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7.初めての快感

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「これからは、私のことを恋人として……ステファンと呼んで下さい」
「ステファン……」

 名を呼びかけると、それに応えるかのようにステファンの薄くて艶のある唇が寄せられ、甘く優しい口づけが降るように落とされた。

 ただ、唇を重ねているだけ……その行為がこんなにも躰を熱くさせるのですね。
 キスがこんなに気持ちいいものだっただなんて、知りませんでした……

 甘美なステファンの唇に溶かされていくにつれて躰の強張りがなくなり、緩くなっていく。サラは、身も心も幸せで満たされてゆくのを全身で感じていた。

 ドレスがベッドの下に落とされ、細く長い指先が背中に回ると胸を覆っていたブラがスルッと外された。その勢いで、外気に晒された豊かな乳房がプルルンッと、たわわに実った果実のように揺れる。

「きゃっ……!」

 思わず手で胸を隠そうとすると、ステファンの大きな手で制された。

「恥じらうことないでしょう。サラ、美しいですよ……」

 吸い込まれそうなぐらい透明感をもったステファンのライトグレーの瞳に惹き込まれ、囚われていく。

 ステファンは眼鏡をサイドテーブルに置くと、黒地に細いシルバーの縦ストライプが入ったスタンドカラーのシャツのボタンに指先を掛けた。優雅な仕草に思わず溜息をつき、サラは暫し見惚れた。

 首まで詰まった禁欲的なスタンドカラーのボタンが上から外されていき、彼の胸板が少しずつ露わになってくる。サラの鼓動が、ドキドキと高鳴る。

 私は、あの胸に今から抱かれるのですね……

 ステファンが片方の腕から袖を抜き去ると、逞しい胸板がサラの前に晒された。細く引き締まった無駄な贅肉のない、でも筋肉が付きすぎていない均整のとれた上半身。ピアノを弾いて室内で過ごすことの多いステファンの、意外にも男らしい肉体にサラの鼓動が速まる。

 ベッドから立ち上がって優雅にシャツを椅子にかけ、ベルトをスッと抜く。スラックスが音もなく床に落ちるとそれを優雅に拾い上げ、椅子に掛ける。ベッドサイドに悠然と立つステファンを、月明かりが横から差し込み、美しく妖しく照らし出す。

 ステファンがサラの頭の横に片手をつき、華奢な躰を挟むようにして、もう片方の手もついた。美しく整った顔が寄せられ、膝がつくと同時にサラの躰がベッドに深く沈み込んだ。艶のある銀髪の毛先が頬をくすぐり、フルッと震える。

 そんなサラにステファンはクスリと笑みを溢し、顔を寄せる。ライトグレーの瞳の奥に獲物を捕らえる野性を纏った欲がユラユラと揺らめき、その妖美な様から目を逸らすことが出来ない。瞬きする度に影を落とす長い睫毛が、ステファンの妖艶さを一層際立たせた。

「ステ……ファ……ンッ……」

 熱に浮かされたかのように呟いたサラの頬に、ステファンが手を添える。サラは自らの手を重ね、その熱を感じた。

 ステファンは微笑みを浮かべて優しくサラの手を掴み、指先にチュッと軽く口づけを落とした。

「サラ……私の美しいプリンセス……」

 ステファンの言葉がまるで媚薬のように躰中に浸透し、滾るように熱くさせる。

「愛しています」

 ステファンの火照りをもった唇がサラの唇に重なった。

 重なった唇からステファンの舌が入り込み、サラの口内を弄る。緩急つけながら官能的に抜き差しするステファンの舌の動きと漏れる水音に恥ずかしさと興奮を覚えてサラの呼吸が乱れ、肌の熱が上昇していく。

「サラ……とても、美しいですよ」

 彼の唇から伝わる熱が、感触が、サラを愛していると訴えていて、胸がいっぱいになり、涙が込み上がってくる。

 口づけが深まるほどに感度が高まっていき、欲情が焚き付けられていく。自分の中で急激に躰が作り替えられているような、気持ちになる。

 口づけの合間に、ステファンが囁いた。

「まるで、甘美なデザートを味わっているかのような気分です」
「ッッハァ……」

 サラの下半身が痛いぐらいに疼きを持った。

 銀糸を引きながら唇が離れ、うなじから首筋を辿って胸元まで下りてくる。ステファンの手が、サラの豊かな胸に触れる。

「柔らかくて、甘い匂いがしますね」

 下から持ち上げるようにして豊かな乳房を支え、先端の小さなピンクの蕾をちゅっと唇に挟んで吸った。

「ァ……」

 幼い頃から知っている叔父に全てを晒していることにどうしようなく羞恥が込み上がってくるが、愛しい人の逞しい胸に抱かれる悦びがそれを上回って包み込む。

 ささやかな薄桃色だった蕾は情欲と共に赤みを増し、熟した果実は貪られる時を待ち侘びている。ステファンの唇がそれを食む時、その果実の滴は蜜壺から滴り落ちた。

 ステファンは繊細なガラス細工を扱うようにサラに触れ、全身に口づけを落としていった。

 ステファンの指が少しずつ撫で下りていき、ウエストラインをなぞり、太腿に触れる。ピクッと小さく震えたサラに、ステファンが顔を上げる。

「怖いですか?」
「少し、怖いです……でも、ステファン……に愛してもらえて、とても……嬉しいです」

 精一杯自分の正直な気持ちを伝えようとするサラが愛おしく、ステファンが肌に口付けた。

 時間をかけて膝が開かれ、サラ自身すら知らない未知の領域にステファンの指が触れる。

「サラ……」

 切ない吐息を漏らすように名前を呼ばれ、サラの中心が甘く疼く。ステファンはたっぷりと濡れた蜜を指で掬い取り、紅く熟した敏感な花芽にそっと触れた。

「ンクッ」

 感じたことのない快感に身を震わせていると、巧みなステファンの指使いにあっというまに蕩かされる。愛蜜が洪水のように溢れ出し、絶頂の高波が押し寄せてくる。

「ハァ!! ステファン……んぅっハァッ……!!」

 花芽が、ビクビクと歓喜に震える。

 ハァッ……躰が、熱い……

 快感が全身を巡って熱く滾り、大きく迫った波に呑み込まれていく。

「ハァアッ……アッ、アッアッ……ンンゥッ……だめぇっっ……!!」

 両腕をステファンの背中に回し、しっかりとしがみつく。脚をピンと伸ばし、背中を大きく反らして思いっきり膣を締め上げて硬直し、絶頂へと駆け上がった。

「初めて味わう絶頂は、いかがでしたか?」
「ハァッ、ハァッ……こ、れが……絶頂……」

 快感と倦怠感を泳ぎながら微睡んでいるサラの華奢な躰を、ステファンが引き寄せた。


「これは、ほんの入口です。
 これから、さらなる快感を味わわせてあげますよ」

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