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愛の夢
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「よく眠れましたか?」
甘い口づけの余韻に浸りながら秀一の胸に頭を預ける美姫の髪を一束指に絡め、秀一が優しくそれに口づけて尋ねた。
壁掛けのクリスタル時計に目をやると、既に時刻は2時を回っていた。
「はい、そうみたいです。起きたら、一瞬どこにいるのか分かりませんでした」
秀一は、クスリと笑みを溢した。
「えぇ。あの濡れたシーツで寝かせるのはと思い、ゲストルームに運んだのですよ」
そ、そうだった! ……私、なんてことを!!
昨夜の秘事が急速に頭の中で再現されて、逃げ出したいほどの恥ずかしさに襲われる。
「す、すみません、私……」
「謝ることではありませんよ。美姫と私の愛の交わりの残痕を愛おしいと思いこそすれ、不快に思う気持ちなどありませんから」
秀一は完璧な笑みを浮かべて、ニコリと微笑んだ。
愛の交わりの、残痕……
その言葉にカーッと熱くなった顔を隠すように、美姫は俯いた。
「わ、たし……シャワー浴びてきますね」
秀一の膝から下りると、そそくさとバスルームへと向かった。
「はぁーーーっ」
脱衣所の扉を閉めると、美姫は盛大に息をついた。
秀一さんといると、心臓がいくつあっても足りなさそう......
「ぁ」
服を脱ごうとして、ふと気付く。
秀一さんの家に泊まることになるなんて思ってなかったから、着替えを持ってきてない。どうしよう......
美姫がそう考えていると、扉を軽くノックする音が聞こえた。
「はい......」
扉を開けると、秀一が洋服を手に立っていた。
「ドレスでは出かけにくいでしょうから、こちらを着て下さい。以前、モルテッソーニの元にいた時に美姫の為に購入していたのですが、渡しそびれてしまって置きっぱなしになっていたものです」
渡されたのは、 淡い花柄の滑らかな肌触りのワンピースだった。着物のように胸元が交差し、腰の辺りをリボンで結ぶ形になっており、裾が少し斜めにカットされた美しいシルエットだった。タグを見ると、有名なイタリアのブランドの名前が書いてあった。
「同じシリーズでバッグと靴もついでに買っておきましたので、それも後で見てみて下さい」
「あ、ありがとうございます」
あまりにもスマートな秀一の対応に、美姫はただ単純に御礼を言うことしかできずにいた。
もっと、気の利いたことを言えたらいいのに……
「では……」
そんな美姫を気にすることなく、秀一は静かに扉を閉めた。
なんだか......まだ、夢の中にいるみたい……
深緑色のドレスと下着を脱ぐと、下着のみバスルームの洗濯乾燥機に入れ、ボタンを押した。
シャワーを浴びるために裸になると、その躰から野性的な残り香が漂い、秀一との秘事がリアルに思い返された。
浴室の中で、美姫は艶のある白肌に指を沿わせた。
ここも、ここも、ここも……秀一さんに......愛撫、されたんだ……
秀一の指を想像しながら、そっと指でピンクに色づく胸の先端に触れる。
「ぁ…」
ピクン、と躰を小さく震わせる。
秀一がしてくれたように親指と人差し指でキュッと蕾を摘むとそこが硬直し、躰に疼きが走った。もう片方の手を秘部へと伸ばすと、もうそこは滑りを持ち始めていた。
秀一さん、触れて……
秀一の美しい指先を思い浮かべながら指で花芽に触れようとした途端、ピアノを奏でる音が僅かに耳に入り込み、美姫は我に返った。
だ、だめ……こんなところで私、何してるんだろう。あまり長くいると、秀一さんに怪しまれちゃう。
慌てて秘部を洗い流し、バスルームを出た。
まだ洗濯が終わっておらず、仕方ないので下着は着けずに秀一の用意してくれたワンピースに身を包んだ。胸元は空きすぎず、きつすぎず、ウエストのラインもピッタリしていて、ワンピースの裾もまるで身長に合わせたかのような、美しさを際立たせるのに最適な長さだった。
まるで、オートクチュールみたいにワンピースが躰に馴染んでる……
秀一さんがこのドレスを買ったのは肌を合わせる前だったはずなのに、それ以前から私の躰を知られてしまっていたみたい。
そう思うだけで、美姫の躰は熱く疼いた。
ピアノの譜面に向かってペンを走らせる秀一の背中に、美姫は遠慮がちに声をかけた。
「秀一、さん……」
僅かに緊張して立ち尽くす美姫を、秀一がゆっくりと眺める。視姦されているかのように頭の先から足の爪先までが緊張し、美姫の躰が熱くなった。
「ほぉ……」
息をつき、秀一は瞳を揺らめかせた。
「美姫、とても綺麗ですよ。私の見立てに間違いはなかったようですね」
嬉しい……
秀一の言葉に美姫は頬を緩め、はにかんだような笑顔を見せた。まるで少女のような無垢なその笑顔は、昨夜秀一に見せた色香漂う表情とはまるで別人のようだった。
だから、こんなにも貴女に惹かれてしまうのでしょうか。貴女の、どんな表情も私が独り占めしてしまいたい。
秀一は立ち上がり、美姫に近付くと頬を優しく包み込んだ。もう片方の手を美姫の細い腰に回し、ぐっと引き寄せる。
切ない表情で見上げた美姫に、秀一が愛情の籠った瞳で見つめ返した。
「美姫......もしよかったら、こちらに引っ越して来ませんか?」
「え……!?」
甘い口づけの余韻に浸りながら秀一の胸に頭を預ける美姫の髪を一束指に絡め、秀一が優しくそれに口づけて尋ねた。
壁掛けのクリスタル時計に目をやると、既に時刻は2時を回っていた。
「はい、そうみたいです。起きたら、一瞬どこにいるのか分かりませんでした」
秀一は、クスリと笑みを溢した。
「えぇ。あの濡れたシーツで寝かせるのはと思い、ゲストルームに運んだのですよ」
そ、そうだった! ……私、なんてことを!!
昨夜の秘事が急速に頭の中で再現されて、逃げ出したいほどの恥ずかしさに襲われる。
「す、すみません、私……」
「謝ることではありませんよ。美姫と私の愛の交わりの残痕を愛おしいと思いこそすれ、不快に思う気持ちなどありませんから」
秀一は完璧な笑みを浮かべて、ニコリと微笑んだ。
愛の交わりの、残痕……
その言葉にカーッと熱くなった顔を隠すように、美姫は俯いた。
「わ、たし……シャワー浴びてきますね」
秀一の膝から下りると、そそくさとバスルームへと向かった。
「はぁーーーっ」
脱衣所の扉を閉めると、美姫は盛大に息をついた。
秀一さんといると、心臓がいくつあっても足りなさそう......
「ぁ」
服を脱ごうとして、ふと気付く。
秀一さんの家に泊まることになるなんて思ってなかったから、着替えを持ってきてない。どうしよう......
美姫がそう考えていると、扉を軽くノックする音が聞こえた。
「はい......」
扉を開けると、秀一が洋服を手に立っていた。
「ドレスでは出かけにくいでしょうから、こちらを着て下さい。以前、モルテッソーニの元にいた時に美姫の為に購入していたのですが、渡しそびれてしまって置きっぱなしになっていたものです」
渡されたのは、 淡い花柄の滑らかな肌触りのワンピースだった。着物のように胸元が交差し、腰の辺りをリボンで結ぶ形になっており、裾が少し斜めにカットされた美しいシルエットだった。タグを見ると、有名なイタリアのブランドの名前が書いてあった。
「同じシリーズでバッグと靴もついでに買っておきましたので、それも後で見てみて下さい」
「あ、ありがとうございます」
あまりにもスマートな秀一の対応に、美姫はただ単純に御礼を言うことしかできずにいた。
もっと、気の利いたことを言えたらいいのに……
「では……」
そんな美姫を気にすることなく、秀一は静かに扉を閉めた。
なんだか......まだ、夢の中にいるみたい……
深緑色のドレスと下着を脱ぐと、下着のみバスルームの洗濯乾燥機に入れ、ボタンを押した。
シャワーを浴びるために裸になると、その躰から野性的な残り香が漂い、秀一との秘事がリアルに思い返された。
浴室の中で、美姫は艶のある白肌に指を沿わせた。
ここも、ここも、ここも……秀一さんに......愛撫、されたんだ……
秀一の指を想像しながら、そっと指でピンクに色づく胸の先端に触れる。
「ぁ…」
ピクン、と躰を小さく震わせる。
秀一がしてくれたように親指と人差し指でキュッと蕾を摘むとそこが硬直し、躰に疼きが走った。もう片方の手を秘部へと伸ばすと、もうそこは滑りを持ち始めていた。
秀一さん、触れて……
秀一の美しい指先を思い浮かべながら指で花芽に触れようとした途端、ピアノを奏でる音が僅かに耳に入り込み、美姫は我に返った。
だ、だめ……こんなところで私、何してるんだろう。あまり長くいると、秀一さんに怪しまれちゃう。
慌てて秘部を洗い流し、バスルームを出た。
まだ洗濯が終わっておらず、仕方ないので下着は着けずに秀一の用意してくれたワンピースに身を包んだ。胸元は空きすぎず、きつすぎず、ウエストのラインもピッタリしていて、ワンピースの裾もまるで身長に合わせたかのような、美しさを際立たせるのに最適な長さだった。
まるで、オートクチュールみたいにワンピースが躰に馴染んでる……
秀一さんがこのドレスを買ったのは肌を合わせる前だったはずなのに、それ以前から私の躰を知られてしまっていたみたい。
そう思うだけで、美姫の躰は熱く疼いた。
ピアノの譜面に向かってペンを走らせる秀一の背中に、美姫は遠慮がちに声をかけた。
「秀一、さん……」
僅かに緊張して立ち尽くす美姫を、秀一がゆっくりと眺める。視姦されているかのように頭の先から足の爪先までが緊張し、美姫の躰が熱くなった。
「ほぉ……」
息をつき、秀一は瞳を揺らめかせた。
「美姫、とても綺麗ですよ。私の見立てに間違いはなかったようですね」
嬉しい……
秀一の言葉に美姫は頬を緩め、はにかんだような笑顔を見せた。まるで少女のような無垢なその笑顔は、昨夜秀一に見せた色香漂う表情とはまるで別人のようだった。
だから、こんなにも貴女に惹かれてしまうのでしょうか。貴女の、どんな表情も私が独り占めしてしまいたい。
秀一は立ち上がり、美姫に近付くと頬を優しく包み込んだ。もう片方の手を美姫の細い腰に回し、ぐっと引き寄せる。
切ない表情で見上げた美姫に、秀一が愛情の籠った瞳で見つめ返した。
「美姫......もしよかったら、こちらに引っ越して来ませんか?」
「え……!?」
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