恋の呪文

犬飼春野

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本編

真昼の相談室

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 平日の一時過ぎのそば屋は、ほとんどの会社の昼休みが終わる頃という事もあり、ほどほどの活気と店員たちの余裕の表情が見えてきて、なかなかオイシイ時間である。
「・・・ちわー。」
 すきっ腹のせいか、心なし元気のない声で挨拶しながら、池山はのれんをくぐる。
「へいっ、らっしゃい。池山ちゃん、何にするね?」
「うーん。天ざる定食がいいかなぁ」
 ふうぅ、とため息をつきながらカウンター席に座った。
「やあねぇ。若者が真っ昼間っから、ど暗くため息ついてんじゃあ、ないわよ」
 さらっ、とシトラス系の香水の薫りがかすかに彼の鼻をくすぐる。
 いやいやながらも振り返ると、事務職の制服がとてつもなく不似合いな美女が見下ろしていた。
「・・・保坂、なんでお前が、この時間に、そば屋へ来るんだよ」
「午後いちの会議の資料作りの手伝いをしていたら、この時間になっちゃったのよ。それに、ハナ屋さんの蕎は絶品だしね」
 波打つ栗色の髪をバレッタで手早くまとめ、白くほっそりした首をあらわにする。
「おやまあ有希子ちゃん、うれしい事言ってくれるねぇ」
「本当のことだもん。蕎は何といっても、おじさんの手打ち麺が一番よ」
 ちゃっかり池山の隣に席を陣取ると、でれでれと相好を崩しまくるそば屋の親父へ、透き通るような面差しににっこりと極上の笑みを浮かべて天ざるを注文した。
 保坂有希子。
 彼女は江口と立石の所属するシステム部金融一課の事務担当である。そして運命の皮肉というか何というか、池山が幼稚園と小学校を共にした幼なじみでもあった。
 そして、目下のところ彼の数多い知人友人の中、史上最強の天敵である。
「ねぇ池山、あんた、美代子と別れたんだって?」
 ・・・・・ほら来た!
「・・・なんで、お前が知ってるの?」
 たらりと汗がひとすじ背中を流れ落ちる。
「寝呆けてんじゃないわよ。美代子と付き合うきっかけは、私とあんたが幹事したコンパだったでしょーがっ」
 しっかりとしたヒールのある靴で、いきなりがつんと池山の足を蹴飛ばす。
「いたた・・・。そーいえば・・・」
 その場かぎりのノリで付き合いはじめたのに、意外と長く続いたんだよなぁ。
 幕切れは、いささかお粗末ではあったが。
「今度は、何がいけなかったのよ?」
 まかないのおばさんが差し出す膳を受け取りながら、色素の薄くて長いまつげに縁取られた琥珀色の瞳で池山をきりりとにらみ付ける。
「美代子が見合いした話は、聞いた?」
 天つゆに付け込んだ海老の天ぷらにかぶりつきながら、池山は尋ねる。
「聞いた。でも、それが本当の理由じゃなくって、単なるきっかけにすぎないと見たんだけど?」
「さすが・・・」
 こういう時に、付き合いの年輪、というものをひしひしと感じるんだよなぁ。
 ほう、と池山は感嘆のため息をつく。
「・・・そうだな。強いて言えば、ベッドマナーの相違かな」 
「はぁっ?」
「俺も美代子も、ベッドは右っかわで寝ないと落ち着かないんだよ。あー、れー、は、一度、一緒に寝てみないとわかんねえよなぁ」
 お前は、幸いにして俺と寝たことねーからわかんないよなあ。・・・こればっかりは。
 少し意地悪な意味合いを匂わして、有希子の質問をかわした。
 まさか、飽きたとは、口が裂けても言えない。今度はヒールで蹴られるだけではすまないだろう。
 しかし、そんな彼の思惑はとっくにお見通しの有希子は、からりと揚がった海老の天ぷらを箸でつまんで見据えたまま、ぽつりと問うた。
「ふぅーん。それなら、総務の野島は、ベッドの左っかわで寝る女だったとでも?」
 ぐっ。
 池山はかきこんだ蕎を思いっきり喉につまらせる。
「なーにやってんの」
 げほげほと咳き込んで苦しむ男に保坂は思いっきり冷めた目をちらりと向けた後、さらさら蕎をすする。
「な・・・。なんで、知ってる・・・?」
 息も絶え絶えになりながら、必死に言葉を絞りだした。
「あんたら、組合の飲み会のあとなんかにホテル行くの、やめなさいね。酔っていても、みんな見るとこは見てるんだから」
 とっとと食べ終えた保坂は、ごちそうさま、と、丁寧に手を合わせる。
「だ・・・っ。誰から?」
「設計部の片桐くんと、そこの事務の本間ちゃんのペア。・・・もーおっ。どーして、あんたは、そう、締まりがないのっ」
「だって、酔ってたんだもーん」
 へらへらと池山は笑う。
「そんな、使い古しの言い訳なんざ、聞きたかないわよっ」
 べしっ、と有希子が池山の後頭部を思いっきり平手ではたいた。
「いてっ・・・。有希子、お前、年々お前のおかんに似てくるなぁ・・・」
「ああ、そーぉ。いつまでも、そういう風だとねぇっ。いまーあに、とんでもないのに骨までしゃぶられるはめになるんだからねっ」
「・・・シャレにならんなぁ。その表現」
「はぁ?」
「しゃぶられたのが骨なら、どんなに良かったか・・・・」
 はああー、と長い息を吐き出し、池山は頭を抱える。
 有希子は、ちょっと目を見開いて丸くなった背中を見つめる。
「ちょっと、和基」
 椅子から立ち上がって、ぽんと軽く池山の肩をたたく。
「今日は、いい天気ね」
「そーだな」
 俺の心とは正反対になぁ。
 すっかり後向きになっている幼なじみに、大輪のひまわりのような、元気ばりばり全開の笑顔を有希子は向ける。
「おいしい蕎の後は、おいしいアイスコーヒーなんかが飲みたいわよねぇ?」




