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悪魔のように美麗な執事に恋に堕ちてしまった私は、悪役令嬢となって婚約者をヒロインに差し出すことにいたしました
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警察での取り調べを受け、私はハナ嬢のティーカップに毒薬を入れたことを自供しました。証拠がいて証人がいる以上……否認しようがありません。
事情聴取が終わると警察の方に引っ張られて、留置所へと入れられました。
狭い牢屋の中には既に5人もの女性が座り込んでいて、ジッと私を見つめています。ボロボロの服を着て歯がほとんど抜けてるおばあさん、娼婦のような胸が丸見えのドレスを着た若い女性、今にも噛みつきそうな目つきで睨んでくる中年の女性、全てを諦めたかのように背を向けて座るガリガリに痩せた女性、そして……煤けた汚い顔にボロボロの服を着た幼い女の子がいました。
据えた臭いが鼻をつき、思わず吐き気が込み上げてきます。明らかに不潔で不衛生で、こんな場所には一秒だっていたくありません。
牢屋の檻の前で茫然としていると、歯がほとんど抜けているおばあさんが不気味な笑いを浮かべながら近寄ってきました。
「あんたぁ、いい服着てんじゃなぁいかぁい」
「ヒッ」
ドレスに触られ、背筋がゾクリと震え、寒気が全身に走ります。
「このネックレスの宝石、本物かい? あたしにおくれよ」
目敏くドレスに隠れたネックレスを見つけると、老齢とは思えない素早さで私の首から奪いました。
「や、やめてくださいっっ!!」
その時、見回りの看守が怒鳴りました。
「うるさいぞ、静かにしろ!!」
それからおばあさんの手にあるネックレスを見つけ、ニヤリと下卑た笑いを浮かべて手を檻へと差し出しました。
「ばあさん、それをこっちによこしな」
「いやだよ!!」
おばあさんが私のネックレスをギュッと抱きしめて首を振ると、もう片方の看守の手に握られていた鞭がしなり、床にビシッと叩きつけました。
「このばばあ、また鞭打ちの刑を受けたいか!」
「チッ……」
おばあさんが私のネックレスを看守に渡し、受け取った男は去って行きました。
こんなところで、私は過ごさなくてはいけないのですね……
へなへなと冷たい床に座り込み、愕然としました。
この留置所で裁判が始まるまで過ごし、裁判の日、ブラック・マリアと呼ばれる護送車で運ばれ、判決を受けると今度は監獄へと運ばれます。
監獄での生活は、留置所よりも更に酷いものだと聞いています。重労働に不味い食事、固いベッド……栄養も衛生状態も劣悪な環境の中で過ごさなくてはなりません。
あぁ、どうしてこんなことになったのでしょう。
私は、ただ……リチャードに、愛されたかっただけなのに……
『どうやら、言い逃れは出来なくなったようですね。
ビアンカお嬢様、残念です』
最後に聞いたリチャードの言葉を思い出し、胸が絞られるように痛くなります。
リチャードは、最初から私のことを愛してなどいなかったのでしょうか。
私はただ……彼に、弄ばれただけなのですか。
そう考えたら鼻の奥がツンと痛くなり、瞳の奥から涙が溢れてきました。
「ッッ……ウッ、ウッ、ウグッ……」
あぁ、私は……リチャード、貴方さえいればそれで良かったのに。
貴方だけが、欲しかったのに。
今の私は、悪役令嬢となり、全てを失ってしまいました……
冷たく固い床で、乾くことのない涙で頬を濡らし、眠れぬ一夜を過ごしました。
翌朝、意識が朦朧としている私に、看守が呼びかけました。
「ビアンカ・ソフィアーノ・ウィンランド、牢から出ろ。取り調べだ」
え。取り調べなら、昨日終わったはずですのに……
不審に思いながらも、狭く汚い牢屋から一時でも出られることに安堵しました。
取調室に入ると、昨日と同じ警察の方が座っていて、テーブルには小瓶が置かれていました。
「おい、どういうことだ!」
「どういうことだ、と申しますと……?」
「この小瓶、調べてみたが、中は単なる水だった。毒薬ではなかったのだ。
お前、毒薬をどこにやったのだ!!」
毒薬ではなかった!?
でも、確かに小瓶はあれで間違いないはずですのに……
「犯行の行われたガーデン、お前の部屋だけでなく、家中のいたるところを隅々まで調べさせたが、それらしきものは何も見つからなかった。
ビアンカ、白状しろ。お前はあの毒薬をどこで手に入れたんだ?」
昨日は証拠がある上に私があっさりと自供したため、余裕を見せていた警察が、今日は焦った表情を浮かべています。
あの毒薬は……リチャードから手に入れたもの。
けれど、それを話せば……この殺人未遂にリチャードが関与していることが分かってしまい、彼も捕らえられてしまいます。
裏切られたのですから……裏切り返せばいい。
彼が、真の主犯格なのだと訴えればいいのです。
そう、私の中の悪魔が囁きます。
「さぁ、言うんだ!
