介は休むことにして、一緒に行くことになった。

……

「蒼海の家って、団地だったんだ」
バスを降りた、彼女が驚く。

「契約すれば、今は学生でも住める。家が余ってるから」
狭い階段を、五階まで上がる。

「足にくる」

「慣れないと辛いよ。五階ばかり空いてるらしい」

ドアを開けて中に入ると、空気が篭っていた。
南北の窓を全開にして、空気を入れ替える。
春の風が吹き抜けて、気持ちがいい。

俺は電気シェーバーや食器、使い慣れた包丁やキッチン用品を、スポーツバッグに収めていく。
冷蔵庫の生ものや野菜、九州から持って来た醤油に調味料は、保冷バッグに仕舞った。
彼女はベランダに出て、外の景色を見ていた。

「こういう所に、住んでみたかった」

「御殿みたい家で、育ったんだろ」

「広いだけで、大したことはないわ」

嫌味のつもりだったが、本当に御殿のようだ。

帰りに棟世話役の老夫婦を訪ねて、月に数回くらいしか戻れないと話しておく。
手土産のお菓子を渡すと、ポストのチラシは片付けておくと言ってくれた。

帰り道、彼女と二人でバスと電車を乗り継いで、1時間半の旅をした。

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