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145.驚くべき事実
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再びオーストリアの地に降り立ったサラは、ステファンに連れられ、ウィーンのシンボルであり世界遺産にもなっているシュテファン大聖堂を歩いていた。ここはハプスブルク家の通称『建設公』ルドルフ4世によって建てられたゴシック様式の教会で、ハプスブルク家の墓所であり、モーツァルトの結婚式も葬儀もここで行われた。
外観はゴシック様式だが、内部はバロック様式となっている大聖堂の回廊を歩く。二人が歩く足音だけが大きく響き渡っていた。
献灯の蝋燭が多く立てられているものの、その光自体が弱いので室内は暗く、寒いほど空気がひんやりしている。それがより一層、この聖堂の荘厳な雰囲気を強めていた。
高い窓には淡いパステルカラーのステンドグラスがはめ込まれ、僅かな光を受けて幻想的な光を生み出していた。
中央祭壇まで進むと、奥の壁にはキリスト教最初の殉教者となった聖ステファノの処刑が描かれた祭壇画が飾られている。聖ステファノは、ユダヤ教信者によって罪を着せられ、裁判で弁明したにも関わらず、彼らによって外に引き摺り出され、石打ちの刑に処された。
まるでここが、告解の為の懺悔室のように思えた。
ステファンは祭壇画を見上げた後、サラの手を取った。
「私たちは多くの人間を裏切り、背いてしまいました。
貴女は、一生この罪を背負って生きていくことは出来ますか」
サラは祭壇画を見上げた後、ステファンの瞳を見つめた。
「私は、自分の犯した罪を忘れることなく、一生背負って行きていくつもりです。
ステファン、貴方との愛に生きると決めたのですから」
ステファンが、サラの目の前で片膝を付いて跪く。
「サラ……ここで再び、誓います。貴女を一生、愛し続けると。
病める時も健やかなる時も。どんな苦難が襲いかかろうとも、私は生涯貴女だけを愛し、守り抜きます」
「ステファン……」
舞踏会前に永遠の愛を誓ったステファンを思い出し、サラの瞳の奥が焼け付くように熱くなった。
今日、この日を迎えるまでにどれだけの壁を超え、底に落ち、回り道をし、道を失いかけてきただろう。
ようやく、ここに辿り着いた。
愛する人の元へ。
ステファンは潤んだ瞳で見つめるサラの手を取り、恭しく手の甲に誓いの口づけを落とした。
コートのポケットからベルベットの箱を取り出し、パカッと蓋を開ける。そこには、煌く大粒のダイヤモンドのプラチナリングが光っていた。
「サラ。どうか私の一生の伴侶となって頂けますか」
サラの目尻から、大粒の涙が零れた。
「は、い。よろしく、お願いします……」
ステファンがサラの左手を取り、薬指にスッと指輪を嵌める。立ち上がったステファンにサラが抱きつき、二人は唇を重ねた。
「私の指にも、嵌めて頂けますか」
「え?」
渡されたのは、アルミホイルで作った指輪だった。幼い頃、サラがステファンとの結婚式ごっこで使ったものだった。
ステファン、今でもこれを……持っていてくれたのですね。
サラは指輪を手に取り、甘さと切なさが胸に広がっていった。
本物の夫婦になることは出来ない。
けれど、私たちは一生を共にすることは出来ます。
たとえ誰に認められることはなくても……私たちの想いさえあれば、それでいいのです。
誰の物差しでもない。
これが、私にとっての『幸福』なのだから。
サラはステファンの左手を取り、指輪を嵌めた。指輪は、ぴったりとステファンの指に嵌った。
二人は、これからの未来を思い、微笑み合った。
ステファンが、サラをまじろぎもせず見つめる。そのライトグレーの瞳は、いつもよりも深く美しく見えた。
「サラ、知っていますか」
「え、何をですか?」
サラは、ステファンを見上げた。
「オーストリアでは、叔父と姪による叔姪婚は、法律で認められているのですよ」
外観はゴシック様式だが、内部はバロック様式となっている大聖堂の回廊を歩く。二人が歩く足音だけが大きく響き渡っていた。
献灯の蝋燭が多く立てられているものの、その光自体が弱いので室内は暗く、寒いほど空気がひんやりしている。それがより一層、この聖堂の荘厳な雰囲気を強めていた。
高い窓には淡いパステルカラーのステンドグラスがはめ込まれ、僅かな光を受けて幻想的な光を生み出していた。
中央祭壇まで進むと、奥の壁にはキリスト教最初の殉教者となった聖ステファノの処刑が描かれた祭壇画が飾られている。聖ステファノは、ユダヤ教信者によって罪を着せられ、裁判で弁明したにも関わらず、彼らによって外に引き摺り出され、石打ちの刑に処された。
まるでここが、告解の為の懺悔室のように思えた。
ステファンは祭壇画を見上げた後、サラの手を取った。
「私たちは多くの人間を裏切り、背いてしまいました。
貴女は、一生この罪を背負って生きていくことは出来ますか」
サラは祭壇画を見上げた後、ステファンの瞳を見つめた。
「私は、自分の犯した罪を忘れることなく、一生背負って行きていくつもりです。
ステファン、貴方との愛に生きると決めたのですから」
ステファンが、サラの目の前で片膝を付いて跪く。
「サラ……ここで再び、誓います。貴女を一生、愛し続けると。
病める時も健やかなる時も。どんな苦難が襲いかかろうとも、私は生涯貴女だけを愛し、守り抜きます」
「ステファン……」
舞踏会前に永遠の愛を誓ったステファンを思い出し、サラの瞳の奥が焼け付くように熱くなった。
今日、この日を迎えるまでにどれだけの壁を超え、底に落ち、回り道をし、道を失いかけてきただろう。
ようやく、ここに辿り着いた。
愛する人の元へ。
ステファンは潤んだ瞳で見つめるサラの手を取り、恭しく手の甲に誓いの口づけを落とした。
コートのポケットからベルベットの箱を取り出し、パカッと蓋を開ける。そこには、煌く大粒のダイヤモンドのプラチナリングが光っていた。
「サラ。どうか私の一生の伴侶となって頂けますか」
サラの目尻から、大粒の涙が零れた。
「は、い。よろしく、お願いします……」
ステファンがサラの左手を取り、薬指にスッと指輪を嵌める。立ち上がったステファンにサラが抱きつき、二人は唇を重ねた。
「私の指にも、嵌めて頂けますか」
「え?」
渡されたのは、アルミホイルで作った指輪だった。幼い頃、サラがステファンとの結婚式ごっこで使ったものだった。
ステファン、今でもこれを……持っていてくれたのですね。
サラは指輪を手に取り、甘さと切なさが胸に広がっていった。
本物の夫婦になることは出来ない。
けれど、私たちは一生を共にすることは出来ます。
たとえ誰に認められることはなくても……私たちの想いさえあれば、それでいいのです。
誰の物差しでもない。
これが、私にとっての『幸福』なのだから。
サラはステファンの左手を取り、指輪を嵌めた。指輪は、ぴったりとステファンの指に嵌った。
二人は、これからの未来を思い、微笑み合った。
ステファンが、サラをまじろぎもせず見つめる。そのライトグレーの瞳は、いつもよりも深く美しく見えた。
「サラ、知っていますか」
「え、何をですか?」
サラは、ステファンを見上げた。
「オーストリアでは、叔父と姪による叔姪婚は、法律で認められているのですよ」
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