「・・・・で?何がいったいどうして、誰の何にに対して、そんなに暗くなって考え込んでいるわけ?」
 池山に買ってこさせたテイクアウトのアイスコーヒーを半分ほど飲んでから、有希子は質問を並べ立てた。
 二人はそば屋と自社ビルの中間地点にある、公園のベンチに腰掛けていた。オフィス街の谷間にあるため、子供達の姿はたいして見えないが、仕事の合間の休憩にきた人たちがちらほら行き交っている。
 真っすぐで黒々とした前髪を額に落とし、きっぱりとした眉にやや吊りめの黒い瞳、何よりも高くて形の良い鼻が魅力的な池山。
 抜けるような白い肌といい、すらりと長い手足といい、まるで洋人形のような容姿でいながら日本的にしっとりとした雰囲気の保坂。
 あたかも映画に出てきそうな二人に通り過ぎる人々はたいてい目を止めるが、そこはかとなく漂うただならぬ空気に振り返ってまで眺める命知らずはいないようだ。
「・・・やっぱり、俺、やだ。言いたくない・・・」
 眉間にしわを寄せて、ちゅるるるとストローを吸う。
「そう?和基がそういうなら、無理強いはしないけどね」
 あっさりうなずいて、紙コップを揺すって氷を解かしていた有希子は、ふと手を止めてくすりと笑った。
「そういえば、この間のT銀プロジェクトの打ち上げ、すごかったらしいわね」
「T銀プロジェクトの打ち上げ・・・?」
 私も行けば良かったわぁとのんきな笑顔を見せる有希子とは正反対に、池山の顔の血の気は引いていく。
「岡本くんが言っていたけど、あんたと江口くん、酔っ払って駅と反対方向に歩いていったんだって?」
「へ?」
 茶目っ気たっぷりに有希子は片目をつぶってみせる。
「まさか、マロニエへ二人で仲良く入ったんじゃないでしょーねぇ」
 ホテル・マロニエ。
 実は池山達の会社である『TEN』関係者ご用達の愛の城とひそかに囁かれている。
 ・・・目撃者がいて当たり前でないか?
 ずしゃ。
 まだ半分ほど残っていたコーヒーが地面に激突した。横倒しになったカップからはじわじわと茶色の液体がセメントタイルの上を広がっていく。
 池山は半泣きに近い、何とも情けない笑顔を顔に張りつかせたまま、微動だにしない。
「ちょ、ちょっと、和基・・・」
 冗談のつもりで言ったのに笑いとばしてくれないばかりか、激しく動揺しているのを見て取った有希子は困惑した。
「しまったなぁ・・・」
 勘がいいのも困りもの。いきなり核心をついてしまったと見える。久々にゆっくり誘導尋問にかけて弄ぼうと思っていたのに、あっさり獲物は網にかかってしまったのだ。
 拍子抜けにも程があるが、そのくらい和基が弱っているとも言える。
「和基、独りでぐじぐじ悩むのは、あんたにぜんっぜん似合わないわよ」
「・・・そうか?」
 物憂げに池山は顔をあげる。
「そうよ。体に良くないし、第一、仕事に差し障りがでたりしたら、そりゃあ、もう、大変な騒ぎになるわよね。これ以上うちの立石くんに迷惑かけられるのも願い下げだし」
 幼なじみがホモになったかもしれないということは、彼女にとってどうでもいいことらしい。
「・・・はあ?」
「まあ、そういうわけだから」
 ぐいっと池山の顔を両手で引き寄せて、艶然と有希子は笑う。
「とっとと白状しないと、キスするわよ」
 私も上手らしいわよー。意外と。
 なんならお試しになる?と嬉しそうにじわじわと顔を寄せる。
「・・・どこに?」
「この、ラルフのシャツなんか、どうかしら?きっと、ローズピンクが映えるわよねぇ」
 綺麗に手入れされた指先で、つつつとシャツの襟元を触れた。
「さあ、どうする?」
「・・・降参」
 こうして、池山の平凡かつ、それなりに平和な生活は、ますます未知の世界へと突き進んでいくのであった。



「・・・あっきれた」
 池山の勇気を振り絞った懺悔に対する有希子の感想は、これだけだった。
「・・・反省したから、酒はそれ以来控えてるよ」
「やあねぇ。いまさらあんたの酒癖の悪さなんか、屁とも思っちゃいないわよ。そうじゃなくて、うやむやな気持ちのままやっちゃった江口くんに対して腹を立てているあんたに、呆れてるの。それじゃあ、はじめの馴れ初めをすっとばしてすっかり出来上がりきったカップルの、単なる痴話喧嘩じゃない」
「痴話喧嘩・・・?」
「そうよ。セックスをスポーツだなんて勘違いしてきたあんたが、相手に意味を求めるなんて、初めてなんじゃないの?好きでも何でもない相手に、そういうことでそこまで腹を立てるかしら?」
 有希子のことを苦手だと思うのは、こういう時だ。池山が気が付きたくなくって目と耳を塞いで通り過ぎたものを、こうして拾って来て綺麗に並べてみせる。
「でも・・・。男に抱かれるには、俺のプライドが許さない・・・」
 今のところ、自分にわかるのは、それだけだ。
「・・・・そう?それで、これからどうするつもり?」
「・・・とりあえず・・・」
「とりあえず?」
 池山は曇りのない空を仰ぎ見て呟く。
「逃げる」
 有希子は深々とため息をついた。
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