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1話目 世界の変わり目はいつも朝起きたらなのに僕はお風呂に入っている間だったんだけど、どう思う?
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お風呂を考えた人を褒めちぎってやりたい、そんな気分だ。
少年、五十嵐 鹿呂は日課である朝風呂の湯船に浸かり心と身体を癒す。
そろそろ朝食の時間になるのでお風呂の栓を抜き、脱衣所に出る。今は夏なので服を着るのも焦れったい。ボクサーパンツだけ履きリビングに向かう。勿論、髪の毛はふき取ってから。
リビングでは器用に椅子の上で脚を抱えながらケータイを触る妹がいた。
妹、五十嵐 魅虎は一言で表すとギャルだ。ヤンキーに近いかもしれない。そんな青春期真っ只中の妹と朝から出会ってしまったのだ。いつもなら一触即発の雰囲気でご飯も平和に食べられやしない。
魅虎はこちらを凝視し赤面させる。ケータイを落としているのもお構いなしで大音声を挙げた。
「あっ、兄貴、なんて格好してやがんだ!今すぐ服着ろや!!」
ギャルらしからぬ慌てようで近くにあるティッシュを取り、今し方出てきた鼻血を拭き取る。
怒りのゲージが限界でも超えて鼻血を出したのだろうか、そんな場違いな考えをしている鹿呂(ろくろ)は苦笑いしながら答える。
「それぐらい許してよ。僕だって暑くて鼻血を出しちゃうよ」
第一印象が僕である鹿呂は許しを請おうと手を合わせながら魅虎の前に座る。妹相手に腰が低く情けない兄の構図が出来上がりである。
そんな鹿呂の許しを歯牙にも掛けず、怒鳴り散らす。
「お前、服を着るなんて男の常識だろ!女じゃあるまいしちゃんとしろよ!」
鹿呂は魅虎の言葉で腑に落ちないところがあり首を傾げる。男と女が逆ではないか、と。
指摘するため切り出そうとするが、
「あらら、なんて格好してるの、鹿ちゃん?男の子がそんな格好してはいけません!魅虎が鼻出血してるじゃない」
リビングのドアが開く。出てきたのは鹿呂達の母である、五十嵐 龍だ。おっとりした性格の龍はリビングに音もなく入ってくる。
龍は鹿呂のあられもない姿を見るとパタパタと足音を鳴らし、部屋を出ていった。戻ってくると服を抱えている。少し顔を赤らめているのはきっと走って来たからであろう。
またおかしなことを、次は自分の肉親である龍が言い出した。ギャルでアホな妹が発したのなら、まだ若い世代の流行とかで済まされるが、龍ではそうはいかない。
日常の中に紛れ込む不自然さに口を出そうとするが、これもまた遮られる。
「はいこれ。鹿ちゃんも夏だからってこんな姿じゃ魅虎に襲われるよ?女はすぐ欲望がでるんだから。……魅虎が臆病でも私が手を出しちゃうんだから」
「んっ?最後に何か言った?」
「何でもないよ。ほら、魅虎も凝望してないで。鼻血がまた出てるわよ」
龍は抜けていることがしょっちゅうあるが、さすが二児の母である。魅虎の血を残らず拭くとすぐさま朝ご飯を作り出す。
時計を見ると学校の登校時間はとっくに過ぎ去っている。
「ヤバい、遅刻じゃないか!僕もう行くよ!」
服を着て学ランを取りに私室へ走る。なんでお母さんは私服を持ってきたんだ、という悪言を心に置き去りにする。
玄関で靴を履き外に出る。後ろで母や妹が止めようと声を掛けているがお構いなしに家を飛び出す。
自転車を全足力で漕ぎ、学校に到着した。息が荒く、服も乱れているが気にしていられない。教室までの廊下は静かで今がホームルームであることが分かる。
