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晴天の霹靂(へきれき) ー大和回想ー
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「では、本題に入ろうか」
親父の野太い声に、ゴクリと喉を鳴らした。この空気に飲み込まれないよう、膝をピタッと寄せ、背筋をピンと伸ばす。
親父を真正面に見据えると、声を張った。
「今日、ここに集まってもらったのは、ここにいる来栖美姫さんとの婚約を、報告するためです」
この婚約に異を唱えさせない......そんな思いから、俺は『報告』という言葉を使った。
お袋が「あら?」というように、芝居がかった顔を見せる。
「美姫さんは、どなたか別にいい人がいらっしゃるのかと思っていたけど」
その遠回しな言い方が、逆にカンに触る。テーブルの下で拳を強く握り締め、昂ぶる感情を抑えようと必死に理性を保った。
ひろ兄は一瞬チラッと俺の顔を窺いつつも、親父の秘書としての表情になり、黒い鞄から何かを取り出した。目の前に出されたのは、来栖秀一と美姫との情事を暴いた週刊誌だった。美姫が横で躰を固くしたのが分かった。
ひろ兄は、一切の感情を見せずに話し出した。
「こちらの週刊誌によると、美姫さんは叔父である来栖秀一氏と恋人の関係にあり、それが暴露される直前に二人は行方を眩ましている、とのことでしたが。
そんな美姫さんが今、私たちの目の前に大和の婚約者として現れるとは、一体どういうことなのでしょうか」
ひろ、兄......
親父の指示でこうしているのだとは分かっているが、いつものひろ兄からは想像できない冷たい話し方にショックを受ける。
これが、親父の秘書としてのひろ兄ってことなのか。
美姫は、居住まいを正すと親父とお袋に真っ直ぐに目を向けた。
「驚かれるのは、無理もないことと思います。今、世間では、私と叔父の関係が取り沙汰され、大きなスキャンダルとなっています。
けれど、これは誤解なんです」
『誤解』という言葉を聞き、お袋が身を乗り出した。
「どういうことなんですの?」
お袋は昼ドラや韓国ドラマが大好きだ。こんな時でさえ、この場を楽しんでいる雰囲気があった。
美姫、上手くやってくれよ......
俺は、祈るような気持ちだった。
親父の野太い声に、ゴクリと喉を鳴らした。この空気に飲み込まれないよう、膝をピタッと寄せ、背筋をピンと伸ばす。
親父を真正面に見据えると、声を張った。
「今日、ここに集まってもらったのは、ここにいる来栖美姫さんとの婚約を、報告するためです」
この婚約に異を唱えさせない......そんな思いから、俺は『報告』という言葉を使った。
お袋が「あら?」というように、芝居がかった顔を見せる。
「美姫さんは、どなたか別にいい人がいらっしゃるのかと思っていたけど」
その遠回しな言い方が、逆にカンに触る。テーブルの下で拳を強く握り締め、昂ぶる感情を抑えようと必死に理性を保った。
ひろ兄は一瞬チラッと俺の顔を窺いつつも、親父の秘書としての表情になり、黒い鞄から何かを取り出した。目の前に出されたのは、来栖秀一と美姫との情事を暴いた週刊誌だった。美姫が横で躰を固くしたのが分かった。
ひろ兄は、一切の感情を見せずに話し出した。
「こちらの週刊誌によると、美姫さんは叔父である来栖秀一氏と恋人の関係にあり、それが暴露される直前に二人は行方を眩ましている、とのことでしたが。
そんな美姫さんが今、私たちの目の前に大和の婚約者として現れるとは、一体どういうことなのでしょうか」
ひろ、兄......
親父の指示でこうしているのだとは分かっているが、いつものひろ兄からは想像できない冷たい話し方にショックを受ける。
これが、親父の秘書としてのひろ兄ってことなのか。
美姫は、居住まいを正すと親父とお袋に真っ直ぐに目を向けた。
「驚かれるのは、無理もないことと思います。今、世間では、私と叔父の関係が取り沙汰され、大きなスキャンダルとなっています。
けれど、これは誤解なんです」
『誤解』という言葉を聞き、お袋が身を乗り出した。
「どういうことなんですの?」
お袋は昼ドラや韓国ドラマが大好きだ。こんな時でさえ、この場を楽しんでいる雰囲気があった。
美姫、上手くやってくれよ......
俺は、祈るような気持ちだった。
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