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愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

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 ジルベールと執務室でパーティーの最終確認を済ませ、いよいよパーティーの行われるホールへと向かう。

 扉を開けると、そこには国内外の王侯貴族達で会場は埋めつくされていた。

 アンジェリーナが緊張した面持ちで、ルノーの手を握る。ルノーは優しく握り返し、そっと背中を撫でた。

「アンジェ、ずっと傍にいるから」

 耳元でそっと囁く。

 無事アンジェリーナがスピーチを終え、息つく暇もないまま、今度は来賓達への挨拶回りが始まる。アンジェリーナはたくさんの来賓達と挨拶を交わしてるにも関わらず、毎回笑顔で丁寧に対応している。

 ルノーはそんなアンジェリーナが自分の配偶者なのだと思うと、誇らしかった。

 会場が賑わい、熱気に満たされる中、ホールの扉が開き、人々の視線が集中した。途端に、会場の雰囲気が緊張感に包まれる。

 扉を開けて入ってきたのは、大国シュテンスタイン王国を統べる若き王、ベルゼウスだった。漆黒の髪に鋭い漆黒の瞳、王となるべくして生まれた凛とした佇まいに、圧倒的なオーラが漂っている。

 その後ろには側近であり、ベルゼウスの右腕でもあるシルべスタインとユリウスを従えていた。ユリウスはかつてシャルール公国にスパイとして潜入し、一時期アンジェリーナの執事として仕えていたことがあった。その事実が明るみになり、一時期シュテンスタイン王国とシャルール公国で戦争が巻き起こるのではと危惧されたこともあったが、ベルゼウスとアンジェリーナの会見が行われ、無事にそれを回避することができた。

 ベルゼウスの纏う圧倒的なオーラに、自然と彼が歩く道が人々によって開かれていく。

 ベルゼウスは、ルノーとアンジェリーナの前で足を止めた。

「久しいな、アンジェリーナ」

 僅かに笑みを浮かべ、ベルゼウスがアンジェリーナを見やる。

「陛下、お忙しい中足を運んで下さり、ありがとうございます」
「他でもない、お前の特別な日だからな」

 ルノーが眉をぴくりと上げる。

 『他でもない』って……。アンジェが、特別な存在って意味なのか?

 ベルゼウスは、それからルノーへと視線を向けた。

「お久しぶりです、シュテンスタイン陛下」
「ソノワール公爵、いや、今は国王だったな。これからはお互い対等な立場として、俺のことは、ベルゼウスと呼んでもらって構わない。俺も、ルノーと呼ばせてもらおう」

 ベルゼウスは、ユリウスを一瞥した。

「ルノーとアンジェリーナには、俺の家臣の謀略により、すまないことをしたと思っている。
 シャルール公国とシュテンスタイン王国、これからは国交を活発にして盛んに交流できるよう、尽力を尽くそう」
「ベルゼウス殿、ありがとうございます」

 シュテンスタイン王国は大国だけあって、資源も豊富で産業も活発な国だ。これからシュテンスタイン王国との交流が盛んになれば、シャルール公国にとっても経済が豊かに発展することになるだろう。

 確かにシュテンスタイン王国にはいい思い出はないが、これからはシャルール公国の国王として、国家の繁栄と国民の幸せのためにシュテンスタイン王国と強力な友好関係を築いていかなければならない。

 ベルゼウスはシルべスタインから美しく包装された箱を受け取ると、アンジェリーナに手渡した。

「アンジェリーナ、これは私からだ。開けてみろ」
「は、はい……」

 開けてみると、そこには美しい彫刻の刻まれた小瓶が入っていた。

「シュテンスタインで開発された、新種の薔薇から搾りとったエキスで作った入浴剤だ」

 アンジェリーナが小瓶の蓋を開け、鼻を近づける。

「わぁ……芳しい匂いですね。とても気品に満ちていて……」

 すると、ベルゼウスがふっと笑みを溢す。

「その新種の薔薇の名前は『ベルゼウス』と名付けられた」
「ッッ!」

 それを聞いて、ルノーの顔が曇る。

 薔薇の名前とはいえ、『ベルゼウス』と名前のついた入浴剤にアンジェが浸かるなんて……絶対に嫌だ。

「薔薇の香りには催淫効果があるそうだ。
 ……アンジェリーナの乱れる姿を見てみたいものだな」

 そう言って優美にアンジェリーナの顔を覗き込むベルゼウスに息を呑むルノーと、顔を真っ赤にして俯くアンジェリーナを見て、ベルゼウスが満足そうに微笑む。

「冗談だ」

 ッッ……まさか、ベルゼウスにこんな悪戯を仕掛けられるとは。

「『氷の公爵』と呼ばれたルノーにこのような顔をさせられるのは、アンジェリーナだけだな。
 おもしろいものを見せてもらった」

 ベルゼウスがそう言って目を細めた後、ルノーに手を差し出した。

「悪いが、今日は挨拶だけに出向いた。この後、公務の為、我が国に急ぎ戻らねばならない。
 近いうちに会談を設けたい。これからよろしく頼む、ルノー」

 ルノーもそれに応えて、力強く手を握った。

「ベルゼウス殿、こちらこそよろしくお願いします」
「ではな」

 ベルゼウスはマントを翻し、去っていった。
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