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122.ノアの告白
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「はぁ!? 何言ってんの!! ステファンを救えるのはあんたしかいないって言ったでしょ?
あんたが来なきゃ、ステファンはどうなるの!!」
ノアが、サラに食ってかかるように迫った。
サラは顔を歪め、苦しそうに言葉を紡いだ。
「ごめんなさい。本当に……ごめん、なさい。
でも、私はステファンには会えません。ノア、どうかステファンを救ってください。無理やりにでも、あの島から連れ出してください。
彼を……お願い、しますッグ」
「ふざけないでよっ!」
ノアがサラの両腕を掴んで激しく揺らした。
「サラ! あんた、ステファンのことが好きじゃなかったの!?
あんなボロボロのステファンを見捨てるつもりなの!?
ステファンは……ステファンは、あんたが必要なんだよ!!」
サラは唇をギュッと噛み締めた。
「ごめん、なさい……ノア。
ッグ、ステファンを、どうか……どうか、お願い、しますっ」
ノアが放心したようにサラを見つめて腕を離し、がっくりと項垂れた。それから、肩を大きく震わせた。
「あ、な……こと、しなきゃ……良かった」
「ノア?」
サラがノアを覗くと、背を向けられた。
「ほん、とは……こんなこと、言うつもりなかった……
でも、あんたに謝らなきゃいけないんだ」
「どういうことですか?」
ノアがサラの方を向き、苦しげに表情を歪めて見つめた。
「あんたたちの関係をバラして、スクープのネタを売ったのは……僕なんだ」
そ、んな……
あまりの衝撃に、サラは声が詰まったかのようになった。
「あんたがいると、ステファンはいつまでもウィーンに来られない。ザルツブルク音楽祭への出演も断ってラインハルトに破門されたら……二度と会えなくなると思ったら、堪らなくなって。
それで……あのカメラマンに、ネタを売った」
ノアが膝を抱え、ボロボロと涙を零した。
「ま、さか……あんなことになるなんて、思ってなかったんだ。ステファンとサラが逃亡したって聞いて、大変なことになったって青褪めた。カメラマンの自殺報道を聞いて、怖くなって……誰にも、何も言えなくなった。
それでも、ステファンが帰ってきてくれて、嬉しかった。ボロボロになったステファンでも、傍にいられるだけで、幸せだった……
なのに、ステファンが失踪して……あ、あんなところに、いる、なんて……ウッ、ウッ、ウゥゥゥゥゥゥ」
ノアが途切れ途切れにサラに訴える。
「ウッ、ウッ……サラ……今までの、ことっっ……全部、謝るから……ウゥッ。
ステファンのこと、諦め……からウグッ。
お、願……彼を……ステファ……ッッ……救って。お願い、だよ……ッッ!!」
ノアの告白に、サラは茫然とした。
ノアがもし……あのカメラマンに私たちの関係を明かさなければ、幸せに暮らしていたのでしょうか。
そう考えて、違うと思った。ふたりの関係は、遅かれ早かれ、バレていたことだろう。ずっと隠し通せるものではない。ましてや相手が、世界的に有名なピアニストのステファンであれば。
ステファンに会いに行かなかったことを、彼を救えなかったことを、サラは一生後悔し続けるだろうと思った。自分が行かなかったことで、今後ステファンはどうなってしまうのかと考えると胸が鋭く刺されたように痛み、ジンジンする。
けれど、ステファンの元に行き、彼を島から連れ出したところで、また二人は世間から身を隠し、禁断の関係を続けることになるだけだ。
ようやく逃れられた負のスパイラルに、自らその身を投げ込むことになってしまう。
もう、過ちは繰り返すべきではない。
たとえ、ステファンのことが忘れられなくても。
彼のことが心配で堪らなくても……
私はもう、彼に関わってはいけないのです。
私は、なんて愚かなのでしょう。
感情だけで、先走ってしまおうとしていました。
お父様とお母様を、もう裏切らないと誓ったのは誰だったのですか?
