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10.余韻
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「よく眠れましたか?」
甘い口づけの余韻に浸りながらステファンの胸に頭を預けるサラの髪を一束指に絡め、ステファンが優しくそれに口づけて尋ねた。
壁掛けのクリスタル時計に目をやると、既に時刻は4時を回っていた。
「はい、そうみたいです。起きたら、一瞬どこにいるのか分かりませんでした」
ステファンは、クスリと笑みを溢した。
「えぇ。あの濡れたシーツで寝かせるのはと思い、ゲストルームに運んだのですよ」
そ、そうでしたわ! 私、なんてことを!!
昨夜の秘事が急速に頭の中で再現されて、逃げ出したいほどの恥ずかしさに襲われる。
「す、すみません、私……」
「謝ることではありませんよ。サラと私の愛の交わりの残痕を愛おしいと思いこそすれ、不快に思う気持ちなどありませんから」
ステファンは完璧な笑みを浮かべて、ニコリと微笑んだ。
愛の交わりの、残痕……
その言葉にカーッと熱くなった顔を隠すように、サラは俯いた。
「わ、たくし……シャワーを浴びてきますね」
ステファンの膝から下りようとすると、下半身がズキッと痛み、蹌踉めきそうになった。そのサラの躰を、ステファンの逞しい腕が抱き留める。
「昨日は無理をさせてしまい、申し訳ありませんでした。美しい貴女の姿を前に、欲情を抑えることが出来ませんでした。
まだ、躰が痛むのでしょう? 私がお手伝いしましょうか?」
「い、いえ……ひとりで、大丈夫ですので」
サラはステファンの腕から逃れ、そそくさとバスルームへと向かった。
「はぁーーーっ」
浴室の扉を閉めると、サラは盛大に息をついた。
ステファンといると、心臓がいくつあっても足りなさそうです……
ドレスに手を掛けようとすると、浴室の扉がノックされた。
「はい......」
扉を開けると、ステファンがドレスを手に立っていた。
「こちらを。気に入って頂けるといいのですが」
渡されたのは、ラベンダー色のイブニングドレスだった。ノースリーブで胸元がハート形になったセクシーなスタイルでありながら、オーガンジー素材のドレープが胸元の裾から腕を通って背中までかかってあり気品にも満ちていた。背中は肩甲骨が美しく見えるように計算しつくされたデコルテで裾のV字を埋めるようにスワロフスキーがあしらわれていた。
「同じシリーズでバッグと靴もついでに買っておきましたので、それも後で見てみて下さい」
「あ、ありがとうございます……」
あまりにもスマートなステファンの対応に、サラはただ単純に御礼を言うことしかできずにいた。
もっと、気の利いたことを言えたらいいのに……
「では……」
そんなサラを気にすることなく、ステファンは静かに扉を閉めた。
なんだか......まだ、夢の中にいるみたいです。
シャワーを浴び終えると、ステファンの用意してくれたイブニングドレスに身を包んだ。胸元は空きすぎず、きつすぎず、ウエストのラインもピッタリしていて、ドレスの裾もまるでサラの身長に合わせたかのような、美しさを際立たせるのに最適な長さだった。
まるで、オートクチュールみたいにドレスが躰に馴染んでます。
ステファンがこのドレスを購入したのは肌を合わせる前でしたのに、それ以前から私の躰を知られてしまっていたみたい……
そう思うだけで、サラの躰は熱く疼いた。
ピアノの譜面に向かってペンを走らせるステファンの背中に、サラは遠慮がちに声をかけた。
「ステファン……」
僅かに緊張して立ち尽くすサラを、ステファンがゆっくりと眺める。視姦されているかのように頭の先から足の爪先までが緊張し、サラの躰が熱くなった。
息をつき、ステファンは瞳を揺らめかせた。
「サラ、とても美しいですよ。私の見立てに間違いはなかったようですね」
嬉しい……
ステファンの言葉にサラは頬を緩め、はにかんだような笑顔を見せた。まるで少女のような無垢なその笑顔は、昨夜彼に見せた色香漂う表情とはまるで別人のようだった。
だから、こんなにも貴女に惹かれてしまうのでしょうか。貴女の、どんな表情も私が独り占めしてしまいたい。
ステファンは立ち上がり、サラに近付くと頬を優しく包み込んだ。もう片方の手をサラの細い腰に回し、ぐっと引き寄せる。
切ない表情で見上げたサラに、ステファンが愛情の籠った瞳で見つめ返した。
「では、出かけましょうか」
「これから、どこに行くのですか?」
ステファンの唇がサラの綺麗な鎖骨のラインをなぞり、首筋を這い上がると耳朶を甘く噛み、腰に響く低く蕩けるような声で囁いた。
「まずは食事に……それからのことは、ご想像にお任せします」
そんな言い方をされたら、何かを期待せずにはいられません……
速まる鼓動を感じながらサラはステファンを見上げ、熱っぽく見つめた。
甘い口づけの余韻に浸りながらステファンの胸に頭を預けるサラの髪を一束指に絡め、ステファンが優しくそれに口づけて尋ねた。
壁掛けのクリスタル時計に目をやると、既に時刻は4時を回っていた。
「はい、そうみたいです。起きたら、一瞬どこにいるのか分かりませんでした」
ステファンは、クスリと笑みを溢した。
「えぇ。あの濡れたシーツで寝かせるのはと思い、ゲストルームに運んだのですよ」
そ、そうでしたわ! 私、なんてことを!!
