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女の子同士の恋愛って難しいけど、女性としてやよいのこと愛したい
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早速ビールのグラスを合わせて光と乾杯しようとすると、のどかママもグラスを掲げた。
「一緒にいいかな?」
光と顔を見合わせて微笑む。
「もちろん!」
「もちろんです」
3人でグラスを合わせ、乾杯する。
「光が友達連れてくるなんて、久しぶりだよね」
のどかママがビールを一口飲んでからそう言った。
もしかして、すみれを連れてきたことあるのかな……
すみれっていうのは光が高校の時から付き合ってたんだけど、今は別れてしまった元カノ。すみれは光との秘密の恋愛関係に耐えられなくなって地元に戻ってお見合いし、この秋に結婚する予定だ。
光も新しく彼氏ができてうまくいっているみたいだけど……なんとなく、すみれにまだ未練があるような気がするんだよね。
「美来って言ってさ、私の高校ん時のツレなの。よきバスケの相棒でもあったんだよね」
「まぁね」
そう言って笑うと、のどかママが目を細めた。
「そういえば、光ちゃんと同じぐらい女の子にモテてた子がいるって言ってたよね。もしかして、それが美来ちゃん?」
「そうそう、それがこの子!」
ぇ。そんな話してたの!?
呆気に取られてる間にのどかママが後ろから受け取って、頼んでた枝豆とたこのアヒージョをカウンターから出してくれた。こんなとこでたこのアヒージョが食べられるとは思わなかったわ。
「はい、熱いから気をつけて」
「ありがとうございます」
一緒に渡された箸でたこを摘んで口に入れると、
「あっち!!」
火傷しそうに熱いけど、ガーリックがたっぷり効いてて美味しいっ。
「でも光ちゃんさ、その友達はノンケだから全然女の子に興味ないって言ってなかった?」
のどかママに言われて、アハハと照れ笑いする。
「そうなんですよ。私、あの頃は全然女の子っていうか、恋愛自体に興味なくて」
「美来はバスケのことしか頭になかったもんね」
「どうせ、バスケバカですよー」
「あら、自分のことよく分かってるじゃない」
光と軽口を叩き合ってると、のどかママに笑われた。
「いいコンビねぇ。それで、恋愛に興味ない美来ちゃんを、どうしてここに連れてきたの?」
私の代わりに光が答える。
「女同士の恋愛に目覚めたばっかの美来に、経験豊富なのどかママからアドバイスをしてもらいたくて」
「あらっ、光ちゃんだって経験あるでしょ」
「ほら、私は……失敗してるからさ。アドバイスできるような立場じゃないし」
光が一瞬気まずそうな表情を見せた後、誤魔化すように笑った。そんな彼女を見ていると、こちらまで切なくなってくる。
暗い雰囲気を払拭するためにも、ここは私の話をするしかないか。
「私……つい最近まで、男性が好きなんだと思ってたし、彼氏もいたんです。でも、ある日隣に凄く可愛い女の子が引っ越してきて、最初はほんとに可愛い子だなって思ってただけだったんです。
高校の時から女の子に頼られたり、甘えられることが多かったから、やよい……あ、その子、やよいって言うんですけど、やよいに対しても特別距離が近いとかそういうふうに感じたことなかったんですよね」
すると、光が不満そうに口を尖らせた。
「ほんっと、あんたは昔からそうよね。私なんて小さい頃からビアンの自覚あったからさぁ」
「ビアン?」
「レズビアンのこと。女性同性愛者の中には『レズビアン』って呼ばれるのを嫌ってて、『ビアン』って呼んでる人もたくさんいるから、美来、気をつけた方がいいよ」
そ、そうなんだ……私が知らないこと、まだたくさんありそう。
「まぁそれはいいとして、高校の頃さ、体育や部活で着替えの時とか合宿でお風呂入る時とか、私なんてなるべく見ないように意識したり、ウォーターボトルの回し飲みしないようにとか、あんまりベタベタして誤解されないようにって、そりゃあもう色々気を遣ってたけどさ、美来はぜーんぜんそんなこと気にしてなくてさ。
目の前でガバーッて裸になるし、お風呂でも隠さないし、人のウォーターボトルの水勝手に飲むし、しょっちゅうスキンシップしてきて、困ったわよ。それであんた、周りの子達相当ドキドキさせといて、自分は無自覚なんだからさ、まいるわよ」
「え、そうなの!? そんなこと……考えもしなかった」
だって部活の仲間だもん。普通だって思ってたし、意識なんてしたことなかった。
「もしかして……光、私のこと好きになったしてた?」
「バーカ、そんなわけないでしょ! ただ、私は女が好きって自覚があったから、他の女の子に対して誤解されないよう、行動に気をつけてただけ!」
考えてみれば、光はいつも着替えの時は隅っこで背中向けてたし、お風呂もみんなが上がる頃にこそこそ入ってきてたし、回し飲みもしなければ、食べ物を分けっこすることもなかった気がする。そんな態度だから、周りからはクールって受け取られてたんだけど、本当は光の中でそんな葛藤があったんだ。
気づきもしなかった自分が、今更だけど申し訳なく思えてきた。
「一緒にいいかな?」
光と顔を見合わせて微笑む。
「もちろん!」
「もちろんです」
3人でグラスを合わせ、乾杯する。
「光が友達連れてくるなんて、久しぶりだよね」
のどかママがビールを一口飲んでからそう言った。
もしかして、すみれを連れてきたことあるのかな……
すみれっていうのは光が高校の時から付き合ってたんだけど、今は別れてしまった元カノ。すみれは光との秘密の恋愛関係に耐えられなくなって地元に戻ってお見合いし、この秋に結婚する予定だ。
光も新しく彼氏ができてうまくいっているみたいだけど……なんとなく、すみれにまだ未練があるような気がするんだよね。
「美来って言ってさ、私の高校ん時のツレなの。よきバスケの相棒でもあったんだよね」
「まぁね」
そう言って笑うと、のどかママが目を細めた。
「そういえば、光ちゃんと同じぐらい女の子にモテてた子がいるって言ってたよね。もしかして、それが美来ちゃん?」
「そうそう、それがこの子!」
ぇ。そんな話してたの!?
