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404.依存症
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美羽は、圭子の言葉で閃いた。
「パチンコで、使ったんですか?」
圭子は答えないが、否定しないということは肯定と同義だ。誤魔化すように、圭子はケーキに手をつけた。
先日の琴子の話が蘇る。やはり圭子は、家族にパチンコに行ってないと嘘をつきつつ、隠れてコソコソと通っていた。
それだけじゃなく、義昭から借りたお金どころか必要な生活費までパチンコに注ぎ込み、使ってしまったのだ。
ほのちゃんを置いてパチンコに行って、晃さんに怒られたって聞いてたのに……まだ、懲りてなかったんだ。
心の中で呆れつつも、それを見せないようにして圭子に尋ねる。
「晃さんから、パチンコ禁止されてるんじゃなかったんですか?」
圭子が食べていたケーキを掬っていたフォークの手を止め、美羽に顔を上げて食いついた。
「だからぁ!! 兄さんにもお母さんにも知られたくないの!! ぜっっったいに言わないでよっっ!!」
美羽は短く息を吐き、気持ちを少しでも落ち着かせようとカモミールティーに口をつけた。
圭子が両肘をテーブルにつき、頭を抱え込んだ。
「ほのかを預けてたあの日、大負けして、うちの貯金崩して使っちゃったのよ。確変きたけど、負けがこんでて取り返せなくて……そのことがパパにバレて、あの人の実家から勝手に帰ってほのかを兄さんのとこに置いてったことも怒られて、パチンコしばらくするなって言われて。我慢したのよ?
我慢、しようと思ったけど……だめなの。
パチンコの前を通ると、心臓がバクバクして興奮するの。行きたくて行きたくて堪らなくなるの。何してても、パチンコのことがずっと頭から離れないのよ。
スーパーに買い物に行っても、数字のゾロ目見るだけでパチンコの連想しちゃって、行きたくて行きたくて気が狂いそうになるの。TVでパチンコのCMが流れると落ち着かなくなって、頭の中でパチンコの曲がかかりっぱなしになって、カーッと躰が熱くなってくるの。
気づいたらパチンコに向かって歩いてて、強い磁石で引き込まれるみたいに吸い寄せられて……ガラス扉越しに、玉が出てる客をじっと見つめてるの。
もうこれ以上我慢できなくなって、ちょっとだけって思って、お母さんに『買い物行ってくる』って出掛けてパチンコやったんだけど……やり出したら、止まらなくて。負けてるのわかってても、あと5千、1万、3万つっこめば勝てるかもって思っちゃうの。
自分で自分が止められないの!!
お母さんが引っ越したら自制がきかなくなること分かってたから、パート見つけて、ほのかを保育園に預けて、これからはマンション購入のために頑張ってお金を貯めようって……そう、決めてたの」
琴子が引っ越す際に、圭子が仕事を始めたことやほのかを保育園に入園させたことは聞いていた。これから圭子は心を入れ替えて、新しい暮らしに向けて前向きに取り組んでいると思っていた、願っていた。
「それなのに……気づいたら、ほのかを保育園に預けた足で、パチンコに入ってるの。仕事に行く時間になって、やめなきゃ、もう仕事に行かなきゃって思うのに、あと少し、あと少し……ってやめられなくて、仕事にも行けなくて。
手持ちのお金がなくなって、もうやめなきゃ、これが終わったら絶対に帰るんだって決めたのに……
『そうだ。兄さんからもらったお金がある。そこからちょっとだけ借りて、取り戻せばいいんだ!』
って思ったら一気にアドレナリンが放出するぐらい、興奮して……コンビニに駆け込んで、ATMからお金おろしてた。
勝ったらお金を戻そうって思ってたのに、勝った途端に気持ちが大きくなって、これでもっと増やせる、負けたお金を全部取り戻せるって、暗示にかかって。
まだお金があるから大丈夫、まだお金がある……そう思ってるうちに、どんどんお金がなくなって……
次こそは取り返す、次こそは取り返せる、次こそは……ってやってるうちに、兄さんからもらったお金も、全部なくなってた。
……ヒグッ、うっ、うっ……私、ほんとにバカ!! 死にたい!! なんで私ってこうなの!?
お母さんに、いくらお金貸してって頼んでも、『前に貸したお金を返してからだ』とか、『もう私はこれから自分の人生を歩むんだから』とか言って、ほのかを盾にしても貸してくれないしっっ!!
友達にも声かけたけど、誰もお金貸してくれないどころか、電話にも出てくれなくなったり、LINEブロックされたり……
わた、し……私、美羽さんしかいないのよぉぉぉぉーっっ!!
