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第2章

Episode26

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「別に俺たち付き合ってないだろ?」
「は?何……え?」

あまりにも真剣な表情で言うものだから、頭の中が真っ白になる。俺はその場にしゃがみ込み、頭を抱えた。

「だって俺に隣にいてくれって、お前言ったじゃん!」

声が裏返りそうになるのを必死に抑えながら、抗議するようにそう言う。

「ああ。確かに言った。それに嘘や偽りはない。」
「だったら――」
「でも、俺は別に告白したつもりはないぞ。」

一城はいつも通りの無表情でそう言い放つ。それがまた俺の怒りと困惑を煽る。

(あぁーーこいつ、こういう奴だったわ。本当に……)

頭の中で叫ぶ。そうだった。一城は言葉が足りないし、時々天然だし、鈍感だし……でも、そんな奴に惹かれてる自分が情けない。

「俺は、隣にいてほしいってだけで、それ以上の意味は――」
「うるさい!」

俺は思わず声を張り上げた。一城が驚いたように眉を動かす。

「お前、本当にバカか!?普通あんなこと言われたら、誰だって――」

言いかけた言葉が、喉の奥で止まる。西の空には夕日が沈みかけていて、赤と金が混ざり合う光が一城の横顔を照らしていた。俺の怒りを知らないみたいな、あの穏やかな表情にまた何も言えなくなる。


「何でそんな怒るんだよ。」
「もう。知らねぇよ!バーーーカ!アホ城!!!もう絶交だ!!!」

俺は精一杯の声で怒鳴りながら、一城に背を向けて早足で歩き出した。
胸の奥がモヤモヤして、言葉にしきれない感情がぐるぐる渦巻いている。

「アホ城……ってなんだよ。」

背中から一城のぼそっとした声が聞こえてくる。そのいつも通りの冷静なトーンに、さらに腹が立つ。振り返らずに拳を握りしめる。

(俺の気持ち、全然わかってないくせに……!)

目の端が熱くなってきて、俺は慌てて袖でごしごしと拭った。

「絶交だって言っただろ!話しかけんな!」

叫びながらさらに歩を速めるが、後ろから追ってくる足音が聞こえる。振り返ると、一城が無表情のままついてきていた。

「絶交するならするで、理由をちゃんと説明しろ。」
「説明!?そんなの、自分で考えろよ!!」

振り返って怒鳴り返した瞬間、夕焼けに照らされた一城の表情が目に入る。その真剣そうな顔に、思わず息が詰まった。

「あぁ!!!もう!!ばーか!!」 

言葉が思いつかず俺はその場から逃げるように呼吸をするのを忘れるくらい全速力で走った。
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