昨夜の秘事が急速に頭の中で再現されて、逃げ出したいほどの恥ずかしさに襲われる。
「す、すみません、私……」
「謝ることではありませんよ。サラと私の愛の交わりの残痕を愛おしいと思いこそすれ、不快に思う気持ちなどありませんから」
ステファンは完璧な笑みを浮かべて、ニコリと微笑んだ。
愛の交わりの、残痕……
その言葉にカーッと熱くなった顔を隠すように、サラは俯いた。
「わ、たくし……シャワーを浴びてきますね」
ステファンの膝から下りようとすると、下半身がズキッと痛み、蹌踉めきそうになった。そのサラの躰を、ステファンの逞しい腕が抱き留める。
「昨日は無理をさせてしまい、申し訳ありませんでした。美しい貴女の姿を前に、欲情を抑えることが出来ませんでした。
まだ、躰が痛むのでしょう? 私がお手伝いしましょうか?」
「い、いえ……ひとりで、大丈夫ですので」
サラはステファンの腕から逃れ、そそくさとバスルームへと向かった。
「はぁーーーっ」
浴室の扉を閉めると、サラは盛大に息をついた。
ステファンといると、心臓がいくつあっても足りなさそうです……
ドレスに手を掛けようとすると、浴室の扉がノックされた。
「はい......」
扉を開けると、ステファンがドレスを手に立っていた。
「こちらを。気に入って頂けるといいのですが」
渡されたのは、ラベンダー色のイブニングドレスだった。ノースリーブで胸元がハート形になったセクシーなスタイルでありながら、オーガンジー素材のドレープが胸元の裾から腕を通って背中までかかってあり気品にも満ちていた。背中は肩甲骨が美しく見えるように計算しつくされたデコルテで裾のV字を埋めるようにスワロフスキーがあしらわれていた。
「同じシリーズでバッグと靴もついでに買っておきましたので、それも後で見てみて下さい」
「あ、ありがとうございます……」
あまりにもスマートなステファンの対応に、サラはただ単純に御礼を言うことしかできずにいた。
もっと、気の利いたことを言えたらいいのに……
「では……」
そんなサラを気にすることなく、ステファンは静かに扉を閉めた。
なんだか......まだ、夢の中にいるみたいです。
シャワーを浴び終えると、ステファンの用意してくれたイブニングドレスに身を包んだ。胸元は空きすぎず、きつすぎず、ウエストのラインもピッタリしていて、ドレスの裾もまるでサラの身長に合わせたかのような、美しさを際立たせるのに最適な長さだった。
まるで、オートクチュールみたいにドレスが躰に馴染んでます。
ステファンがこのドレスを購入したのは肌を合わせる前でしたのに、それ以前から私の躰を知られてしまっていたみたい……
そう思うだけで、サラの躰は熱く疼いた。
ピアノの譜面に向かってペンを走らせるステファンの背中に、サラは遠慮がちに声をかけた。
「ステファン……」
僅かに緊張して立ち尽くすサラを、ステファンがゆっくりと眺める。視姦されているかのように頭の先から足の爪先までが緊張し、サラの躰が熱くなった。
息をつき、ステファンは瞳を揺らめかせた。
「サラ、とても美しいですよ。私の見立てに間違いはなかったようですね」
嬉しい……
ステファンの言葉にサラは頬を緩め、はにかんだような笑顔を見せた。まるで少女のような無垢なその笑顔は、昨夜彼に見せた色香漂う表情とはまるで別人のようだった。
だから、こんなにも貴女に惹かれてしまうのでしょうか。貴女の、どんな表情も私が独り占めしてしまいたい。
ステファンは立ち上がり、サラに近付くと頬を優しく包み込んだ。もう片方の手をサラの細い腰に回し、ぐっと引き寄せる。
切ない表情で見上げたサラに、ステファンが愛情の籠った瞳で見つめ返した。
「では、出かけましょうか」
「これから、どこに行くのですか?」
ステファンの唇がサラの綺麗な鎖骨のラインをなぞり、首筋を這い上がると耳朶を甘く噛み、腰に響く低く蕩けるような声で囁いた。
「まずは食事に……それからのことは、ご想像にお任せします」
そんな言い方をされたら、何かを期待せずにはいられません……
速まる鼓動を感じながらサラはステファンを見上げ、熱っぽく見つめた。
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