呆気に取られてる間にのどかママが後ろから受け取って、頼んでた枝豆とたこのアヒージョをカウンターから出してくれた。こんなとこでたこのアヒージョが食べられるとは思わなかったわ。
「はい、熱いから気をつけて」
「ありがとうございます」
一緒に渡された箸でたこを摘んで口に入れると、
「あっち!!」
火傷しそうに熱いけど、ガーリックがたっぷり効いてて美味しいっ。
「でも光ちゃんさ、その友達はノンケだから全然女の子に興味ないって言ってなかった?」
のどかママに言われて、アハハと照れ笑いする。
「そうなんですよ。私、あの頃は全然女の子っていうか、恋愛自体に興味なくて」
「美来はバスケのことしか頭になかったもんね」
「どうせ、バスケバカですよー」
「あら、自分のことよく分かってるじゃない」
光と軽口を叩き合ってると、のどかママに笑われた。
「いいコンビねぇ。それで、恋愛に興味ない美来ちゃんを、どうしてここに連れてきたの?」
私の代わりに光が答える。
「女同士の恋愛に目覚めたばっかの美来に、経験豊富なのどかママからアドバイスをしてもらいたくて」
「あらっ、光ちゃんだって経験あるでしょ」
「ほら、私は……失敗してるからさ。アドバイスできるような立場じゃないし」
光が一瞬気まずそうな表情を見せた後、誤魔化すように笑った。そんな彼女を見ていると、こちらまで切なくなってくる。
暗い雰囲気を払拭するためにも、ここは私の話をするしかないか。
「私……つい最近まで、男性が好きなんだと思ってたし、彼氏もいたんです。でも、ある日隣に凄く可愛い女の子が引っ越してきて、最初はほんとに可愛い子だなって思ってただけだったんです。
高校の時から女の子に頼られたり、甘えられることが多かったから、やよい……あ、その子、やよいって言うんですけど、やよいに対しても特別距離が近いとかそういうふうに感じたことなかったんですよね」
すると、光が不満そうに口を尖らせた。
「ほんっと、あんたは昔からそうよね。私なんて小さい頃からビアンの自覚あったからさぁ」
「ビアン?」
「レズビアンのこと。女性同性愛者の中には『レズビアン』って呼ばれるのを嫌ってて、『ビアン』って呼んでる人もたくさんいるから、美来、気をつけた方がいいよ」
そ、そうなんだ……私が知らないこと、まだたくさんありそう。
「まぁそれはいいとして、高校の頃さ、体育や部活で着替えの時とか合宿でお風呂入る時とか、私なんてなるべく見ないように意識したり、ウォーターボトルの回し飲みしないようにとか、あんまりベタベタして誤解されないようにって、そりゃあもう色々気を遣ってたけどさ、美来はぜーんぜんそんなこと気にしてなくてさ。
目の前でガバーッて裸になるし、お風呂でも隠さないし、人のウォーターボトルの水勝手に飲むし、しょっちゅうスキンシップしてきて、困ったわよ。それであんた、周りの子達相当ドキドキさせといて、自分は無自覚なんだからさ、まいるわよ」
「え、そうなの!? そんなこと……考えもしなかった」
だって部活の仲間だもん。普通だって思ってたし、意識なんてしたことなかった。
「もしかして……光、私のこと好きになったしてた?」
「バーカ、そんなわけないでしょ! ただ、私は女が好きって自覚があったから、他の女の子に対して誤解されないよう、行動に気をつけてただけ!」
考えてみれば、光はいつも着替えの時は隅っこで背中向けてたし、お風呂もみんなが上がる頃にこそこそ入ってきてたし、回し飲みもしなければ、食べ物を分けっこすることもなかった気がする。そんな態度だから、周りからはクールって受け取られてたんだけど、本当は光の中でそんな葛藤があったんだ。
気づきもしなかった自分が、今更だけど申し訳なく思えてきた。
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