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なにがでるかな
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ロルカが左手で支えた筒に刺さっている棒の背を右手で勢いよく押す。
ぽん、と音がして飛び出してきたのは。
「え、まさかのコルク栓?」
予想に反してゆっくりと宙を飛んでいく茶色の物体の残像に、窓辺へ立つオーロラはぼかんと口を開けてしまった。
「ふふふ。今度は何が出るかな♪ おったのしみ~」
やはり、そのままコルク弾じゃないのだなとフェイを見ると、彼女は小さな指をあわせてぱちんと音を立てた。
「いでよ、わんちゃん!」
すると、コルクがパンと弾けて、白煙の中から足の短い犬が出てくる。
「ワン!」
ハチワレのように目元を覆う茶色の毛、そして長い耳がたるんと両頬に垂れて、足と腹は真っ白、背中に焦げ茶を背負い、尻尾の先だけ真っ白。
ただし、大きさは両手に乗る程度なので子犬サイズという感じか。
「ビーグル犬?」
呼ばれたと思ったのか振り返り、真っ黒な瞳をきらきらと輝かせ尻尾をちぎれんばかりに振りながらもう一度「わん」と吠えると、コルク犬は空中から一目散にリンゴの木があった場所めがけて全身の筋肉を使って走り出す。
「うわー。爽快」
この屋敷にはほとんど生き物が寄り付かなかったのだと今更気づく。
久々に、犬が全速力で走る姿を目にした。
「ワワワン、ワン!」
手前に薔薇が植えられているために木の根元あたりは見えないが、多分、目的地にたどり着いたのだろう、盛んに吠えている。
「持ってこーい!」
フェイが両手を口の前に添えて呼びかけると、「ワワンワンワン」と答えた後、しばらく静かになった。
「これは……。けっこう深そうですな」
オーロラの隣に立つフランコが顎に手を当て、先をじっと見る。
「あの犬もどきは、地中深くに埋められている呪いの類を鼻で感知してひたすら追いかけます。見つけたら戻ってきますよ。さきほどまではまだまだ浅い場所だったので鳥でいけたのですが、樹木の根ですから」
「すごいですね…」
麻薬探知犬のようなものだろうか。
「いや、トリュフ犬をヒントにして作った。ちゃんと傷つけずにブツをくわえて来る、おりこうさんだよ」
窓枠につかまり顎を載せ、ふんふんふーんと鼻歌交じりにフェイは犬の帰りを待つ。
「………………あ。見つけたようです」
空気鉄砲を持ったまま見守っていたロルカが静かにつぶやく。
なぜわかるのかと首をかしげると、
「この筒と犬は魔力の縄で繋がっているのです。だから、どういう状態なのか手のひらに伝わってきます」
と、ロルカが丁寧に教えてくれた。
「まあ、鵜飼いみたいな感じね。最初、鵜にしようかなーと思ったけど首掴んで吐き出させるより、わんちゃんが持ってきてくれる方が可愛いから、こっちにした」
窓枠に掴まったままぴょんぴょんと跳ねるフェイを、魔道具師たちは微笑みながらうなずく。
どうやら、フェイの思いつくままねだるままに彼らは何でも作ってくれているようだ。
「…これは、もっと献金しないとな」
いや、慰労金?
なんにせよ、ギルドの皆々様には足を向けて寝られないことは確かだ。
そんなことを考えている最中に、「ふぉん」と少しくぐもった微かな鳴き声が耳に届いた。
「よし。無事ブツを捕獲したね。おいで~!」
指笛を鳴らすと、先ほどの犬が短い足を繰り出しながら宙に飛び出し、屋敷に向かって走ってくる。
「…う…。あれ……。あれは、ちょっと…。グロくないですか」
誇らしげな顔をして犬が戻ってきたのは良いのだか、その可愛らしい口には不気味な青紫色の何かがくわえられていた。
それはスライムのようなミミズの集団のような形容しがたいもので、不気味にもウゴウゴと蠢いている。
「まあ、予想通りですな」
フランコがおにぎりを握るように両手を軽く合わせてぱかりと開くと四角の透明な箱が現れる。
彼がそれを犬に向かって投げると、犬も顎をいったん引いて勢いよく頭を上に上げ、獲物を箱に向かって放った。
「封印」
魔道具師たちとフェイは一斉に唱和する。
すると、不審物は透明な箱の中に収納され、フランコが差し出した両手の上に乗った。
「よし、終わり。わんちゃーん。よくやった! いい子いい子!」
フェイが両手を広げると子犬サイズの探知犬はその胸元に飛び込み全身で喜びを表す。
「あははは。いい子イイ子。ギルドに帰ったらご褒美あげるからね~」
千切れんばかりに尻尾を振り大興奮で手足をめちゃくちゃに繰り出しフェイの顔をぐっしょりとするまで舐めまわした後、満足したのか「わん」と一声鳴き、フランコのもつ筒の中へするりと飲み込まれていった。
「すごいでしょ」
「うん。すごいね」
たかが魔道具されど魔道具。
ここまで犬らしくする必要はどこにもないかもしれない。
