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「嫉妬」という名の媚薬

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 たとえそれが、真奈美にとって残酷な言葉であると分かっていても、それが大和の正直な気持ちだった。

 自分を愛してないと分かっていても、諦めることが出来なかった。誰と付き合っても、忘れることが出来なかった。

 ---ずっと見つめ、見守り続けてきた、たったひとりの愛する女性。

 美姫、俺をこんな気持ちにさせるのはお前だけだ。分かれよ......

 大和の唇が近づくと、美姫は瞳を閉じた。

 柔らかく温かい唇は押し返すような弾力をもって、大和の欲情に応えているようで。もっとこの感触を味わいたいと思ってしまう。

「ッハァ.....」

 美姫が僅かに唇を開け、切ない吐息が零れた。ゾクゾクと大和の背中が震える。

 もう何言われても、止められないからな。

 舌を押し込むようにしても美姫は拒否せず、それを受け入れた。一気に血液が沸き立ち、美姫の後頭部を手で支える。ゆっくりと深く舌を絡ませながら、躰を密着させていく。

 大和と一緒に暮らし始めてから2ヶ月以上が経ち、同じベッドに寝ていても何もしない、まるで友達のような生活。大和に対して欲情することはこれから先ないのでは......と、美姫は密かに思っていた。

 けれど今、こうして大和に触れられ、口づけをしていると、美姫の欲情はどんどん昂ぶっていた。それと同時に、胸の奥から嫉妬も燃え上がる。

 あの頃みたいな、たどたどしくて、感情に任せた強引なキスじゃない。
 もっと自信があって、情熱的でありながらもゆっくりとした濃厚なキス。

 大和は私以外に、今まで何人の人とキスしてきたんだろう。

 美姫は、自らも積極的に舌を絡ませた。 
 
 大和の厚い舌と絡ませ合い、唇を何度も押し付け合うように重ねていると、腫れているみたいに唇がジンジンと熱くなる。

 それは、鼓動のように脈を打つ。

 さきほどの映画で潤み始めたものの、その後落ち着いていた下半身は、新たな火種を得て再び燃え始めていた。躰の深奥から目覚めた欲情が立ち上り、ゆらゆらと全身を包み込む。

 雌の匂いに刺激された大和の口づけが、一層深くなる。

「ッハァ......」

 美姫は大和の脇の下から腕を入れて背中に回し、密着している躰を更に押し付けるように絡ませた。

 熱い......

 大和の硬くなった自身が、美姫の太腿に当たっていた。

 大和の躰が離れ、美姫の躰をベッドの上に組み敷いた。

「美姫......いいか?」

 荒ぶる気持ちを無理矢理抑えこんだ大和の声が、美姫の鼓動を速ませる。

 流れに任されるようにして、躰を重ねたくない。
 ちゃんと、美姫の気持ちを確かめたい。

 そんな大和の真摯な気持ちを受け取り、美姫は欲情を滲ませるダークブラウンの瞳を見つめながら頷いた。

「うん......」

 大和がパジャマ代わりにしているTシャツを、ガバッと脱いだ。

 厚みのある胸板に、綺麗に割れた腹筋。ナイトライトによって筋肉の流線美に沿った影が色濃く映え、その逞しく男らしい躰つきを見ただけで、美姫の躰が熱くなった。

 高校生の頃も大和は鍛えていて逞しい躰だったけど、なんだろう......上手く言えないけど、違う。

 完成された大人の男性の躰から、色香が漂っている。

 暗闇の中で浮かび上がる美しい肉体美。いつもの安心させるような優しくて穏やかな眼差しは消え、雌を求める野生の欲情の色を映し、大和が美姫を見下ろしていた。お腹の奥深く、子宮がギュンと縮まり、ドクドクする。

 いつもの、大和じゃない......
 服を脱いだ途端、そんなに変わるなんてズルい。

 急に大和が知らない男性に思え、美姫の中に恥ずかしい気持ちとそれを上回る程の欲情が燃え上がる。

 大腰筋と呼ばれる腰骨から逆三角形を描く筋肉のラインは途中からスウェットの下に隠れていて、その頂点となる中心部分が大きく盛り上がっていた。先程太腿に触れたあの感触が、甦ってくる。

 大和の太く引き締まった腕が伸び、覆い被さるようにして美姫の頭の両横に手をつかれ、頭が深くマットレスに沈み込む。引き寄せておいた掛け布団を捲られると、裸でもないのに気恥ずかしくて美姫は顔を背けた。

 男らしいごつごつした指が美姫のパジャマのボタンにかかり、ひとつずつ外されていく。美姫はそっと顔を戻し、頬を染めながらそれを見つめた。

 胸がドキドキして、息が苦しい......
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