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王子様の告白
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「わかってる、分かってるが……何かがおかしいんだ。君と時間を過ごせば過ごすほどに、私の気持ちは遠く離れていく。心のどこかで、何かが違うと訴えてるんだ。
そして、そう思うたびに……私の心には、別の女性が浮かび上がってくるんだ。
アナスタシア。私の好みの容姿ではないはずなのに、どうしてだか気になるんだ。彼女と喋っていると楽しくて、心が癒される。
どうしてなのか、分からない。だが、私はきっと……彼女に惹かれているのだと思う」
胸が一気に膨らみ、ドバッと熱い感情が溢れてきました。
プリンス・チャーミング……
涙が零れ、全身が喜びで震えます。
私がそっと手を触れますと、まるで魔法でもかかっているかのように扉が大きく開きました。
その先には、ギョッとしたように吃驚するシンデレラと目を大きく見開く王子様がいました。
「あ、あぁ……」
シンデレラはまるで私を化物か幽霊のように見つめています。
王子様が、私に歩み寄りました。
「アナスタシア……なぜ君が、ここに?」
「プリンス・チャーミング……」
私は目尻を拭い、王子様を真っ直ぐに見つめました。
「貴方がお好きなのは私の容姿だけ。容姿が変われば、もう私のことなど愛してもらえないと思っていましたわ。
王子様のそのお言葉を聞けて、とても……嬉しいです」
「え、どういうことなんだ!?」
腑に落ちない表情を浮かべた王子様に、私は少し躊躇いながら説明します。
「私……元はシンデレラでしたが、アナスタシアお姉様と役を交代しましたの。きっかけは、アナスタシアお姉様が一度でいいから王子様と結婚したいと言い出したことでした。私も、一度は悪役令嬢になりたかったという理由で快諾いたしました。
けれど、本当の理由は……王子様のお心を知りたかったのです。
私はずっと、不安でした。王子様は私の容姿だけに惹かれて恋に落ち、結婚されたのではと。と同時に私もまた、自分の王子様への愛を疑っておりました。王子様に見染められたから、恋に落ちたのではないかと。
けれど、シンデレラとなったアナスタシアお姉様と王子様が近づき、婚礼の運びとなり、私は本当に王子様を愛しているのだと気づきました。
そして、王子様はやはり私の容姿しか見てくれていなかったのだと……落ち込みました」
王子様は私の言葉を聞き、唇を噛みました。
「すまなかった……確かに私は、美しいシンデレラをひとめ見て恋に落ちた。けれど、容姿だけでは私の妃は務まらない。私を、国を統べる国王となる私を支えてくれる妃には、今のシンデレラは相応しくない」
王子様が私の前まで歩いてくると、目の前で跪き、手を差し伸べました。
「容姿が変わっても、君はシンデレラ……私の愛する人であることに変わりない。
どうか、私と結婚してほしい」
「プリンス・チャーミング……」
そして、そう思うたびに……私の心には、別の女性が浮かび上がってくるんだ。
アナスタシア。私の好みの容姿ではないはずなのに、どうしてだか気になるんだ。彼女と喋っていると楽しくて、心が癒される。
どうしてなのか、分からない。だが、私はきっと……彼女に惹かれているのだと思う」
胸が一気に膨らみ、ドバッと熱い感情が溢れてきました。
プリンス・チャーミング……
涙が零れ、全身が喜びで震えます。
私がそっと手を触れますと、まるで魔法でもかかっているかのように扉が大きく開きました。
その先には、ギョッとしたように吃驚するシンデレラと目を大きく見開く王子様がいました。
「あ、あぁ……」
シンデレラはまるで私を化物か幽霊のように見つめています。
王子様が、私に歩み寄りました。
「アナスタシア……なぜ君が、ここに?」
「プリンス・チャーミング……」
私は目尻を拭い、王子様を真っ直ぐに見つめました。
「貴方がお好きなのは私の容姿だけ。容姿が変われば、もう私のことなど愛してもらえないと思っていましたわ。
王子様のそのお言葉を聞けて、とても……嬉しいです」
「え、どういうことなんだ!?」
腑に落ちない表情を浮かべた王子様に、私は少し躊躇いながら説明します。
「私……元はシンデレラでしたが、アナスタシアお姉様と役を交代しましたの。きっかけは、アナスタシアお姉様が一度でいいから王子様と結婚したいと言い出したことでした。私も、一度は悪役令嬢になりたかったという理由で快諾いたしました。
けれど、本当の理由は……王子様のお心を知りたかったのです。
私はずっと、不安でした。王子様は私の容姿だけに惹かれて恋に落ち、結婚されたのではと。と同時に私もまた、自分の王子様への愛を疑っておりました。王子様に見染められたから、恋に落ちたのではないかと。
けれど、シンデレラとなったアナスタシアお姉様と王子様が近づき、婚礼の運びとなり、私は本当に王子様を愛しているのだと気づきました。
そして、王子様はやはり私の容姿しか見てくれていなかったのだと……落ち込みました」
王子様は私の言葉を聞き、唇を噛みました。
「すまなかった……確かに私は、美しいシンデレラをひとめ見て恋に落ちた。けれど、容姿だけでは私の妃は務まらない。私を、国を統べる国王となる私を支えてくれる妃には、今のシンデレラは相応しくない」
王子様が私の前まで歩いてくると、目の前で跪き、手を差し伸べました。
「容姿が変わっても、君はシンデレラ……私の愛する人であることに変わりない。
どうか、私と結婚してほしい」
「プリンス・チャーミング……」
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