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君の名前

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君に恋したあの日から……

君の名前は
私にとって
特別なものになった

何の変哲もない
どこにでもよくある名前

それが

テレビからその名前が流れる
道端で誰かが呼び止める
電車の革釣り広告に名前が書かれている

分かっているのに……

それは
君とは全く関係ない
ただ、同じ名前の誰か

それなのに
反応してしまう

目線が文字を追い掛ける
耳が響きを捕まえる
鼓動がトクン……と、跳ねる

その度に

君がどれほど
私にとって特別なのか
苦しいくらい思い知らされる

一瞬で

君の笑顔を
柔らかい声を
清潔な匂いを
逞しい腕を

呼び起こさせる

君の、名前……
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