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教室の戸を開けたら、そこには......
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夕陽が射し込み、オレンジの透明フィルムがかけられたかのような色に染められた教室の中に彼女はいた。
授業が終わり、下校時間が過ぎた教室の窓際の席から校庭を眺め、グラウンドで部活に励む溝端くんをオレンジ色に染まった顔が僅かに微笑みながら見つめてる。
恋する女の子の表情って、あんなんなんだ......
そこにいるのは自分、なのに...可愛い、と思ってしまった。彼女の恋する気持ちを応援したい、叶えてあげたい......そんな思いが私の中からフツフツと湧き上がってくる。
部活が終わり、溝端くんが部室へと流れ込むのを確認して、彼女が鞄とチョコレートの入った補助バッグを手に立ち上がった。
校庭へと早足で歩く彼女を、私も後ろから追いかける。
結果は分かってるはず、なのに......胸の鼓動が高鳴って落ち着かない。
下駄箱で運動靴に履き替えると、足をもつらせながら校庭へと急ぐ彼女。
早く、早く......頑張って......
ちゃんと、気持ちを伝えて......
祈るような気持ちで、彼女と校庭へ向かう。
校庭へ出ると、大きな人の塊があった。
その中心には溝端くんがいた。友達に肩を抱かれ、大きな声を上げながら校門へと歩いて行く。
彼女の足が止まった。校門へと消えて行く溝端くんを、ただ黙って見つめている。
内向的で、何も出来ない彼女。そんな彼女に、私のイライラは頂点に達した。
もう、何してんの......!
また、そうやって何もせずに見ているつもり?
黙って何もしないで諦めて、蓋をするつもりなの?
......この10年、本当はずっと後悔してた。
溝端くんの笑顔が頭から離れなくて、何度も夜眠る前に思い出しては泣いてた。あの時、もしほんの少しでも私に勇気があったら、何か変わってたんじゃないかって思ってた。
溝端くんの気持ちも確かめずに別れたこと、すっごくすっごく悔やんでた......
もう、そんな思いはしたくない......!!
私は堪らず、彼女に向かって駆け出した。
夢の中だろうがなんだろうが、構わない。彼女が私に気付かなくたって、いい。私は、私の思いを口にするんだ。
その瞬間、彼女は私となった。正確に言えば、私は彼女に呑み込まれた。
夢、だからなんでもありか......そう、夢、だから。
だったら......私の伝えられなかった気持ちを、今ここでちゃんと伝えたい。
校門へと走ると、大きな後ろ姿の一団に向かって大きな声で叫んだ。
「溝端くんっ!!!」
すると、真ん中にいた人影がこちらにくるりと振り返る。溝端くんは、先ほどの私が見せた時のように瞳孔を開き、驚いた表情を見せた。
周りの視線が突き刺さるように痛くて、私は俯いて小声になった。
「ちょっと......いい?」
「あ、うん......」
溝端くんは周りにいじられながらも、みんなから離れて私の方へと歩いてきた。
「ここじゃ、なんだから......学校、入る?」
私は黙って頷いた。
なんでだろう、もう24歳の私はしっかりとした対応が出来るはずなのに......溝端くんといると、中学生の私に戻ってしまう。
授業が終わり、下校時間が過ぎた教室の窓際の席から校庭を眺め、グラウンドで部活に励む溝端くんをオレンジ色に染まった顔が僅かに微笑みながら見つめてる。
恋する女の子の表情って、あんなんなんだ......
そこにいるのは自分、なのに...可愛い、と思ってしまった。彼女の恋する気持ちを応援したい、叶えてあげたい......そんな思いが私の中からフツフツと湧き上がってくる。
部活が終わり、溝端くんが部室へと流れ込むのを確認して、彼女が鞄とチョコレートの入った補助バッグを手に立ち上がった。
校庭へと早足で歩く彼女を、私も後ろから追いかける。
結果は分かってるはず、なのに......胸の鼓動が高鳴って落ち着かない。
下駄箱で運動靴に履き替えると、足をもつらせながら校庭へと急ぐ彼女。
早く、早く......頑張って......
ちゃんと、気持ちを伝えて......
祈るような気持ちで、彼女と校庭へ向かう。
校庭へ出ると、大きな人の塊があった。
その中心には溝端くんがいた。友達に肩を抱かれ、大きな声を上げながら校門へと歩いて行く。
彼女の足が止まった。校門へと消えて行く溝端くんを、ただ黙って見つめている。
内向的で、何も出来ない彼女。そんな彼女に、私のイライラは頂点に達した。
もう、何してんの......!
また、そうやって何もせずに見ているつもり?
黙って何もしないで諦めて、蓋をするつもりなの?
......この10年、本当はずっと後悔してた。
溝端くんの笑顔が頭から離れなくて、何度も夜眠る前に思い出しては泣いてた。あの時、もしほんの少しでも私に勇気があったら、何か変わってたんじゃないかって思ってた。
溝端くんの気持ちも確かめずに別れたこと、すっごくすっごく悔やんでた......
もう、そんな思いはしたくない......!!
私は堪らず、彼女に向かって駆け出した。
夢の中だろうがなんだろうが、構わない。彼女が私に気付かなくたって、いい。私は、私の思いを口にするんだ。
その瞬間、彼女は私となった。正確に言えば、私は彼女に呑み込まれた。
夢、だからなんでもありか......そう、夢、だから。
だったら......私の伝えられなかった気持ちを、今ここでちゃんと伝えたい。
校門へと走ると、大きな後ろ姿の一団に向かって大きな声で叫んだ。
「溝端くんっ!!!」
すると、真ん中にいた人影がこちらにくるりと振り返る。溝端くんは、先ほどの私が見せた時のように瞳孔を開き、驚いた表情を見せた。
周りの視線が突き刺さるように痛くて、私は俯いて小声になった。
「ちょっと......いい?」
「あ、うん......」
溝端くんは周りにいじられながらも、みんなから離れて私の方へと歩いてきた。
「ここじゃ、なんだから......学校、入る?」
私は黙って頷いた。
なんでだろう、もう24歳の私はしっかりとした対応が出来るはずなのに......溝端くんといると、中学生の私に戻ってしまう。
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