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同性で付き合うってどういうこと??
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やよいの部屋に入り、ちらっと見た棚にまだ例のアルバムがあるのを見つけて、なんとなくホッとする。
私の目の前に、おずおずとタオルが差し出された。引越しの挨拶の時に渡されたのと同じ、ブランドの名前の入ったあのタオルだった。
「まだ……髪、乾ききってないみたいなので」
そうだ、シャワー浴びたばっかりだった。こういう気遣いしちゃうところが、やっぱりやよいだ。
「こんなの自然に乾くからいいのに。ありがとね」
笑顔で受け取ると、やよいは落ち着きなく視線を逸らした。
「コーヒー、入れましょうか」
「いい。もう夜だし、あとは寝るだけだから。
それより、こっちに座って」
向かいの席を指すと、やよいが躰を固くしたのが分かった。
「は、はい……」
まさにカチンコチンと音がしそうな程に挙動不審な歩き方でテーブルにつく。
やよいを目の前にし、私は彼女を真っ直ぐに見つめた。
「気まずいのは分かるけどさ、これほどまでに明らさまに避けられると傷つくんだけど」
やよいが肩をビクッとさせ、項垂れた。
「すみ、ません……どうしていいのか、分からなくて」
まぁ、いきなり告白してキスしちゃったわけだし、 やよいの言い分は分かるけど。
やよいは、ますます項垂れた。
「先輩……私のこと、気持ち悪いって思ってますよね。同じ学校の知らない後輩にストーカーされてただなんて。
大学も学部まで一緒にして、挙句、先輩の住所つきとめて隣の部屋にまで引っ越してきちゃうなんて。それで、初めて会ったような振りして近づいて……先輩と仲良くなろうとするなんて。
軽蔑しますよね。気色、悪いですよね……」
俯いてるからやよいの表情は見えなかったけど、膝に置いた手が震えているのが見えた。
やよいは、「美来さん」ではなく、「先輩」に呼び方が変わっていた。学生の頃の気持ちが蘇っているのかもしれない。
「ちょ、ちょっと待ってよ。別に、気持ち悪いとか思ってないから!
そりゃ、ビックリしたってのはあるけど」
学生の時はやよいの存在すら知らなかったわけだし、驚くのは当然だよね。
「しかも、告白……までして。先輩にキ、ス……しちゃうなんて。
最低です、私」
やよいは肩を震わせて涙を零した。可愛い子は、泣いててもやっぱり可愛いんだなぁなんてふと考えてしまって、いかんいかん。ここは慰めるところでしょうが。
「やよいが私を好きだって言ってくれたことは、素直に嬉しかったよ。
その……キスされたことは予想外だった、けど」
あの時のキスが気持ちよかったとは、とても言えない。
「でも、私は今までに同性を好きになったことはないし、やよいのことは可愛いと思うけど、それが恋愛感情に繋がっていくかどうかは分からない。
だからさ、とりあえず今まで通りの関係でいたいんだけど。やよいと話できなくなったり、一緒に遊べないのは寂しいからさ」
それで、もしかしたらそのうちにやよいに対して恋愛感情が芽生えてくることもあるかもしれないし。そん時はそん時ってことで、考えればいいよね。
私としては、私なりの誠意をもってやよいに答えたつもりだった。
すると、今までしおらしく泣いていたやよいの動きが止まり、キッと睨みつけるようにして見上げた。
「先輩は、何も分かってません!」
え。
えぇっ!!
な、なんで怒ってんの!?
私の目の前に、おずおずとタオルが差し出された。引越しの挨拶の時に渡されたのと同じ、ブランドの名前の入ったあのタオルだった。
「まだ……髪、乾ききってないみたいなので」
そうだ、シャワー浴びたばっかりだった。こういう気遣いしちゃうところが、やっぱりやよいだ。
「こんなの自然に乾くからいいのに。ありがとね」
笑顔で受け取ると、やよいは落ち着きなく視線を逸らした。
「コーヒー、入れましょうか」
「いい。もう夜だし、あとは寝るだけだから。
それより、こっちに座って」
向かいの席を指すと、やよいが躰を固くしたのが分かった。
「は、はい……」
まさにカチンコチンと音がしそうな程に挙動不審な歩き方でテーブルにつく。
やよいを目の前にし、私は彼女を真っ直ぐに見つめた。
「気まずいのは分かるけどさ、これほどまでに明らさまに避けられると傷つくんだけど」
やよいが肩をビクッとさせ、項垂れた。
「すみ、ません……どうしていいのか、分からなくて」
まぁ、いきなり告白してキスしちゃったわけだし、 やよいの言い分は分かるけど。
やよいは、ますます項垂れた。
「先輩……私のこと、気持ち悪いって思ってますよね。同じ学校の知らない後輩にストーカーされてただなんて。
大学も学部まで一緒にして、挙句、先輩の住所つきとめて隣の部屋にまで引っ越してきちゃうなんて。それで、初めて会ったような振りして近づいて……先輩と仲良くなろうとするなんて。
軽蔑しますよね。気色、悪いですよね……」
俯いてるからやよいの表情は見えなかったけど、膝に置いた手が震えているのが見えた。
やよいは、「美来さん」ではなく、「先輩」に呼び方が変わっていた。学生の頃の気持ちが蘇っているのかもしれない。
「ちょ、ちょっと待ってよ。別に、気持ち悪いとか思ってないから!
そりゃ、ビックリしたってのはあるけど」
学生の時はやよいの存在すら知らなかったわけだし、驚くのは当然だよね。
「しかも、告白……までして。先輩にキ、ス……しちゃうなんて。
最低です、私」
やよいは肩を震わせて涙を零した。可愛い子は、泣いててもやっぱり可愛いんだなぁなんてふと考えてしまって、いかんいかん。ここは慰めるところでしょうが。
「やよいが私を好きだって言ってくれたことは、素直に嬉しかったよ。
その……キスされたことは予想外だった、けど」
あの時のキスが気持ちよかったとは、とても言えない。
「でも、私は今までに同性を好きになったことはないし、やよいのことは可愛いと思うけど、それが恋愛感情に繋がっていくかどうかは分からない。
だからさ、とりあえず今まで通りの関係でいたいんだけど。やよいと話できなくなったり、一緒に遊べないのは寂しいからさ」
それで、もしかしたらそのうちにやよいに対して恋愛感情が芽生えてくることもあるかもしれないし。そん時はそん時ってことで、考えればいいよね。
私としては、私なりの誠意をもってやよいに答えたつもりだった。
すると、今までしおらしく泣いていたやよいの動きが止まり、キッと睨みつけるようにして見上げた。
「先輩は、何も分かってません!」
え。
えぇっ!!
な、なんで怒ってんの!?
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