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379.香織の告白
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控室に戻ると、類と香織が見当たらない。
あれっ。どうしたんだろう……
視線を彷徨わせていると、浩平がチョコレートを摘みながら美羽に声をかけた。
「類とかおりんなら、さっき外に出てったっすよー。かおりんが、類に話があるって。類に、すぐ戻るからここで待っててって、美羽さんに伝えるように言われましたー」
「そ、う……」
表情に陰りを見せた美羽に気がつかず、萌はウキウキした様子だった。
「ふふっ……かおたん、今頃何を喋ってるんだろー。気になるたーん!!
あーっ、覗きにいきたいたーん!!」
「萌たーん、それヤバイって。覗きに行ってんのバレたら、かおりんに半殺しされそうだし」
「ぴぇぇん! つらみーっ!!」
「とりま、類たちが戻るまで待ってた方がいいっすね」
萌の気持ちには鈍感だが、こういった気遣いが出来るのが、浩平の良さだ。
ほんと……いったい、何を話してるの?
もしかして、かおりん。類に告白してる、とか……
次々にネガティブな発想が浮かんできて、自身の考えに苦しまされる。
「お待たせ」
控室の扉が開き、類と香織が帰ってきた。類はいつもと変わらない様子だが、香織は俯いているため表情が見えない。
「じゃ、帰ろっか」
その類の一言の後、追加される。
「かおりんも……一緒に、帰ることになったから」
かおりん、も……
「そう……」
いったい、ふたりの間に何があったの……?
類と香織が戻ってくるのを待っていた浩平と萌も含め、5人で駐車場へと向かう。浩平がずっと喋り続けてくれ、明るい雰囲気でいられたのが救いだった。
「じゃ、おつかれーっす!」
浩平が明るく手を振る横には萌がいて、小さく手を振っていた。少し頬が引き攣り、緊張しているように見える。
2人と別れた途端、急に重苦しい雰囲気が3人にのし掛かったきたように感じた。
後部座席に座ろうとすると、類に声を掛けられた。
「ミュー、助手席乗って」
「ぅ、うん……」
いいの、かな。
そう思いながらも、いつもとは違う類の態度が嬉しかった。
「じゃ、かおりんから先に送るから」
類が片手でハンドルを握り、ギアをチェンジする。車が急発進し、美羽はガクンと前後に揺さぶられた。
こんな荒い運転するなんて。
類は、何かに急かされているかのように見えた。
早くふたりきりになりたいという、意味であればいいのに……
今朝かかっていた、ふたりの思い出の曲は流れず、音楽のないこの空間がより重苦しく感じる。
運転席と後部座席に座っているせいだろうか。いつもなら会話が弾む類と香織が話を交わそうとせず、類は美羽にばかり話しかけていた。
それが逆に、美羽の不安を煽りもした。自分がいない間、類と香織が何を話したのか気になって仕方ない。
けれど、ここでは聞いていけない気がした。
「それじゃ、また明日」
後部座席の香織がシートベルトを外そうとした時点で、類がそう声を掛ける。
「類、くん……」
何か言いかけた香織に、類の声が被さる。
「もう遅いから、今日はゆっくりした方がいいと思うよ」
その言葉に押し出されるように、香織が車のドアに手を掛けた。類が香織に対して冷たいのは明白な事実で、それが美羽の心を痛ませる。
ふたりの間に、何があったの?
「かおりん……」
その声に、香織が振り返る。
「美羽……」
その瞳は、潤んでいるようにも見えた。
「ねぇ、早く降りてくれる?」
イライラした類の声が運転席から響いた。その刺々しさは、美羽の心にも突き刺さった。
「類、そんな言い方しなくても……」
「……類くんは、早く愛しい美羽とふたりきりになりたくて、しかたないんでしょ?」
「ッッ!!」
美羽が声を詰まらせる。
「だから、私にさっさと降りてほしいんだよね?」
「かおりん、何言って……」
美羽は口に手を当て、躰を震わせた。混乱と昂った感情で、瞳の奥が熱くなり、香織が納得するような言い訳をしなければと思うのに、何も声が出てこなかった。
そんな美羽の表情を見て、香織が唇をきつく噛み締め、肩を震わせて俯いた。
「ご、ごめ……八つ当たり、なの。さっき類くんに告白、して……振られた、から。それで、ついそんなこと言っちゃって。
姉弟で恋愛なんて、あるはず……ないのに。ほんと、ごめん」
かおりんが、類に振られた……
類は、ハァ……と短く溜息をついた。
香織が車から降り、美羽の側に立つ。ウィンドウを下ろすと、香織が微笑んだ。それは、見ていて痛々しかった。
「美羽、ごめんね……
類、くん……送ってくれて、ありがとう」
「あぁ」
車を発進させようとする類に、美羽が慌てて香織に呼びかける。
「か、かおりんっっ!! また……明日」
「うん、また明日」
香織の言葉が、エンジンの音で掻き消される。類は車を急発進させ、サイドウィンドウに映る香織は、みるみるうちに小さくなっていった。
八つ当たりで、あんなこと言ったなんて言ってたけど……違う。
かおりんは、知ってるんだ。気づいてる、私たちの関係を。
今までだって、かおりんが私たちの関係に気付いているんじゃないかって思うことは何回もあった。
きっとかおりんは、類に振られたことで、今日の類の態度を見て……確信、したんだ。私たちが、普通の姉弟ではないって。
自分が好きになった人が、親友とーーしかも、実の姉弟として想いをを通じ合わせているなんて、どれほどショックだろう。
あれっ。どうしたんだろう……
視線を彷徨わせていると、浩平がチョコレートを摘みながら美羽に声をかけた。
「類とかおりんなら、さっき外に出てったっすよー。かおりんが、類に話があるって。類に、すぐ戻るからここで待っててって、美羽さんに伝えるように言われましたー」
「そ、う……」
表情に陰りを見せた美羽に気がつかず、萌はウキウキした様子だった。
「ふふっ……かおたん、今頃何を喋ってるんだろー。気になるたーん!!
あーっ、覗きにいきたいたーん!!」
「萌たーん、それヤバイって。覗きに行ってんのバレたら、かおりんに半殺しされそうだし」
「ぴぇぇん! つらみーっ!!」
「とりま、類たちが戻るまで待ってた方がいいっすね」
萌の気持ちには鈍感だが、こういった気遣いが出来るのが、浩平の良さだ。
ほんと……いったい、何を話してるの?
もしかして、かおりん。類に告白してる、とか……
次々にネガティブな発想が浮かんできて、自身の考えに苦しまされる。
「お待たせ」
控室の扉が開き、類と香織が帰ってきた。類はいつもと変わらない様子だが、香織は俯いているため表情が見えない。
「じゃ、帰ろっか」
その類の一言の後、追加される。
「かおりんも……一緒に、帰ることになったから」
かおりん、も……
「そう……」
いったい、ふたりの間に何があったの……?
類と香織が戻ってくるのを待っていた浩平と萌も含め、5人で駐車場へと向かう。浩平がずっと喋り続けてくれ、明るい雰囲気でいられたのが救いだった。
「じゃ、おつかれーっす!」
浩平が明るく手を振る横には萌がいて、小さく手を振っていた。少し頬が引き攣り、緊張しているように見える。
2人と別れた途端、急に重苦しい雰囲気が3人にのし掛かったきたように感じた。
後部座席に座ろうとすると、類に声を掛けられた。
「ミュー、助手席乗って」
「ぅ、うん……」
いいの、かな。
そう思いながらも、いつもとは違う類の態度が嬉しかった。
「じゃ、かおりんから先に送るから」
類が片手でハンドルを握り、ギアをチェンジする。車が急発進し、美羽はガクンと前後に揺さぶられた。
こんな荒い運転するなんて。
類は、何かに急かされているかのように見えた。
早くふたりきりになりたいという、意味であればいいのに……
今朝かかっていた、ふたりの思い出の曲は流れず、音楽のないこの空間がより重苦しく感じる。
運転席と後部座席に座っているせいだろうか。いつもなら会話が弾む類と香織が話を交わそうとせず、類は美羽にばかり話しかけていた。
それが逆に、美羽の不安を煽りもした。自分がいない間、類と香織が何を話したのか気になって仕方ない。
けれど、ここでは聞いていけない気がした。
「それじゃ、また明日」
後部座席の香織がシートベルトを外そうとした時点で、類がそう声を掛ける。
「類、くん……」
何か言いかけた香織に、類の声が被さる。
「もう遅いから、今日はゆっくりした方がいいと思うよ」
その言葉に押し出されるように、香織が車のドアに手を掛けた。類が香織に対して冷たいのは明白な事実で、それが美羽の心を痛ませる。
ふたりの間に、何があったの?
「かおりん……」
その声に、香織が振り返る。
「美羽……」
その瞳は、潤んでいるようにも見えた。
「ねぇ、早く降りてくれる?」
イライラした類の声が運転席から響いた。その刺々しさは、美羽の心にも突き刺さった。
「類、そんな言い方しなくても……」
「……類くんは、早く愛しい美羽とふたりきりになりたくて、しかたないんでしょ?」
「ッッ!!」
美羽が声を詰まらせる。
「だから、私にさっさと降りてほしいんだよね?」
「かおりん、何言って……」
美羽は口に手を当て、躰を震わせた。混乱と昂った感情で、瞳の奥が熱くなり、香織が納得するような言い訳をしなければと思うのに、何も声が出てこなかった。
そんな美羽の表情を見て、香織が唇をきつく噛み締め、肩を震わせて俯いた。
「ご、ごめ……八つ当たり、なの。さっき類くんに告白、して……振られた、から。それで、ついそんなこと言っちゃって。
姉弟で恋愛なんて、あるはず……ないのに。ほんと、ごめん」
かおりんが、類に振られた……
類は、ハァ……と短く溜息をついた。
香織が車から降り、美羽の側に立つ。ウィンドウを下ろすと、香織が微笑んだ。それは、見ていて痛々しかった。
「美羽、ごめんね……
類、くん……送ってくれて、ありがとう」
「あぁ」
車を発進させようとする類に、美羽が慌てて香織に呼びかける。
「か、かおりんっっ!! また……明日」
「うん、また明日」
香織の言葉が、エンジンの音で掻き消される。類は車を急発進させ、サイドウィンドウに映る香織は、みるみるうちに小さくなっていった。
八つ当たりで、あんなこと言ったなんて言ってたけど……違う。
かおりんは、知ってるんだ。気づいてる、私たちの関係を。
今までだって、かおりんが私たちの関係に気付いているんじゃないかって思うことは何回もあった。
きっとかおりんは、類に振られたことで、今日の類の態度を見て……確信、したんだ。私たちが、普通の姉弟ではないって。
自分が好きになった人が、親友とーーしかも、実の姉弟として想いをを通じ合わせているなんて、どれほどショックだろう。
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