上 下
5 / 8

【約束】

しおりを挟む
 それからもメールのやり取りは続いた。時々、ごはんを食べに行ったりもした。ある日、
「昔習ってたダンスってもう辞めたの?」
覚えててくれたんだ。私は小学校の頃ダンスを習っていて、大人になっても時々体を動かしに行っていた。
『まだやってるよ、今度発表会があるの。私は出ないけど見に行こうと思ってるんだ』
「いつ?」
…えっ、なんで??率直にそう思って、
『なんで??…クリスマスイヴだけど』
「いやー、そういう舞台とかって無縁だから、見てみたいなーって思って」
『そうなんだ。でもクリスマスイヴだしね、また今度機会があれば』
さすがにイヴに一緒に出掛けるなんてありえないと思った。すると…
「1人で行くの?」
『そうだよ』
「だったら、一緒に行こうよ。見てみたい」
まさかの返事が来た。私は冗談っぽく、
『デートみたいになっちゃうね』
って、勇気を出して伝えてみた。すると、
「そうだね、じゃあクリスマスデートにしよう」
…あっさりと。

 いやいや、待って…

デートじゃん!!!

毎日そわそわして過ごした。メールは変わらず送られてくる。何着て行こう、クリスマスプレゼントはいる??なんて、いろいろ考えながら毎日そわそわして過ごした。
 約束の2~3日前、
「イヴの日さー、どこで待ち合わせする?よかったら会って決めない??」
毎日そわそわしてるなんて言えるわけもなく、私の車でごはんを食べに出掛けた。今考えると、別にメールや電話でもよかったはずなのに…。待ち合わせ時間と場所なんてあっという間に決まった。そりゃそうだ。
 そのあとは、帰りの車の中でいろんなことをしゃべった。…私がしゃべり過ぎたのだろうか、カズトはあんまりしゃべってくれず、ずーっと相槌を打ってくれていた。
『ごめん、なんか私しゃべり過ぎてるね…』
「そんなことないよ、俺の方こそ…」
『ん?…髪、切った??』
あのロン毛だったカズトが短髪になっていた。カズトは照れ臭そうにうつむいて帽子をかぶり直していた。
 その後も特に会話が弾むわけではなく、

『帰ろっか…』
カズトの家まで送って行った。
『じゃあまたね』
「…う、うん」

 なんか余計なこと言ったかなー。もしかして、クリスマスイヴなんかに私と出掛ける約束なんて間違ったとか思ってたりして…。今さら言えない…とか。
 家に着いたと同時にメールが来た。カズトだ。
「ごめん、言い忘れたことがあるから、落ち着いたらメールちょうだい」
ほら、来た…。舞台のチケット代ムダになるけど仕方ない。
『帰り着いたから今でもいいよ』
私は返事をした。
「いや、もう寝る準備とかしちゃってからでいいよ。俺もお風呂入ってくるから」
なんかモヤモヤするけど仕方ない。私もお風呂に入ることにした。
 遅くまで外にいたから、お風呂から出たら日が変わっていた。もう寝てしまってるかもと思いながら…
『遅くなってごめんね、もう寝ちゃったかな??』
すぐに電話が鳴った。
「ごめん、さっき言いそびれたことがあって…」
『うん、何??』
「・・・」
そんなに言いにくい??
…とは言えず、とりあえず待った。

「あのさー」

「サヤカ…
 
 俺と付き合ってくれない?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

処理中です...