学校のマナーなど気にせず廊下を走り教室のドアを開く。生徒と教師がこちらをを振り向く。
「遅れましたっっ!!」
中には――――女の世界が待ち受けていた。
少年、五十嵐 鹿呂は日課である朝風呂の湯船に浸かり心と身体を癒す。
そろそろ朝食の時間になるのでお風呂の栓を抜き、脱衣所に出る。今は夏なので服を着るのも焦れったい。ボクサーパンツだけ履きリビングに向かう。勿論、髪の毛はふき取ってから。
リビングでは器用に椅子の上で脚を抱えながらケータイを触る妹がいた。
妹、五十嵐 魅虎は一言で表すとギャルだ。ヤンキーに近いかもしれない。そんな青春期真っ只中の妹と朝から出会ってしまったのだ。いつもなら一触即発の雰囲気でご飯も平和に食べられやしない。
魅虎はこちらを凝視し赤面させる。ケータイを落としているのもお構いなしで大音声を挙げた。
「あっ、兄貴、なんて格好してやがんだ!今すぐ服着ろや!!」
ギャルらしからぬ慌てようで近くにあるティッシュを取り、今し方出てきた鼻血を拭き取る。
怒りのゲージが限界でも超えて鼻血を出したのだろうか、そんな場違いな考えをしている鹿呂(ろくろ)は苦笑いしながら答える。
「それぐらい許してよ。僕だって暑くて鼻血を出しちゃうよ」
第一印象が僕である鹿呂は許しを請おうと手を合わせながら魅虎の前に座る。妹相手に腰が低く情けない兄の構図が出来上がりである。
そんな鹿呂の許しを歯牙にも掛けず、怒鳴り散らす。
「お前、服を着るなんて男の常識だろ!女じゃあるまいしちゃんとしろよ!」
鹿呂は魅虎の言葉で腑に落ちないところがあり首を傾げる。男と女が逆ではないか、と。
指摘するため切り出そうとするが、
「あらら、なんて格好してるの、鹿ちゃん?男の子がそんな格好してはいけません!魅虎が鼻出血してるじゃない」
リビングのドアが開く。出てきたのは鹿呂達の母である、五十嵐 龍だ。おっとりした性格の龍はリビングに音もなく入ってくる。
龍は鹿呂のあられもない姿を見るとパタパタと足音を鳴らし、部屋を出ていった。戻ってくると服を抱えている。少し顔を赤らめているのはきっと走って来たからであろう。
またおかしなことを、次は自分の肉親である龍が言い出した。ギャルでアホな妹が発したのなら、まだ若い世代の流行とかで済まされるが、龍ではそうはいかない。
日常の中に紛れ込む不自然さに口を出そうとするが、これもまた遮られる。
「はいこれ。鹿ちゃんも夏だからってこんな姿じゃ魅虎に襲われるよ?女はすぐ欲望がでるんだから。……魅虎が臆病でも私が手を出しちゃうんだから」
「んっ?最後に何か言った?」
「何でもないよ。ほら、魅虎も凝望してないで。鼻血がまた出てるわよ」
龍は抜けていることがしょっちゅうあるが、さすが二児の母である。魅虎の血を残らず拭くとすぐさま朝ご飯を作り出す。
時計を見ると学校の登校時間はとっくに過ぎ去っている。
「ヤバい、遅刻じゃないか!僕もう行くよ!」
服を着て学ランを取りに私室へ走る。なんでお母さんは私服を持ってきたんだ、という悪言を心に置き去りにする。
玄関で靴を履き外に出る。後ろで母や妹が止めようと声を掛けているがお構いなしに家を飛び出す。
自転車を全足力で漕ぎ、学校に到着した。息が荒く、服も乱れているが気にしていられない。教室までの廊下は静かで今がホームルームであることが分かる。
学校のマナーなど気にせず廊下を走り教室のドアを開く。生徒と教師がこちらをを振り向く。
「遅れましたっっ!!」
中には――――女の世界が待ち受けていた。
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