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女の子同士の恋愛って難しいけど、女性としてやよいのこと愛したい

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 その後、やよいのお気に入りのブランド服の店を見たり、雑貨店を覗いた後、アウトレットモールのすぐ隣にある遊園地に行くことにした。遊園地と言っても遊具は10ぐらいしかない、子供向けの小さな遊園地だ。

 やよいの目当ては、大観覧車だった。上空60メートルから東京湾が一望でき、シースルータイプのゴンドラが4基あるのだ。

「美来さん、あれですよ!」
「へぇー、しょぼい遊園地の割に、観覧車は立派だね」
「もうっ、しょぼいなんて言わないでください」
「あ、ごめん……つい」

 チケットを購入し、観覧車に並ぶ。平日の昼間だからなのかあまり人はいないものの、普通のゴンドラの列はすいすい進むのに、私たちの並んでるシースルーゴンドラの列はなかなか進まない。

「シースルーじゃなくて、普通のにする?」

 美来が聞くと、やよいはちょっと俯いて答えた。

「美来さんがそうしたいなら……いいですよ」

 ぁ、これダメなやつだ。

「やっぱ、せっかく来たんだし、シースルーいっとこか」

 すると、やよいがわんこのように顔を輝かせた。

「はいっ」

 思えば、今までやよいっていつも私の気持ち優先で、自分の意見を通すことってなかったよね。少しずつ自分を見せてくれるようになったのは、それだけ私に心を開いてくれてるってことなのかな。

 そう考えると、やよいのワガママも嬉しくなるなぁ。ま、そこまでワガママってわけでもないし。

 いよいよ順番が来て、シースルーゴンドラに乗り込んだ。

 おぉ、ほんとに透けてるー!

 床には薄いビニール保護膜シートが貼られてて、 ガラスやアクリルには傷ひとつなく綺麗だから、下の景色がばっちり見える。

「やよい、パンツ見られないように気をつけてね」
「み、美来さんっっ!!」

 やよいは耳まで赤くするとスカートをぴったりと巻きつけて、向かいの席に座った。

 だんだん高度が高くなってくると、目の高さにさっきまで私たちがいたアウトレットモールが見えた。わぁ、こうしてみてもかなり広いなぁ。どうりで足がジンジンしてるはずだ。ホテルついたら、プールより何より、温泉入りたいかも。

 ふと視線を下に向けると、やよいはパンプス履いてる。

「やよい、足疲れたでしょ?」
「はい。履きなれた靴にしたんですけど、さすがに歩き疲れちゃいました」
「じゃ、チェックインしたらすぐ温泉行こ。私も足がジンジンしてるし」
「そうですね」

 視線を遠くに向けると、東京湾アクアラインが見える。こんなにしっかり見えるのなんて羽田空港ぐらいだと思ってたけど、ここの観覧車は思わぬ穴場だわ。

「美来さん、ここにナビがついてますよ」
「ほんとだ」

 ナビ画面には、『観光施設』『周辺の歴史』と表示されていた。気になったけど、これに夢中になってたら、せっかくシースルーゴンドラ乗った意味がなくなるよねと思い、触るのはやめといた。

 ゴンドラが真上へと辿り着く。大観覧車っていうだけあって、かなり高い。そういや、高度60メートルって言ってたっけ。

「ここが一番高いところからの景色かー」

 感動しながら足下を含めて周囲を眺めていると、やよいがぴょこんと隣に座ってきた。

「み、美来さん……」
「どうした、やよい?」
「あ、あの……ここの観覧車の真上でキスした恋人は、これからもずっと一緒にいられるってジンクスが……あるみたい、ですよ?」

 上目遣いでウルウルした瞳で、やよいが訴えかける。

「そ、そうなんだ……」

 やよいの意図するところは分かる。

 でも私、公共の場で、しかも昼間から手を繋いだり、ましてやキス……なんて、無理なんだけど……湊と付き合ってた時も、そんなことしたことないし。
 しかもこれ、シースルーじゃん。誰かに見られたら、恥ずかしすぎて死にそうなんだけど。

 やよいはじっと私を見つめていた。その胸に、期待が込められているのを切々と感じる。

 きっとやよいは……勇気を出して、言ってくれたんだよね。それで、私から行動しなければ諦めるつもりなんだよね。

「……」

 ササッと両隣やその下のゴンドラを見てみると、誰も乗ってなかった。

 よ、よし……

 鳥が啄むぐらいの速さで、やよいの唇にチュッとキスした。それから、脱力する。
 
「ご、ごめん……これが、限界」

 すると、やよいがクスッと笑う声が響いた。

「美来さん、嬉しいです」

 あー、めっちゃ恥ずかしかったー!!
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