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私、脱走いたします!
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昨日はショックで泣き腫らして過ごしたので周りの景色など気に留める余裕もありませんでしたが、こうして日が暮れ、月明かりもない牢に閉じ込められていると、絶望的な気持ちになっていきます。
明日、王子様がシンデレラと御婚礼をあげる日に、私は罪人として遠い地へ流され……そこでは、どんな更なる絶望が待ち受けているのでしょうか。
フゥ……と息を吐くと、「チュー」と後ろで鳴き声がしました。振り返ると、ねずみさんたちがいます。
「え……どこから、いらしたの?」
ねずみさんたちは扉をよじ登り、鉄格子の向こうへと抜けると、ガリガリと音を立てて何かを削っています。
やがて……カーンと高い音がして、何かが落ちる音が響きました。
再びねずみさんたちが私の元へ戻ってくると、急かすように私の服を口で引っ張ります。
喉を鳴らし、ゆっくりと扉を押しますと……ギギーッと音を立てて、扉が開きました。床には齧られた南京錠が転がっています。瞳の奥が熱くなりながら、腰を落とし、ねずみさんたちを胸にそっと抱き寄せました。
「パーラ、スージー、ジャック、ガス……ほんとに、ありがとう」
慎重に彼らを下ろすと、私は階段を駆け下りていきました。
階段を下り切ったところには、番人の方が立っているはず。どうやって、突破したらよいのでしょう……
不安に思いながら扉を開きますと、そこには番人の方はおらず、代わりにブルーのが尻尾を振って私を見上げていました。
「ブルーノ! まぁ、あなたまで……」
ギュッと抱きしめて頭を撫でてやると、ちぎれんばかりに尻尾を更に激しく振りました。
このまま逃げるのが一番の策だということは分かっています。
けれど、ここを去る前にもう一度……ひとめだけでも、王子様にお会いしたいという気持ちが抑えきれませんでした。
目の前には王宮へと続く裏口がありましたが、ここも南京錠がかかっています。私の思いを察したねずみさんたちがみんなで南京錠に飛びつくと噛り付き、錠を壊してくれました。
「本当に、ありがとう。では、行ってまいります」
そう告げると、城内に踏み入れました。たとえシンデレラの企みを知らない人たちであっても、城内に忍び込んでいる私を見つけたら、ただではすみません。私は周囲を伺いながら、慎重に足を進めました。
冷たい廊下を歩いていると、扉の下の隙間から灯りが漏れている部屋がありました。そっと近づくと話し声が聞こえます。
「んねぇ、もう明日には結婚式を挙げるんだしぃ、私たちそろそろ夜伽をしてもいいんじゃないかと思うのぉ」
まとわりつくような甘ったるいシンデレラの声に、ビクッと躰を小さく震わせました。
ふたりは、これから……嫌っ。聞きたくありませんわ!
立ち去ろうとする私の耳に、王子様の声が聞こえました。
「申し訳ないが……君は、私の運命の人じゃない気がするんだ」
「何言ってるの!? 意地悪な継母と姉に虐められていたシンデレラは王子様と運命の出会いをして、結婚してハッピーエンドにならなくちゃいけないのよ!
あんたは私と結婚するって決まってるの!!」
シンデレラが感情的になり、非難の声を上げました。
明日、王子様がシンデレラと御婚礼をあげる日に、私は罪人として遠い地へ流され……そこでは、どんな更なる絶望が待ち受けているのでしょうか。
フゥ……と息を吐くと、「チュー」と後ろで鳴き声がしました。振り返ると、ねずみさんたちがいます。
「え……どこから、いらしたの?」
ねずみさんたちは扉をよじ登り、鉄格子の向こうへと抜けると、ガリガリと音を立てて何かを削っています。
やがて……カーンと高い音がして、何かが落ちる音が響きました。
再びねずみさんたちが私の元へ戻ってくると、急かすように私の服を口で引っ張ります。
喉を鳴らし、ゆっくりと扉を押しますと……ギギーッと音を立てて、扉が開きました。床には齧られた南京錠が転がっています。瞳の奥が熱くなりながら、腰を落とし、ねずみさんたちを胸にそっと抱き寄せました。
「パーラ、スージー、ジャック、ガス……ほんとに、ありがとう」
慎重に彼らを下ろすと、私は階段を駆け下りていきました。
階段を下り切ったところには、番人の方が立っているはず。どうやって、突破したらよいのでしょう……
不安に思いながら扉を開きますと、そこには番人の方はおらず、代わりにブルーのが尻尾を振って私を見上げていました。
「ブルーノ! まぁ、あなたまで……」
ギュッと抱きしめて頭を撫でてやると、ちぎれんばかりに尻尾を更に激しく振りました。
このまま逃げるのが一番の策だということは分かっています。
けれど、ここを去る前にもう一度……ひとめだけでも、王子様にお会いしたいという気持ちが抑えきれませんでした。
目の前には王宮へと続く裏口がありましたが、ここも南京錠がかかっています。私の思いを察したねずみさんたちがみんなで南京錠に飛びつくと噛り付き、錠を壊してくれました。
「本当に、ありがとう。では、行ってまいります」
そう告げると、城内に踏み入れました。たとえシンデレラの企みを知らない人たちであっても、城内に忍び込んでいる私を見つけたら、ただではすみません。私は周囲を伺いながら、慎重に足を進めました。
冷たい廊下を歩いていると、扉の下の隙間から灯りが漏れている部屋がありました。そっと近づくと話し声が聞こえます。
「んねぇ、もう明日には結婚式を挙げるんだしぃ、私たちそろそろ夜伽をしてもいいんじゃないかと思うのぉ」
まとわりつくような甘ったるいシンデレラの声に、ビクッと躰を小さく震わせました。
ふたりは、これから……嫌っ。聞きたくありませんわ!
立ち去ろうとする私の耳に、王子様の声が聞こえました。
「申し訳ないが……君は、私の運命の人じゃない気がするんだ」
「何言ってるの!? 意地悪な継母と姉に虐められていたシンデレラは王子様と運命の出会いをして、結婚してハッピーエンドにならなくちゃいけないのよ!
あんたは私と結婚するって決まってるの!!」
シンデレラが感情的になり、非難の声を上げました。
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