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初夜の始まり
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クロードがルチアの太腿に手をかけ、抱き上げたままザバッと水音をたてて立ち上がった。浴槽の近くに置いてあったカウチへと、ルチアを抱いたまま横たわる。
クロードの厚くて逞しい胸板に頭を寄せ、ルチアが落ち着かない気持ちでいると、優しく静かな声が響いた。
「ルチア、上を見てみろ」
「え……」
クロードの逞しい躰の上に仰向けになった状態でルチアは自らの躰を重ねさせられ、クロードの腕が腰に回される。上を見上げると、吹き上げになっている高い天井は全てガラスになっており、横からの天窓のおかげで曇ることなく星が一面に広がる夜空を映し出していた。
綺麗……
ルチアは言葉もなく、うっとりと夜空を眺めた。
「今夜は、星がよく見えるな」
「えぇ、本当に……」
腰に回されたクロードの腕に、ルチアは手を添えた。
「そういえば、今日は7月7日だったな」
「? そうですが……それが、何か?」
「東国では、あの白く霧のようにかかる天の川になぞらえた古い伝説があってな」
「伝説、ですか?」
「あぁ。あの天の川に一際輝く、ベガとアルタイルの星があるだろう。
ベガは織姫といって、機織の得意な女だった。アルタイルは彦星といって、有名な牛飼いだった。二人は出会い、恋に落ち、結婚する。だが、二人はお互いに夢中になり、仕事を忘れて来る日も来る日も一緒に楽しく過ごしていたため、それを見兼ねた天帝が、二人を引き離したのだ。
悲しみにくれる二人を可哀想に思った天帝は、一年に一度、7月7日だけ天の川に橋をかけ、二人が出会えるようになったという話だ」
「なんだか……悲しい物語ですわね」
もし私が、クロード様と一年に一度しか会えなくなってしまったら……
想像するだけでルチアは悲しくなり、身を震わせた。
今でさえも、寂しいと思っていますのに。
ルチアは無意識のうちに、クロードの腕をギュッと掴んでいた。
「心配するな。ルチアに一年に一度しか会えないなどということは、何があろうとも絶対にさせぬ」
それから、クロードが自嘲気味に笑う。
「そのようなことになったら、私が耐えられぬからな」
「クロード、様……」
クロードの言葉に、幸せな気持ちでルチアの胸が満たされる。
「最近は、公務に追われてルチアとの時間が持てず、すまなかった。だが、これからはもっとお前との時間が作れるよう、努力すると約束しよう」
クロードの言葉にルチアが頷き、微笑んだ。
私も公務をしっかりとこなして、もっとクロード様とのお時間がもてるよう、努力いたしますわ……
クロードの厚くて逞しい胸板に頭を寄せ、ルチアが落ち着かない気持ちでいると、優しく静かな声が響いた。
「ルチア、上を見てみろ」
「え……」
クロードの逞しい躰の上に仰向けになった状態でルチアは自らの躰を重ねさせられ、クロードの腕が腰に回される。上を見上げると、吹き上げになっている高い天井は全てガラスになっており、横からの天窓のおかげで曇ることなく星が一面に広がる夜空を映し出していた。
綺麗……
ルチアは言葉もなく、うっとりと夜空を眺めた。
「今夜は、星がよく見えるな」
「えぇ、本当に……」
腰に回されたクロードの腕に、ルチアは手を添えた。
「そういえば、今日は7月7日だったな」
「? そうですが……それが、何か?」
「東国では、あの白く霧のようにかかる天の川になぞらえた古い伝説があってな」
「伝説、ですか?」
「あぁ。あの天の川に一際輝く、ベガとアルタイルの星があるだろう。
ベガは織姫といって、機織の得意な女だった。アルタイルは彦星といって、有名な牛飼いだった。二人は出会い、恋に落ち、結婚する。だが、二人はお互いに夢中になり、仕事を忘れて来る日も来る日も一緒に楽しく過ごしていたため、それを見兼ねた天帝が、二人を引き離したのだ。
悲しみにくれる二人を可哀想に思った天帝は、一年に一度、7月7日だけ天の川に橋をかけ、二人が出会えるようになったという話だ」
「なんだか……悲しい物語ですわね」
もし私が、クロード様と一年に一度しか会えなくなってしまったら……
想像するだけでルチアは悲しくなり、身を震わせた。
今でさえも、寂しいと思っていますのに。
ルチアは無意識のうちに、クロードの腕をギュッと掴んでいた。
「心配するな。ルチアに一年に一度しか会えないなどということは、何があろうとも絶対にさせぬ」
それから、クロードが自嘲気味に笑う。
「そのようなことになったら、私が耐えられぬからな」
「クロード、様……」
クロードの言葉に、幸せな気持ちでルチアの胸が満たされる。
「最近は、公務に追われてルチアとの時間が持てず、すまなかった。だが、これからはもっとお前との時間が作れるよう、努力すると約束しよう」
クロードの言葉にルチアが頷き、微笑んだ。
私も公務をしっかりとこなして、もっとクロード様とのお時間がもてるよう、努力いたしますわ……
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