うぅっ、うぅっ、ウワーーーーーン!!」
圭子は人目も憚らず、大声で泣き出した。
「パチンコで、使ったんですか?」
圭子は答えないが、否定しないということは肯定と同義だ。誤魔化すように、圭子はケーキに手をつけた。
先日の琴子の話が蘇る。やはり圭子は、家族にパチンコに行ってないと嘘をつきつつ、隠れてコソコソと通っていた。
それだけじゃなく、義昭から借りたお金どころか必要な生活費までパチンコに注ぎ込み、使ってしまったのだ。
ほのちゃんを置いてパチンコに行って、晃さんに怒られたって聞いてたのに……まだ、懲りてなかったんだ。
心の中で呆れつつも、それを見せないようにして圭子に尋ねる。
「晃さんから、パチンコ禁止されてるんじゃなかったんですか?」
圭子が食べていたケーキを掬っていたフォークの手を止め、美羽に顔を上げて食いついた。
「だからぁ!! 兄さんにもお母さんにも知られたくないの!! ぜっっったいに言わないでよっっ!!」
美羽は短く息を吐き、気持ちを少しでも落ち着かせようとカモミールティーに口をつけた。
圭子が両肘をテーブルにつき、頭を抱え込んだ。
「ほのかを預けてたあの日、大負けして、うちの貯金崩して使っちゃったのよ。確変きたけど、負けがこんでて取り返せなくて……そのことがパパにバレて、あの人の実家から勝手に帰ってほのかを兄さんのとこに置いてったことも怒られて、パチンコしばらくするなって言われて。我慢したのよ?
我慢、しようと思ったけど……だめなの。
パチンコの前を通ると、心臓がバクバクして興奮するの。行きたくて行きたくて堪らなくなるの。何してても、パチンコのことがずっと頭から離れないのよ。
スーパーに買い物に行っても、数字のゾロ目見るだけでパチンコの連想しちゃって、行きたくて行きたくて気が狂いそうになるの。TVでパチンコのCMが流れると落ち着かなくなって、頭の中でパチンコの曲がかかりっぱなしになって、カーッと躰が熱くなってくるの。
気づいたらパチンコに向かって歩いてて、強い磁石で引き込まれるみたいに吸い寄せられて……ガラス扉越しに、玉が出てる客をじっと見つめてるの。
もうこれ以上我慢できなくなって、ちょっとだけって思って、お母さんに『買い物行ってくる』って出掛けてパチンコやったんだけど……やり出したら、止まらなくて。負けてるのわかってても、あと5千、1万、3万つっこめば勝てるかもって思っちゃうの。
自分で自分が止められないの!!
お母さんが引っ越したら自制がきかなくなること分かってたから、パート見つけて、ほのかを保育園に預けて、これからはマンション購入のために頑張ってお金を貯めようって……そう、決めてたの」
琴子が引っ越す際に、圭子が仕事を始めたことやほのかを保育園に入園させたことは聞いていた。これから圭子は心を入れ替えて、新しい暮らしに向けて前向きに取り組んでいると思っていた、願っていた。
「それなのに……気づいたら、ほのかを保育園に預けた足で、パチンコに入ってるの。仕事に行く時間になって、やめなきゃ、もう仕事に行かなきゃって思うのに、あと少し、あと少し……ってやめられなくて、仕事にも行けなくて。
手持ちのお金がなくなって、もうやめなきゃ、これが終わったら絶対に帰るんだって決めたのに……
『そうだ。兄さんからもらったお金がある。そこからちょっとだけ借りて、取り戻せばいいんだ!』
って思ったら一気にアドレナリンが放出するぐらい、興奮して……コンビニに駆け込んで、ATMからお金おろしてた。
勝ったらお金を戻そうって思ってたのに、勝った途端に気持ちが大きくなって、これでもっと増やせる、負けたお金を全部取り戻せるって、暗示にかかって。
まだお金があるから大丈夫、まだお金がある……そう思ってるうちに、どんどんお金がなくなって……
次こそは取り返す、次こそは取り返せる、次こそは……ってやってるうちに、兄さんからもらったお金も、全部なくなってた。
……ヒグッ、うっ、うっ……私、ほんとにバカ!! 死にたい!! なんで私ってこうなの!?
お母さんに、いくらお金貸してって頼んでも、『前に貸したお金を返してからだ』とか、『もう私はこれから自分の人生を歩むんだから』とか言って、ほのかを盾にしても貸してくれないしっっ!!
友達にも声かけたけど、誰もお金貸してくれないどころか、電話にも出てくれなくなったり、LINEブロックされたり……
わた、し……私、美羽さんしかいないのよぉぉぉぉーっっ!!
うぅっ、うぅっ、ウワーーーーーン!!」
圭子は人目も憚らず、大声で泣き出した。
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