3 / 66
招待状
3
しおりを挟む
翌朝。
朝食の席で、ルチアは何度目になるか分からない溜息をついていた。
誓約の儀を交わしたものの……クロード様はご公務が忙しく、あれから一度もお会いできていませんわ。せっかく正式な夫婦になれましたのに。
「はぁ……」
思わず大きく溜息を吐くと、
「プリンセスが溜息など、たとえここが城内であろうとも、他の者が見ている前ではなりませんわよ」
王妃である母のジュリアに窘められ、ビクリと躰を震わせる。
愛情深い母ではあるが、ルチアがプリンセスとしての公務についてからは、教育係として厳しく指導していた。
い、けない。グレートブルタン国のプリンセスとしてやるべきことはたくさんありますのに……溜息ついてる場合じゃありませんわよね。
「し、失礼いたしました、お母様」
慌ててルチアが謝ると、
「ルチアに書状が届いておりますわよ」
ジュリアが含みのある笑みを浮かべながら、一通の封筒を手渡した。
封蝋を見て、ルチアがハッとする。
これは、シュタート王国の紋章……!
はやる気持ちを抑え封を切ると、そこには愛しい人の美しい文字が覗いている。
「クロード、様……」
愛しい気持ちを込めて、クロードの書いた文字をそっと撫でる。
そこには、クロードの別邸への案内が書かれており、最後に、『ルチアと会えるのを、楽しみにしている』と、一言添えられていた。
クロード様に、お会いできる……
先程までの鬱々としていた気持ちは雲が晴れたかのように澄み渡り、気持ちが高揚してきた。
「出発は、明日になります」
ジュリアの言葉に、驚く。
「えっ……明日、ですか!?」
けれど、公務が忙しい中、こんな急にお出かけしても大丈夫なのでしょうか?
するとジュリアが、
「実は……だいぶ前からこの話は出ていたのですけれど、あまり早くからお知らせいたしますと公務に集中できないと思い、伏せておいたのですのよ」
「そうでしたの……」
「ですが」
ジュリアがルチアを一瞥する。
「どちらにしても、公務には集中できていないようですしね……」
うっ……
「クロード様と三日間過ごして頂いて、グレートブルタン国にお戻りの際はしっかりと公務に専念して頂きますので、そのつもりでいて下さいませ」
にっこりと微笑むジュリアに、ルチアの背筋が凍る。
「はい、もちろんですわ。お母様……」
この為に最近、公務が忙しかったんですのね……さすが、何事にも用意周到なお母様ですわ。
「このクロード様の別邸ですが……限られた人間にしか明かしていないようで。送迎は騎士団長のアルバートに護衛して頂きますが、滞在中は執事のザッカリーのみ側につくことになります」
そうなんですのね。いったい、どんな所なのでしょう……
「はい、分かりましたわ」
朝食の席で、ルチアは何度目になるか分からない溜息をついていた。
誓約の儀を交わしたものの……クロード様はご公務が忙しく、あれから一度もお会いできていませんわ。せっかく正式な夫婦になれましたのに。
「はぁ……」
思わず大きく溜息を吐くと、
「プリンセスが溜息など、たとえここが城内であろうとも、他の者が見ている前ではなりませんわよ」
王妃である母のジュリアに窘められ、ビクリと躰を震わせる。
愛情深い母ではあるが、ルチアがプリンセスとしての公務についてからは、教育係として厳しく指導していた。
い、けない。グレートブルタン国のプリンセスとしてやるべきことはたくさんありますのに……溜息ついてる場合じゃありませんわよね。
「し、失礼いたしました、お母様」
慌ててルチアが謝ると、
「ルチアに書状が届いておりますわよ」
ジュリアが含みのある笑みを浮かべながら、一通の封筒を手渡した。
封蝋を見て、ルチアがハッとする。
これは、シュタート王国の紋章……!
はやる気持ちを抑え封を切ると、そこには愛しい人の美しい文字が覗いている。
「クロード、様……」
愛しい気持ちを込めて、クロードの書いた文字をそっと撫でる。
そこには、クロードの別邸への案内が書かれており、最後に、『ルチアと会えるのを、楽しみにしている』と、一言添えられていた。
クロード様に、お会いできる……
先程までの鬱々としていた気持ちは雲が晴れたかのように澄み渡り、気持ちが高揚してきた。
「出発は、明日になります」
ジュリアの言葉に、驚く。
「えっ……明日、ですか!?」
けれど、公務が忙しい中、こんな急にお出かけしても大丈夫なのでしょうか?
するとジュリアが、
「実は……だいぶ前からこの話は出ていたのですけれど、あまり早くからお知らせいたしますと公務に集中できないと思い、伏せておいたのですのよ」
「そうでしたの……」
「ですが」
ジュリアがルチアを一瞥する。
「どちらにしても、公務には集中できていないようですしね……」
うっ……
「クロード様と三日間過ごして頂いて、グレートブルタン国にお戻りの際はしっかりと公務に専念して頂きますので、そのつもりでいて下さいませ」
にっこりと微笑むジュリアに、ルチアの背筋が凍る。
「はい、もちろんですわ。お母様……」
この為に最近、公務が忙しかったんですのね……さすが、何事にも用意周到なお母様ですわ。
「このクロード様の別邸ですが……限られた人間にしか明かしていないようで。送迎は騎士団長のアルバートに護衛して頂きますが、滞在中は執事のザッカリーのみ側につくことになります」
そうなんですのね。いったい、どんな所なのでしょう……
「はい、分かりましたわ」
0
お気に入りに追加
1,215
あなたにおすすめの小説
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる