58 / 66
おまけ2 ーユリアーノーとヒューバートの攻防ー
1
しおりを挟む
いつもの時間にヒューバートは目を覚まし、ベッドからおりてカーテンを開いた。だが、窓からはいつもとは違う景色が広がっている。
ここはクロードの父である前国王の建てた、別邸である城内だ。昨日からヒューバートはここで、クロードの護衛兼執事として滞在している。常にクロードの側に仕え、彼を守るのがヒューバートの役目だ。
だが……
ヒューバートは昨日の出来事を思い出し、ふぅーっと大きく溜息をついた。
王妃殿下が別邸に到着してからというもの、国王陛下であるクロード様とはほとんど顔を合わせていない。それというのも……ぜんぶ、あいつのせいだ。
ユリアーノの屈託ない笑顔が脳裏に浮かび、ヒューバートは怒りで拳を握り締めた。
王妃殿下への城のご案内を国王陛下にお願いするのはまだしも…私が国王陛下のお世話をしようとすると、毎回あいつの邪魔が入って、結局あれから国王陛下に顔を合わすことなく、朝を迎えてしまったじゃないか。
そうだ! 少し早いけど、お茶の用意をして朝の挨拶に伺おう。
そう考えていた途端、バターン! と、勢いよく扉が開いた。
「ヒュービー、おっはよー!」
朝から騒々しいやつだ。
「何しにきた」
ヒューバートはジロリとユリアーノを一瞥するが、全く意に介してないようだ。
「いやー、もしかしてヒュービーが空気読まずにクロード様とルチア様の甘い時間をブチ壊して、お茶なんか持ってって朝の挨拶なんかしに行かないよねぇ? って確認しに来ただけだよ」
ヒューバートはギクリと肩を揺らすが、平静を装う。そんなヒューバートの顔を、ユリアーノが悪戯っぽく窺う。
「もしそんなことでもしたらクロード様、きっとお怒りになるだろうなぁ……」
「そ、そんなこと私がするわけなかろう! 国王陛下のお気持ちは、私が一番理解している。お前に言われるまでもない!」
「そうだよねぇー」
そ、そうか……朝から国王陛下に挨拶に行くのは、まずいことだったのか。
「んじゃヒュービー、厩舎の掃除と馬の手入れと餌やりお願いね」
「なぜ私が!」
「クロード様の大切にされている愛馬のお世話、俺がやってもいいけど……」
「国王陛下の愛馬の世話など、お前に任せられるはずなかろう!」
ヒューバートは足を踏みならしながら、厩舎へと向かって行った。
「ふふっ、いってらっしゃーい!」
ユリアーノは微笑んでヒューバートを見送った。
「じゃ、俺はクロード様とルチア様の朝食の準備してから、朝の挨拶にいこっかな♪」
ユリアーノは朝食の準備を整えた後、クロードとルチアの寝室へと向かい、扉をノックした。
トン、トン……
あれ? 返事がない。おかしいな……
今度は遠慮がちに、小さくノックをした。
トン、トン……
それでも返事がないので、ゆっくりと扉を開く。
クロード様、いらっしゃらないのかな……
「クロード様、ルチア様……」
視線を彷徨わせた先には、ルチアに抱き締められて穏やかに寝息をたてるクロードの姿があった。
「え……」
ユリアーノが驚きで目を見開く。
いつもなら足音が近づいただけで目を覚ますクロード様が、扉をノックしても目を覚まさないなんて……
「二人共、幸せそうな顔して寝ちゃって」
クロード様にとってルチア様は、本当に特別なんだなぁ……
そう思うと、ユリアーノ自身も嬉しさで心が満たされてくる。
ニッコリと微笑むと、「おやすみなさい…」と小さく呟いて、そっと扉を閉めた。
ここはクロードの父である前国王の建てた、別邸である城内だ。昨日からヒューバートはここで、クロードの護衛兼執事として滞在している。常にクロードの側に仕え、彼を守るのがヒューバートの役目だ。
だが……
ヒューバートは昨日の出来事を思い出し、ふぅーっと大きく溜息をついた。
王妃殿下が別邸に到着してからというもの、国王陛下であるクロード様とはほとんど顔を合わせていない。それというのも……ぜんぶ、あいつのせいだ。
ユリアーノの屈託ない笑顔が脳裏に浮かび、ヒューバートは怒りで拳を握り締めた。
王妃殿下への城のご案内を国王陛下にお願いするのはまだしも…私が国王陛下のお世話をしようとすると、毎回あいつの邪魔が入って、結局あれから国王陛下に顔を合わすことなく、朝を迎えてしまったじゃないか。
そうだ! 少し早いけど、お茶の用意をして朝の挨拶に伺おう。
そう考えていた途端、バターン! と、勢いよく扉が開いた。
「ヒュービー、おっはよー!」
朝から騒々しいやつだ。
「何しにきた」
ヒューバートはジロリとユリアーノを一瞥するが、全く意に介してないようだ。
「いやー、もしかしてヒュービーが空気読まずにクロード様とルチア様の甘い時間をブチ壊して、お茶なんか持ってって朝の挨拶なんかしに行かないよねぇ? って確認しに来ただけだよ」
ヒューバートはギクリと肩を揺らすが、平静を装う。そんなヒューバートの顔を、ユリアーノが悪戯っぽく窺う。
「もしそんなことでもしたらクロード様、きっとお怒りになるだろうなぁ……」
「そ、そんなこと私がするわけなかろう! 国王陛下のお気持ちは、私が一番理解している。お前に言われるまでもない!」
「そうだよねぇー」
そ、そうか……朝から国王陛下に挨拶に行くのは、まずいことだったのか。
「んじゃヒュービー、厩舎の掃除と馬の手入れと餌やりお願いね」
「なぜ私が!」
「クロード様の大切にされている愛馬のお世話、俺がやってもいいけど……」
「国王陛下の愛馬の世話など、お前に任せられるはずなかろう!」
ヒューバートは足を踏みならしながら、厩舎へと向かって行った。
「ふふっ、いってらっしゃーい!」
ユリアーノは微笑んでヒューバートを見送った。
「じゃ、俺はクロード様とルチア様の朝食の準備してから、朝の挨拶にいこっかな♪」
ユリアーノは朝食の準備を整えた後、クロードとルチアの寝室へと向かい、扉をノックした。
トン、トン……
あれ? 返事がない。おかしいな……
今度は遠慮がちに、小さくノックをした。
トン、トン……
それでも返事がないので、ゆっくりと扉を開く。
クロード様、いらっしゃらないのかな……
「クロード様、ルチア様……」
視線を彷徨わせた先には、ルチアに抱き締められて穏やかに寝息をたてるクロードの姿があった。
「え……」
ユリアーノが驚きで目を見開く。
いつもなら足音が近づいただけで目を覚ますクロード様が、扉をノックしても目を覚まさないなんて……
「二人共、幸せそうな顔して寝ちゃって」
クロード様にとってルチア様は、本当に特別なんだなぁ……
そう思うと、ユリアーノ自身も嬉しさで心が満たされてくる。
ニッコリと微笑むと、「おやすみなさい…」と小さく呟いて、そっと扉を閉めた。
0
お気に入りに追加
1,215
あなたにおすすめの小説
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる