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黒板消し

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黒板の右下に書かれた名前

そうだ
今日は日直だった

一番嫌なのは……
授業が終わってから、黒板を消さなければいけないこと

チョークの粉で制服が白くなるし
背が低い私は、黒板の上に書かれた文字にいつも届かない

はぁ……これ、嫌がらせ?

数学の先生は、いつも黒板の左上ギリギリから書き始め
ご丁寧に右下ギリギリまで書いてくれる

どうしよう
届かない、けど……
椅子を持ってくるのも面倒くさい。

ピョンピョンとジャンプしながら
必死で黒板の文字と格闘する

プッと吹き出す音の後

『貸して……』

ボソッと溢される低い声

すっぽりと包み込む影

大きな手が
黒板消しを持つ私の手に重なった……

「う、うん……///」

この声……
間違い、ない。

顎を反らして顔を上げた

「ッッ」

やっぱり……
同じクラスの秘かに気になっている、彼……

いつも無口で
人とも距離を置いていて

何を考えているか分からない

でも
なぜか気になって
視線が追いかけてしまう

それは、きっと
たった一度だけ
彼が笑うところを見たから

あんな顔、出来るんだって
思ったら

私にも
あの笑顔を向けて欲しい……

そんな風に
願うようになった

身長差30センチの彼と黒板に挟まれて
見動き出来ない……

彼の長い腕が伸び、私の頭越しに
凄まじい文字の羅列を消していく

彼の『正しい』男子学生そのものの匂い

黒板を消す度に
腕と一緒に揺さぶられる身体が、微妙に背中に当たって

私の心臓は
ネジを巻き過ぎてしまったオルゴールのように超高速で音を奏でる

『はい…』

気付けばもう
黒板は綺麗になっていて……

渡された黒板消しを受け取ると
彼が笑った

『お前、ちっこいな』

反論することも出来ず

ただ
彼の笑顔から目が逸らせないでいる

私がいた
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