この毒薬の出所を吐け!!」
警察に迫られ、喉が鳴りました。
「あの、毒薬は……」
事情聴取が終わると警察の方に引っ張られて、留置所へと入れられました。
狭い牢屋の中には既に5人もの女性が座り込んでいて、ジッと私を見つめています。ボロボロの服を着て歯がほとんど抜けてるおばあさん、娼婦のような胸が丸見えのドレスを着た若い女性、今にも噛みつきそうな目つきで睨んでくる中年の女性、全てを諦めたかのように背を向けて座るガリガリに痩せた女性、そして……煤けた汚い顔にボロボロの服を着た幼い女の子がいました。
据えた臭いが鼻をつき、思わず吐き気が込み上げてきます。明らかに不潔で不衛生で、こんな場所には一秒だっていたくありません。
牢屋の檻の前で茫然としていると、歯がほとんど抜けているおばあさんが不気味な笑いを浮かべながら近寄ってきました。
「あんたぁ、いい服着てんじゃなぁいかぁい」
「ヒッ」
ドレスに触られ、背筋がゾクリと震え、寒気が全身に走ります。
「このネックレスの宝石、本物かい? あたしにおくれよ」
目敏くドレスに隠れたネックレスを見つけると、老齢とは思えない素早さで私の首から奪いました。
「や、やめてくださいっっ!!」
その時、見回りの看守が怒鳴りました。
「うるさいぞ、静かにしろ!!」
それからおばあさんの手にあるネックレスを見つけ、ニヤリと下卑た笑いを浮かべて手を檻へと差し出しました。
「ばあさん、それをこっちによこしな」
「いやだよ!!」
おばあさんが私のネックレスをギュッと抱きしめて首を振ると、もう片方の看守の手に握られていた鞭がしなり、床にビシッと叩きつけました。
「このばばあ、また鞭打ちの刑を受けたいか!」
「チッ……」
おばあさんが私のネックレスを看守に渡し、受け取った男は去って行きました。
こんなところで、私は過ごさなくてはいけないのですね……
へなへなと冷たい床に座り込み、愕然としました。
この留置所で裁判が始まるまで過ごし、裁判の日、ブラック・マリアと呼ばれる護送車で運ばれ、判決を受けると今度は監獄へと運ばれます。
監獄での生活は、留置所よりも更に酷いものだと聞いています。重労働に不味い食事、固いベッド……栄養も衛生状態も劣悪な環境の中で過ごさなくてはなりません。
あぁ、どうしてこんなことになったのでしょう。
私は、ただ……リチャードに、愛されたかっただけなのに……
『どうやら、言い逃れは出来なくなったようですね。
ビアンカお嬢様、残念です』
最後に聞いたリチャードの言葉を思い出し、胸が絞られるように痛くなります。
リチャードは、最初から私のことを愛してなどいなかったのでしょうか。
私はただ……彼に、弄ばれただけなのですか。
そう考えたら鼻の奥がツンと痛くなり、瞳の奥から涙が溢れてきました。
「ッッ……ウッ、ウッ、ウグッ……」
あぁ、私は……リチャード、貴方さえいればそれで良かったのに。
貴方だけが、欲しかったのに。
今の私は、悪役令嬢となり、全てを失ってしまいました……
冷たく固い床で、乾くことのない涙で頬を濡らし、眠れぬ一夜を過ごしました。
翌朝、意識が朦朧としている私に、看守が呼びかけました。
「ビアンカ・ソフィアーノ・ウィンランド、牢から出ろ。取り調べだ」
え。取り調べなら、昨日終わったはずですのに……
不審に思いながらも、狭く汚い牢屋から一時でも出られることに安堵しました。
取調室に入ると、昨日と同じ警察の方が座っていて、テーブルには小瓶が置かれていました。
「おい、どういうことだ!」
「どういうことだ、と申しますと……?」
「この小瓶、調べてみたが、中は単なる水だった。毒薬ではなかったのだ。
お前、毒薬をどこにやったのだ!!」
毒薬ではなかった!?
でも、確かに小瓶はあれで間違いないはずですのに……
「犯行の行われたガーデン、お前の部屋だけでなく、家中のいたるところを隅々まで調べさせたが、それらしきものは何も見つからなかった。
ビアンカ、白状しろ。お前はあの毒薬をどこで手に入れたんだ?」
昨日は証拠がある上に私があっさりと自供したため、余裕を見せていた警察が、今日は焦った表情を浮かべています。
あの毒薬は……リチャードから手に入れたもの。
けれど、それを話せば……この殺人未遂にリチャードが関与していることが分かってしまい、彼も捕らえられてしまいます。
裏切られたのですから……裏切り返せばいい。
彼が、真の主犯格なのだと訴えればいいのです。
そう、私の中の悪魔が囁きます。
「さぁ、言うんだ!
この毒薬の出所を吐け!!」
警察に迫られ、喉が鳴りました。
「あの、毒薬は……」
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