財閥を救いたいと、もうお父様やお母様に辛い思いをさせないと、余命短いお父様に少しでも親孝行するのだと、そう決意したというのに。
私は、何もかも投げ捨てようとしていました。
ステファン、ごめんなさい。
私は、貴方に会いに行くことは……できません。
ノアに散々説得されたものの、サラの意思は変わることなく、ノアは意気消沈して帰って行った。
あんたが来なきゃ、ステファンはどうなるの!!」
ノアが、サラに食ってかかるように迫った。
サラは顔を歪め、苦しそうに言葉を紡いだ。
「ごめんなさい。本当に……ごめん、なさい。
でも、私はステファンには会えません。ノア、どうかステファンを救ってください。無理やりにでも、あの島から連れ出してください。
彼を……お願い、しますッグ」
「ふざけないでよっ!」
ノアがサラの両腕を掴んで激しく揺らした。
「サラ! あんた、ステファンのことが好きじゃなかったの!?
あんなボロボロのステファンを見捨てるつもりなの!?
ステファンは……ステファンは、あんたが必要なんだよ!!」
サラは唇をギュッと噛み締めた。
「ごめん、なさい……ノア。
ッグ、ステファンを、どうか……どうか、お願い、しますっ」
ノアが放心したようにサラを見つめて腕を離し、がっくりと項垂れた。それから、肩を大きく震わせた。
「あ、な……こと、しなきゃ……良かった」
「ノア?」
サラがノアを覗くと、背を向けられた。
「ほん、とは……こんなこと、言うつもりなかった……
でも、あんたに謝らなきゃいけないんだ」
「どういうことですか?」
ノアがサラの方を向き、苦しげに表情を歪めて見つめた。
「あんたたちの関係をバラして、スクープのネタを売ったのは……僕なんだ」
そ、んな……
あまりの衝撃に、サラは声が詰まったかのようになった。
「あんたがいると、ステファンはいつまでもウィーンに来られない。ザルツブルク音楽祭への出演も断ってラインハルトに破門されたら……二度と会えなくなると思ったら、堪らなくなって。
それで……あのカメラマンに、ネタを売った」
ノアが膝を抱え、ボロボロと涙を零した。
「ま、さか……あんなことになるなんて、思ってなかったんだ。ステファンとサラが逃亡したって聞いて、大変なことになったって青褪めた。カメラマンの自殺報道を聞いて、怖くなって……誰にも、何も言えなくなった。
それでも、ステファンが帰ってきてくれて、嬉しかった。ボロボロになったステファンでも、傍にいられるだけで、幸せだった……
なのに、ステファンが失踪して……あ、あんなところに、いる、なんて……ウッ、ウッ、ウゥゥゥゥゥゥ」
ノアが途切れ途切れにサラに訴える。
「ウッ、ウッ……サラ……今までの、ことっっ……全部、謝るから……ウゥッ。
ステファンのこと、諦め……からウグッ。
お、願……彼を……ステファ……ッッ……救って。お願い、だよ……ッッ!!」
ノアの告白に、サラは茫然とした。
ノアがもし……あのカメラマンに私たちの関係を明かさなければ、幸せに暮らしていたのでしょうか。
そう考えて、違うと思った。ふたりの関係は、遅かれ早かれ、バレていたことだろう。ずっと隠し通せるものではない。ましてや相手が、世界的に有名なピアニストのステファンであれば。
ステファンに会いに行かなかったことを、彼を救えなかったことを、サラは一生後悔し続けるだろうと思った。自分が行かなかったことで、今後ステファンはどうなってしまうのかと考えると胸が鋭く刺されたように痛み、ジンジンする。
けれど、ステファンの元に行き、彼を島から連れ出したところで、また二人は世間から身を隠し、禁断の関係を続けることになるだけだ。
ようやく逃れられた負のスパイラルに、自らその身を投げ込むことになってしまう。
もう、過ちは繰り返すべきではない。
たとえ、ステファンのことが忘れられなくても。
彼のことが心配で堪らなくても……
私はもう、彼に関わってはいけないのです。
私は、なんて愚かなのでしょう。
感情だけで、先走ってしまおうとしていました。
お父様とお母様を、もう裏切らないと誓ったのは誰だったのですか?
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私は、何もかも投げ捨てようとしていました。
ステファン、ごめんなさい。
私は、貴方に会いに行くことは……できません。
ノアに散々説得されたものの、サラの意思は変わることなく、ノアは意気消沈して帰って行った。
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