悪役夫人になりたいですのに、旦那様が溺愛しすぎてなれませんわっっ!!

奏音 美都

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悪役夫人になりたいですのに、旦那様が溺愛しすぎてなれませんわっっ!!

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「ホーッホッホッホッ、これで貴女の婚約は破棄されたわね」
「ッッ! アンテワーヌ、卑怯ですわよっっ!!」
「恨むなら、私のこの美貌を恨むことですわね」

 そう言って誇らしげに立ち去る私はアンテワーヌ。悪役令嬢として名高く、これまで婚約破棄させた恋人たちは数知れず。

 けれど、私は殿方たちの心を手に入れることなど、興味はありませんでした。

 恋など所詮ゲームに過ぎませんわ。一時の熱が過ぎれば冷めてしまうもの。

 どんなに「愛している」「君だけだ」と言ったところで、魅力的な女性を目の前にすれば、男の理性などボロボロに崩れ、肉欲の前にひれ伏すしかなくなるのです。

 ですから私は、恋愛になど本気になりません。このまま悪役令嬢として人を陥れ、嘲り笑い、楽しく暮らせればいい、そう思っておりました。

 なのに、いったいどうしてこのようなことになったのでしょう。

 ベイリー侯爵であるスミス様が突然私の目の前に現れ、毎日のように求婚してきたのです。

 もちろん、私の類稀なる美貌にどんな男性でも目を奪われ、心奪われてきましたわ。けれど、私が冷たい言葉を投げかけ、突き放せば皆、離れていきますのに……

 スミス様は違いました。

 どんなに辛辣な言葉を投げつけても、嫌味を言っても、ツンツンした態度で接しても、また翌日には笑顔で私に求婚されるのです。

 私どころか、私の両親にまで取り入って、すっかりお気に入りとなってしまうだなんて……頭が痛いですわ。

 メイドに、スミス様は部屋に通さないようにと申し付けても、お父様が許可されるから、メイドまで言うことを聞きませんし。

 そんなことで、私はスミス様の婚約を受け入れるしかなくなり、婚姻まで結ばされることになりました。

 悪役令嬢として多くの方達を苦しめてきた私が、幸せになる資格などありませんのに……

「アンテワーヌ、愛してるよ。君が愛してくれなくても、一生君だけを、私は心を尽くして愛し続けるから」

 スミス様のお言葉に、思わず胸が熱くなります。

 こんなどうしようもない女を、どうして好いてくださるのかしら。私には、スミス様はもったいなすぎますわ。

「なに寒いこと仰ってるんですの。
 私が貴方など、愛するはずがありませんでしょ!
 私はお父様とお母様に請われて、仕方なく貴方と結婚してあげたのですから。わかってますの?」

 あぁ、どうして私はいつも心にもない言葉を言ってしまうのでしょう。
 本当は、スミス様を心から愛していますのに。

 冷たい私の言動を聞いても、スミス様の態度は変わることがありません。

「分かっているよ。可愛いアンテワーヌ。
 僕はそれで幸せなんだ」



 アンテワーヌは知らなかったのです。スミスには特別な能力があり、彼女の心を読めるということを。

 あぁ、アンテワーヌ……なんて可愛いんだ。このツンツンデレぶりがたまらないっっ!!
 冷たいことを言っていても、頬を赤らめてしまうなんて、可愛すぎるっっ。
 溺愛が止まらないっっ!!

 そして今日もアンテワーヌは、スミスに溺愛されるのでした。
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