ずっと、ずっと甘い口唇

犬飼春野

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本編

妻と息子

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 端から見たら丸く収まっているように見える今回の一件を、一番納得していなかったのはもちろん勇仁である。

 離婚など、寝耳に水だった。

 清乃が不意打ちで行った遺言の公開は、勇仁の政治家生命を救っただけではなく、晴美のことも含めて美談にすり替えた。
 これにより、話し合いは一切無いまますぐにでも勇仁は離婚を承諾し、晴美と再婚、裕貴を入籍せざるを得ない。

 すぐさま清乃の元へ飛んでいって怒鳴りつけた。
 しかし、事件以来、ほんの二ヶ月ばかり会わない間に清乃は変っていた。
 いつも青ざめて後ずさるか、諦観しているような顔をして俯いていた彼女は、まっすぐに顔を上げ、勇仁をひたと見据えた。
 真っ黒で潤んだような瞳は、出会った頃よりももっと美しく、静けさの中に力を感じ、勇仁はたじろぐ。
 背筋をまっすぐに、居住まいを正して彼女がまず口にしたのは、謝罪だった。

「これで貴方を、私達から解放することが出来ます。長い間お待たせして申し訳ありませんでした」

 父娘の勝手をなじり、激しく罵っても、首を軽く傾けて薄く笑うばかりで、微動だにしない。
 ただ一言、「晴美さんと、裕貴君と、三人でこれから幸せになって下さい」そう言うと、あとは彼女の呼ばれてやってきた惣一郎の専属秘書と弁護士に処理を任せ、その場を去ってしまった。

 呆然と座り込む勇仁の前に、二人は書類を広げながら言いにくそうに口を開いた。

 惣一郎の遺言は、いくつか選択肢を残した形で作成され、清乃に決定権があったと。
 もともとあまり体調の良くなかった惣一郎が倒れるのは、ある程度想定内であったこと。
 警察へ出頭する前に処理を終え、あとを芳恵と清乃に託し、その中で、彼女が選び取ったのが離縁と政治基盤を含めた代々の守ってきたものの譲り渡しだった。

 芳恵の産んだ次男と三男はまだ三十代半ばで若く、それぞれ工学系の研究者と医者という、政財界から一番遠い職業に就いたことにより、政治家になる意志のないことを早くから表明していた。

 世間の目から見たら庇を貸して母屋を取られるようなものだが、どだい、長兄が亡くなった時点で真神家は崩壊したのだという見解は、姉弟三人で一致していた。

 いつの頃からか彼らは、この不毛な状態を勇仁が亡くなり次第終了させるつもりでいたのだということも、この時初めて知った。


 目の前ががらがらと崩れていく思いだった。

 次第にエスカレートしていく勇仁の横暴を黙って彼らが堪えていたのは、強さへの恐れと依存からではなく、ひとえに惣一郎を思ってのことだったのだ。
 勇仁は、影の支配者である惣一郎さえいなくなれば自分が名実ともに総領となり、それからならば全てうまくいくと思い込んでいた。
 一度も働かないまま結婚し長年拘束され続けた清乃にはこれといった能力がなく、経済面で確実に勇仁に頼らなければ生きていけなくなるからだ。
 晴美をはじめとした愛人はただのはけ口であり、清乃を傷つけるための道具でしかない。
 勇仁は、妻の美しさに不安を覚えていた。
 いつもどこか天女のような清乃は、人としての生気が無くともすればそのまま消えてなくなりそうだった。
 彼女をわざと傷つけ、表情が動くのを見て、生きていると確認していたようなものだ。
 そして俯く彼女を見る度に、後悔と己への嫌悪が募り、どうにもならなかった。
 優しく接するなど、到底無理だった。
 惣一郎に引き合わされて以来、彼女のことを思い出さない日は一日たりともなかった。
 しかし、10歳近く年下の、温室育ちの花をどう扱えばいいかなんてわからない。
 できたのは、冷たく追い詰めるか、乱暴に押し倒す、それだけだった。

 指先一つ、絡ませることなく夫婦の関係は終わる。

 さすがに力の抜けた勇仁が、清乃と春彦の去った家で幾日か過ごしているうちに自然と耳に入ってきた使用人たちの会話を小耳に挟んで愕然とした。


「これで、お嬢様は中村さんとお幸せになれるのですね」


 彼らは勇仁が不在と思い込み、不用意にも噂話に興じた。
 それは、清乃に現在恋人がおり、いずれ再婚するだろうと言う話だった。

 相手の名は、中村友和。
 定年間際の地元警察官だった。

 贈収賄が報道された直後から真神家本邸別邸ともに愉快犯と思われる嫌がらせが頻発していた。時には不審物の入った郵便が到着したり、火炎瓶のようなものが投げ込まれることがあったという。それらは大事に至らなかったので、全国紙で報道されることも、海外にいる勇仁の耳に入ることもなかった。

 そして、惣一郎の出頭。

 それらも合わせてよく真神家に顔を出すようになった警察官の一人が中村友和だった。

 三十代の頃に両親の介護のために出世と結婚を諦めたが、部下や同僚たちに慕われた人格者。
 そんな彼と清乃はすぐに打ち解けて、ことあるごとに穏やかに会話している姿を誰もが目にしていた。
 二十も年下の清乃を慰め、優しく手をとる様子に、やがて同情や労りだけではなく、男女の情も生じ始めていることに、最初に気が付いたのは病床の惣一郎だった。
 初めて見る娘の甘さを帯びた明るい表情に、彼はこれまでのことを深く後悔したという。

 臨終の直前に、彼は新たな遺言を加えた。
 清乃を真神家から離籍させよと。

 その後、父を看取る時も、葬儀の時も、母を突然失った時も、静かに背後から見守り支えていたのは彼だった。一応人目をはばかっているものの、時々交わす二人の視線は親密で、それによって初めて力を得た清乃はやがて最期の総領としての務めを果たすまでになった。
 これにより、長年真神家本家に仕えてきた者、親族ともども、惣一郎の最期の言葉の意味を正確に理解し、彼女の再生を喜んだ。

 
 事実関係を確認した勇仁はすぐさま不服として、離婚を拒絶する。

 しかし、清乃の不倫を理由にせっかく美談に納めた晴美母子との関係を今更撤回できないという周りの説得に折れた。

 ただ、往生際悪く、春彦の親権だけはなんとしても譲らなかった。
 母親をまるで写し取ったかのように繊細な容姿と穏やかな性質を持つ長男は、見るからに政治家に向かない。そして、ほとんど一緒に暮らしたことがないまま成長し、お互いに他人のようなものだった。
 しかし、春彦は清乃に繋がる、唯一の手段だった。
 もちろん清乃たちと争うことになったが、それこそが彼の狙いだった。
 離婚協議が親権争いで長期化するのは良くあることだ。
 珍しいことではない。
 親権を譲らねば離婚はしないし、晴美たちとの再婚もないと主張し、泥沼化の様相を呈した。
 ところがこの時、意外にも春彦自ら意志を示した。
 真神に残りたいと。
 高校生である自分の今後の進路を考えると今更、清乃たちについて行く気がしないと言う彼の言葉に周囲は動揺したが、春彦は頑として譲らなかった。
 友和は清乃との不適切な関係を理由に過疎村の駐在に左遷が決定していた。
 彼らについて行ったとしても地域に学校がなく、一番近くの公立高校としても通学は不可能で下宿か寮生活を送るしかなく、真神家近くにある県下一番の進学校で優秀な成績を納めている春彦の発言はもっともなことだった。

 こうして、春彦は勇仁の元に残った。


 しかし、それは誰も予想しなかった方向へと更に転がっていった。


 飢えと渇きは狂気を呼ぶ。
 ぎりぎりで保っていたはずの均衡が崩れていくのを、春彦は黙って見つめるしかなかった。

 真神家本邸は次男が一括管理し、別邸は勇仁が相続した。
 勇仁は別邸の周辺の土地を買い上げて本邸をしのぐ広さに作り替えた。
 そして、今まで暮らした家屋を取り壊し、豪奢な邸宅を建てる。
 もちろんその家の女主人は新妻の晴美で、庭も家具も塀や門の作り至るまで一新された。
 長年仕えてくれた使用人たちは全て解雇という徹底ぶりで、清乃の気配を消し去った。
 それは、勇仁が指示したことであり、誰も逆らう者はおらず全て彼の思うままである。
 人々は嵐に怯えても、それに不満を唱えたりしない。
 しかし、そのことがかえって勇仁を狂気に駆り立てていく。


 矛先は、一人、長男の春彦に向かった。

 高校生になった彼は人並みに身長も伸び、幼子の頃のように母の写し絵のような容姿ではないが、そこかしこに清乃のかけらが残っている。
 地元に帰る度に春彦に冷たく当たることで、最初は溜飲を下げていた。
 清乃にしたように、わざと晴美親子を厚遇して見せたりもしたが、息子は黙って見返すだけで、表情一つ変えなかった。
 俯かず、怯えず、ただ黙って受け入れる子供が憎くもあり、恐ろしくもあった。

 早く、母親に泣きつけばいい。
 泣いて、戻ってきてくれと頼めばいい。

 そう思っているうちにある日、つい手が出てしまった。
 酒を過ごして深夜に家へ帰り着くと、もう通いの家政婦は帰宅し、扉を開けたのは春彦だった。

 何を話したかも覚えていない。

 ただ、無性に腹が立って彼の襟首を掴んで突き飛ばして頬を張った。
 驚いた顔を一瞬したが、抵抗はせず、抗議の声も上げなかった。
 そして底のない闇のような瞳がじっと自分を見据える。
 涙一つ見せない、かわいげのなさが気にくわない。
 それから、だんだんエスカレートしていった。
 最初は服に隠れる場所を狙って蹴ったり殴ったりしていた。
 しかし春彦は全く抵抗しない上に、なぜか傷を隠し続ける。
 使用人たちも気づいていながら見て見ぬふりをしている節があった。
 一度、彼の若い担任が正義感に燃えて尋ねてきたことがあったが、大金と女を握らせたらあっさり籠絡され、以後、救いの手をさしのべる者もいない。
 やがてまったく取り繕うことなく、機会があれば気が治まるまで存分に暴力を振るった。
 殴るのが楽しいわけではない。
 むしろ、苦痛だった。
 しかし自分でも自分が止められない。


