＜本編完結！AS開始＞【R１８】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

叩扉（こうひ）

９

　車は休むことなく東京へと向かい、やがて都内に入ると見覚えのある景色に囲まれた。

　母が病院の駐車場で停車すると、美姫は躰を強張らせた。

　ここ、は......

　父が入院している病院。そこは、悠が搬送され、入院している病院だった。

　途端に美姫は悠のことを思い出し、胸に不安が広がっていった。

　悠、は......悠はどうなったんだろう。

　意識は戻ったの？
　今はまだ、病院にいるの？

　あれほどまでに悠のことで頭がいっぱいで、彼の死の恐怖に囚われていたというのに。秀一との関係が両親や世間に発覚し、ログハウスに逃走し、頭の中から悠のことがすっかり切り離されていたという事実に、美姫はショックを受けた。

　私、は......なんて酷い人間なんだろう。
　友達が生死を彷徨っているというのに、私は自分のことだけしか考えていなかったなんて。

　そして......

　悠が死んでしまったら......ということに恐怖し、祖父が殺されるのを知りながらも傍観していた父を非難し、久美を殺さないで欲しいと、秀一に必死に訴えていた自分が、秀一と一緒に心中しようとしていた事実を思い出し、ゾッとした。

　狂気と欲情に塗まみれた世界で、美姫は正常な思考を失っていたのだった。こうして現実に戻り、美姫は自分がいかに愚かな振る舞いをしようとしていたのに気づかされた。

「美姫、行きましょう」

　凛子は後部座席から鞄を取り、扉を開けて素早く降りた。美姫も凛子の言葉を受け、ゆっくりと助手席の扉を開けた。

　ごめんなさい、悠。お願い、どうか生きていて......
　どうか、どうか......意識が目覚めていますように。

　美姫は心の中で何度も繰り返した。

　今まで悠の無事を祈れなかった分を、取り返すかのように。