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今カレ振って、好きな人に告白するつもりが、順番間違えて修羅場になっちゃいました

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 ど、どうしよう……
 翼くんと、ふたりきりになっちゃった。

 放課後の補習クラス。まさか翼くんとふたりだけだなんて、思わなかった。しかも先生、呼び出し受けて後でプリント職員室に提出しろっていなくなっちゃうし。

「美奈ちゃんとふたりきりになれて嬉しいな」

 光に透けそうなライトブラウンの髪を掻き上げて、天使のような微笑みで私を見つめてくれる翼くん。あぁ、そんなのもう、絶対に好きになっちゃうから。

 翼くんは1ヶ月前にうちの高校に転入してきた。親の転勤で引っ越してきたんだって。

 翼くんをひとめ見た時から気になってたんだけど、それから喋ったり、一緒に委員をやったりするうちにどんどん好きになってた。

 でも……そこには、問題があって。

「美奈ちゃんって、3組の近藤くんと付き合ってるって聞いたんだけど、ほんと?」

 ングッ……知ってたんだ。

「残念だなぁ。美奈ちゃんが、彼氏もちじゃなかったら告ってたのに」

 私の顔を覗き込んで、きゅるるんとした瞳で見つめられたら……意識がぶっ飛んで、口走ってた。

「別れた! 別れたの!!
 智司、とは……」

 うわっ、私、何言った今!?
 確かに翼くんのことを好きになっちゃって、智司に対して申し訳ない気持ちになって、別れ話を言い出さなきゃとは思ってたけど……いざとなると言い出せなくて、結局ずるずる付き合ってるくせに。

 翼くんが目を丸くして、可愛い顔を近づけてきた。

「え、別れたの? ほんとに?」



「う、うん……
 だって私……翼くんのこと、好きになっちゃったから」



 うわーっ、言っちゃった!!
 ちょっと順番が先になっちゃったけど、この後すぐに智司に別れるって言えばいいことだし、大丈夫だよね?

「美奈ちゃんも僕のこと好きだったなんて、嬉しい……」

 蕩けるような笑顔で私を見つめると、翼くんが私に唇を寄せてきた。

 翼くんとキス、なんて……夢みたい。

 瞳を閉じて、翼くんの唇が触れかけた瞬間……

 ガラガラーッ!! 

 勢いよく教室の扉が開いた。

「美奈、おめぇ何してんだ!!」
「ッッ智司!!」

 え、え、なんでここにいるの!?

「お前、今日俺と帰るって約束してただろーが!!」
「え、嘘!? やだっ、忘れてた!!」

 そういえば昨日、智司から一緒に帰ろうって言われてたんだった。補修受けることになって、翼くんとふたりきりになって、すっかり頭から抜けてたー!!

 智司がずかずかと翼くんに歩いていくと、いきなり左頬を殴りつけた。

「ちょ、智司!! やめてよ!!」
「てめぇ、ふざけんな!! 美奈にちょっかいだしやがって!!」

 翼くんは軽く吹っ飛び、机に頭を思いっきりぶつけた。

「いててて……近藤くん、美奈ちゃんと別れたんでしょ?」
「ハァ? 別れてねーし!!」
「で、でも……美奈ちゃんが、別れたって言ってたよ……」

 智司が私を見つめて、眉を寄せた。

「どういうことだよ?」

 智司に凄まれて、嘘なんてつけなかった。

「ご、ごめん!!
 ほんとは先に智司に別れ話をするつもりだったんだけど……なんか翼くんといい雰囲気になったから、つい口が滑って告っちゃったの。だから智司、別れて!!」
「お前、サイテーだな」

 智司が翼くんに歩み寄ると、ぶっきらぼうに手を差し出した。翼くんはちょっと躊躇いつつも、その手を握り、助け起こしてもらった。

「お前みたいな女、こっちから願い下げだ。
 本前、済まなかったな……お前のせいじゃなかったのに、殴っちまって。
 じゃ、俺いくわ」

 そう言って、智司が教室を出て行った。

 ど、どうしよう……智司のこと、傷つけちゃった。

 そう思いつつも、智司が別れてくれたことにホッとしてもいた。これでちゃんと、翼くんと付き合うことができる。

 翼くんを振り返ると、唇の端が切れてた。

「翼くん!! 血が……」

 ハンカチを手渡そうとすると、押し退けられた。

「いい。
 君がそんなアザとい女だったなんて、気づかなかった。もう僕に、話しかけないで」

 翼くんが見下すような目つきで私を見下ろし、去って行く。

 う、嘘……
 待って、違うの!!
 タイミングを間違っただけなのーー!!

 なんでこうなるのよーーっっ!!

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