でも、フェイは愛らしい子にしたかったのだろう。
魔道具師たちの凄さに驚かされっぱなしだ。
ぽん、と音がして飛び出してきたのは。
「え、まさかのコルク栓?」
予想に反してゆっくりと宙を飛んでいく茶色の物体の残像に、窓辺へ立つオーロラはぼかんと口を開けてしまった。
「ふふふ。今度は何が出るかな♪ おったのしみ~」
やはり、そのままコルク弾じゃないのだなとフェイを見ると、彼女は小さな指をあわせてぱちんと音を立てた。
「いでよ、わんちゃん!」
すると、コルクがパンと弾けて、白煙の中から足の短い犬が出てくる。
「ワン!」
ハチワレのように目元を覆う茶色の毛、そして長い耳がたるんと両頬に垂れて、足と腹は真っ白、背中に焦げ茶を背負い、尻尾の先だけ真っ白。
ただし、大きさは両手に乗る程度なので子犬サイズという感じか。
「ビーグル犬?」
呼ばれたと思ったのか振り返り、真っ黒な瞳をきらきらと輝かせ尻尾をちぎれんばかりに振りながらもう一度「わん」と吠えると、コルク犬は空中から一目散にリンゴの木があった場所めがけて全身の筋肉を使って走り出す。
「うわー。爽快」
この屋敷にはほとんど生き物が寄り付かなかったのだと今更気づく。
久々に、犬が全速力で走る姿を目にした。
「ワワワン、ワン!」
手前に薔薇が植えられているために木の根元あたりは見えないが、多分、目的地にたどり着いたのだろう、盛んに吠えている。
「持ってこーい!」
フェイが両手を口の前に添えて呼びかけると、「ワワンワンワン」と答えた後、しばらく静かになった。
「これは……。けっこう深そうですな」
オーロラの隣に立つフランコが顎に手を当て、先をじっと見る。
「あの犬もどきは、地中深くに埋められている呪いの類を鼻で感知してひたすら追いかけます。見つけたら戻ってきますよ。さきほどまではまだまだ浅い場所だったので鳥でいけたのですが、樹木の根ですから」
「すごいですね…」
麻薬探知犬のようなものだろうか。
「いや、トリュフ犬をヒントにして作った。ちゃんと傷つけずにブツをくわえて来る、おりこうさんだよ」
窓枠につかまり顎を載せ、ふんふんふーんと鼻歌交じりにフェイは犬の帰りを待つ。
「………………あ。見つけたようです」
空気鉄砲を持ったまま見守っていたロルカが静かにつぶやく。
なぜわかるのかと首をかしげると、
「この筒と犬は魔力の縄で繋がっているのです。だから、どういう状態なのか手のひらに伝わってきます」
と、ロルカが丁寧に教えてくれた。
「まあ、鵜飼いみたいな感じね。最初、鵜にしようかなーと思ったけど首掴んで吐き出させるより、わんちゃんが持ってきてくれる方が可愛いから、こっちにした」
窓枠に掴まったままぴょんぴょんと跳ねるフェイを、魔道具師たちは微笑みながらうなずく。
どうやら、フェイの思いつくままねだるままに彼らは何でも作ってくれているようだ。
「…これは、もっと献金しないとな」
いや、慰労金?
なんにせよ、ギルドの皆々様には足を向けて寝られないことは確かだ。
そんなことを考えている最中に、「ふぉん」と少しくぐもった微かな鳴き声が耳に届いた。
「よし。無事ブツを捕獲したね。おいで~!」
指笛を鳴らすと、先ほどの犬が短い足を繰り出しながら宙に飛び出し、屋敷に向かって走ってくる。
「…う…。あれ……。あれは、ちょっと…。グロくないですか」
誇らしげな顔をして犬が戻ってきたのは良いのだか、その可愛らしい口には不気味な青紫色の何かがくわえられていた。
それはスライムのようなミミズの集団のような形容しがたいもので、不気味にもウゴウゴと蠢いている。
「まあ、予想通りですな」
フランコがおにぎりを握るように両手を軽く合わせてぱかりと開くと四角の透明な箱が現れる。
彼がそれを犬に向かって投げると、犬も顎をいったん引いて勢いよく頭を上に上げ、獲物を箱に向かって放った。
「封印」
魔道具師たちとフェイは一斉に唱和する。
すると、不審物は透明な箱の中に収納され、フランコが差し出した両手の上に乗った。
「よし、終わり。わんちゃーん。よくやった! いい子いい子!」
フェイが両手を広げると子犬サイズの探知犬はその胸元に飛び込み全身で喜びを表す。
「あははは。いい子イイ子。ギルドに帰ったらご褒美あげるからね~」
千切れんばかりに尻尾を振り大興奮で手足をめちゃくちゃに繰り出しフェイの顔をぐっしょりとするまで舐めまわした後、満足したのか「わん」と一声鳴き、フランコのもつ筒の中へするりと飲み込まれていった。
「すごいでしょ」
「うん。すごいね」
たかが魔道具されど魔道具。
ここまで犬らしくする必要はどこにもないかもしれない。
でも、フェイは愛らしい子にしたかったのだろう。
魔道具師たちの凄さに驚かされっぱなしだ。
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