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招待状

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 翌朝。

 朝食の席で、ルチアは何度目になるか分からない溜息をついていた。

 誓約の儀を交わしたものの……クロード様はご公務が忙しく、あれから一度もお会いできていませんわ。せっかく正式な夫婦になれましたのに。

「はぁ……」

 思わず大きく溜息を吐くと、

「プリンセスが溜息など、たとえここが城内であろうとも、他の者が見ている前ではなりませんわよ」

 王妃である母のジュリアに窘められ、ビクリと躰を震わせる。

 愛情深い母ではあるが、ルチアがプリンセスとしての公務についてからは、教育係として厳しく指導していた。

 い、けない。グレートブルタン国のプリンセスとしてやるべきことはたくさんありますのに……溜息ついてる場合じゃありませんわよね。

「し、失礼いたしました、お母様」

 慌ててルチアが謝ると、

「ルチアに書状が届いておりますわよ」

 ジュリアが含みのある笑みを浮かべながら、一通の封筒を手渡した。

 封蝋を見て、ルチアがハッとする。

 これは、シュタート王国の紋章……!

 はやる気持ちを抑え封を切ると、そこには愛しい人の美しい文字が覗いている。

「クロード、様……」

 愛しい気持ちを込めて、クロードの書いた文字をそっと撫でる。

 そこには、クロードの別邸への案内が書かれており、最後に、『ルチアと会えるのを、楽しみにしている』と、一言添えられていた。

 クロード様に、お会いできる……

 先程までの鬱々としていた気持ちは雲が晴れたかのように澄み渡り、気持ちが高揚してきた。

「出発は、明日になります」

 ジュリアの言葉に、驚く。

「えっ……明日、ですか!?」

 けれど、公務が忙しい中、こんな急にお出かけしても大丈夫なのでしょうか?

 するとジュリアが、

「実は……だいぶ前からこの話は出ていたのですけれど、あまり早くからお知らせいたしますと公務に集中できないと思い、伏せておいたのですのよ」
「そうでしたの……」
「ですが」

 ジュリアがルチアを一瞥する。

「どちらにしても、公務には集中できていないようですしね……」

 うっ……

「クロード様と三日間過ごして頂いて、グレートブルタン国にお戻りの際はしっかりと公務に専念して頂きますので、そのつもりでいて下さいませ」

 にっこりと微笑むジュリアに、ルチアの背筋が凍る。

「はい、もちろんですわ。お母様……」

 この為に最近、公務が忙しかったんですのね……さすが、何事にも用意周到なお母様ですわ。

「このクロード様の別邸ですが……限られた人間にしか明かしていないようで。送迎は騎士団長のアルバートに護衛して頂きますが、滞在中は執事のザッカリーのみ側につくことになります」

 そうなんですのね。いったい、どんな所なのでしょう……

「はい、分かりましたわ」
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