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111.変化

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 美羽は寝支度を整えると鍵を掛け、ベッドに横たわった。

 類はシャワーを浴び終え、いつものように美羽に『おやすみ』を言って階段を下りていった。今頃は自室へ戻っているはずだ。

 いつもなら扉に凭れ掛かって待つ、この瞬間。
 今はこうして、ベッドでその時を待っている。肌に触れるシーツの温度が、肌触りが、柔軟剤の匂いが気になって仕方ない。

 トクトクトクトク……

 横たわっていると、心臓の音がやけに大きく響いて伝わってくる。普段と同じ状況なはずなのに、なぜかいつもより胸がザワザワと騒いだ。

 期待、してる?
 そんなこと、ない……
 
 自分で自分を否定する。

 そんなことを、幾度くり返してきただろう。

『フフッ……ミュー、お待たせ』

 類の甘やかな声が胸に響いて、心臓が貫かれた。

 待ってなんて……

 焦りながら否定する間もなく、唇がキュッと押し付けられる感触にピクッと震える。

『ッハァ……ミューの唇。いつも瑞々しくてプルプルで、重なると吸い付いてくるの好き』

 その感触を確かめるように、何度も押し返される唇に、類の唇の感触が蘇ってくる。

 昨夜、頬にキスされた時のあの感触が。

 温かくて柔らかくて、しっとりしてて、吸いついてくるみたいだった。重なったのはほんの一瞬だったのに、鮮烈にあの感触が残っている。

 そう考えただけで、美羽の蜜壺からジュンと熱い蜜が噴き出してくる。

 こんな反応、類に対してだけだ。

 今夜の類は、いつもより愛撫にかける時間が丁寧で長い……

 じわじわと責め立てられ、もどかしくも甘美な肌触りがシーツの波間を縫って伝わってくると、本当に類に触れられているかのように錯覚してしまい、艶かしい吐息が漏れる。

『ハァッ……ミューの感じてる顔、可愛い』

 胸に轟く声に、ドクンと心臓が音を立てる。

 まるですぐ傍で見られているような、気持ちになる。

 唇から首筋、鎖骨と、愛撫は扉に凭れながら受けていた時と同じ筈なのに、違う。ベッドに躰を横たえることによって、より類と情事を交わらせているという気分になり、興奮が高まっていく。

『ハァッ、ハァッ……ミュー。好き、大好きだよ……ハァッ、ハァッ』

 類の官能的な吐息が鼓膜の奥に響いてこだまする。

 行為の際にあまり声を上げない男性もいるが、類は感じるまま素直に反応し、身悶えるような喘ぎ声を漏らす。その声を聞くのが堪らなく好きだった。

 自分に感じてくれているのだと、嬉しくなった。

『ハァッ、ハァッ、ハァッ……ック。ねぇ、ミュー。
 ミューも一緒に感じてくれてる? ハァッ……』

 背中を何度もサワサワとなぞられて、昨夜のように背筋が大きくしなる。

「ッぁあ……」

 けれど今夜は、遮るものはない。欲望の花弁が開き、妖しく美しい花を咲かせていく。 

 豊かな胸の先端の蕾を爪で弾かれ、まるで操り人形のように躰が跳ねる。こよりのように捻られ、腰を横にくねらせて膣をキュンキュンと締め付けさせられる。花園から溢れ出した愛蜜が内腿からシーツへと零れ落ち、濡れた感触に自分の欲情を感じさせられる。

 快感に乱されたシーツは、何重もの皺が重なっていった。
 
『ハァッ……あぁ、乱れてるミュー。いいよ……ハァッ、ハァッ。
 もっと、もっと淫らなミューを見せて?』

 耳をふるりと震わせると蜜壺からドロリと溢れ出て、その感触に小さく痙攣する。

「ンクッ」



 お願い、許して……



 ギュッと瞳を閉じると、美羽の目尻から涙が溢れ出した。

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