 いつまでも清乃の最後の言葉と姿が頭から離れなかった。



 きっぱりと白い顔を上げた彼女は言った。

「私は、貴方をずっと待っていたけれど、貴方は、ずっとこなかったの」

 こんなにまっすぐで揺るぎない瞳は、初めてだった。

「もう、私は、貴方を待たない」


 それは、
 初めての夜のとき、
 妊娠中の療養生活のとき、
 出産の時、
 育児の時、
 子供の成長を見守る時、
 節目節目の祝いの時、
 事件が起きた時、
 父が出頭している間、
 父が病床に倒れた時、
 両親を見送った時。

 そして、最初に間違えた時の、謝罪の言葉。


 貴方は自分の必要な時に私を連れ出し、そうでない時は押し込めるだけだった。
 いつか変ると信じていたけれど、もうくたびれたわ。


 そう言うと、穏やかに笑った。


 一度でも良い、ほんの少しでも良いからそばにいてくれたら何かが違ったかもしれない。
 しかし、もうそれも今更のことで。


 清乃が意見するのは初めてのことで、驚きのあまり返す言葉がなかったが、去られた後にじわじわとわいてくる想いがある。


 ならば、どうすれば良かったと。

 亡くなった義兄の代わりになれと迎えられた自分に、他に何が出来たと。


 存在意義のない男を冷酷に切り捨てる真神の家で清乃の夫であり続けるには、政治家で活躍し続けるしかなかった。
 義父の出頭も入院も、ごくごく普通の常套手段で、それが死に直結するなんていったい誰が想像する。

 声をかける度、
 触れようとする度に怯えて逃げ出そうとする女に、
 いったい何が出来たというのだろう。 

 いつでも自分は余所者で、真神の家は息子を含めた血族で輪を閉じていた。
 入ることの出来ない家の外で、待ち続けたのは自分の方だ。


 何度、彼女の元へ押しかけて全てをはき出したい衝動に駆られたか解らない。
 しかし、どうしてもできなかった。
 全てをさらけ出さないのが最後の矜持だった。


 はき出せない想いは勇仁の中で渦巻いて燃えさかり、はけ口を求めた先に春彦がいた。

 子供のくせに、凪のように静かな春彦。
 その静けさが許し難く、めちゃくちゃにかき回したい欲望が止められない。
 泣いて、泣き叫んで、清乃をここへ呼べと殴りながら、誰か止めてくれと心の中で自分自身が泣いていた。

 
 底なし沼に、ずぶずぶと沈んでいくような心地の日々が続く。


 清乃が出て行って一年経った日の夜、気が付いたらゴルフクラブを手にしていた。

 これを使うとさすがに殺してしまうかもしれないと頭の片隅で思いながらも、床に転がる息子に振り下ろした。
 ぼろぼろの身体に何度も振り下ろしながら、これで俺もおしまいだと笑っていたら、背後からふいに突き飛ばされ転がった。

 仰向けになったところを何者かが馬乗りになってきた。平手で何度も殴られ、怒鳴り声に目を開けると、そこには怒りで顔を真っ赤に染めた清乃がいた。

 一年ぶりにようやく会えた清乃は、もはや別人だった。

 長く美しかった絹糸の髪を少年のように短く刈り込み、細く折れそうだった手足はしなやかに伸び、消えてなくなりそうな儚さはどこにもなく、月明かりの中、目をきらきらと火花をとばしているかのように輝かせ、生気で満ちている。

 勇仁の思い描いてきた妻とは全くの別人だったが、それもまた、目を奪う美しさで彼の胸を締め付けた。

 清乃が、初めて自分に触れてきた。

 しかし、そこにはもはや昔のような恐れもなく、甘やかな情もない。

 勇仁は、ただの敵でしかなかった。
 春彦を助けるためだけにそこにいる。

 腑抜けたままの勇仁を早々に解放した清乃は、すぐさま一緒に部屋へ乗り込んでいた中村や数人の人間たちで春彦を毛布にくるんで連れ去った。


 誰もいなくなった居間で、勇仁は、初めて涙を流した。

 このような結末を望んだわけではない。
 自分は、どこを間違えて、ここにたどり付いたのだろう。

 力も財産も、何もいらない。
 ただ、清乃だけが、欲しかった。

 それなのに、彼女だけが手に入らない。

 しかし今は、彼女の身体も心も、月よりも遠く届かないことを思い知らされ、声を上げて泣き続けた。

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