NightMare

マド

文字の大きさ
上 下
4 / 6

4・お菓子がきらいなおかしな姉弟

しおりを挟む
 森の中でパンの切れ端を見つけたならだいたいお話の予想はついた。……ということは、お菓子の家もあるのかな。森の奥に進むと、おそらく姉弟らしき子供がいた。女の子は赤いバンダナ、男の子は青いバンダナを頭にそれぞれつけていた。(お料理するとかにつけるやつですよ。)
 道に迷っていたのかはわからないけど辺りを見回していた男の子がこちらに気付いた。
「姉ちゃん!誰かいる!こいつ追っ手か!?」
 焦ったようにこちらを指差す男の子。
「いいえ、この人じゃないわ。きっと私たちみたいに迷った人よ。」
「そうやっていつも都合がいいように考えてるんだな。呑気なもんだな。」
「あいにく迷ったわけじゃないの。声が聞こえたから、誰かいるのかなって…」
 仲が良いわけじゃなさそうだけど…この男の子はどっかの黒猫さんみたい。
「そうなの…アレンが失礼をしてごめんなさい。ずっとお腹が空いているの。だから、カリカリしちゃてるみたいで…」
「…!じゃあ、このお菓子をあげる!少しだけど、ずっと空いているよりいいから…!」
 甘いものは子供が何よりも好きなもの。お腹が空いているならなおさら欲しい……大半は。2人は目を大きく見開き何か物理的でない精神的な恐怖を感じたかのように取り乱した。
「嫌だっ!そんなもの嫌いだ!」
「早くしまって!!」
 突如2人がポケットに入っていたらしいナイフを握りしめてこちらに向けてきた。
 わけがわからないままカゴの中にしまうと、少し落ち着いたようだった。

 何も喋らないままに三人で森の奥に進んでいった。少し先に開けた場所があり、泉が湧いていた。なんとも神秘的な場所で、そこで休憩をした。男の子は小鳥と遊んでいた。
「ごめんなさい。私たちは、お菓子の国からずっと逃げてきたの。お菓子の宮殿っていう場所があるんですけど、街の子供がみんなお城をたべていたの。」
「そのお城…お菓子でできているの?」
「まあ、勘がいいのね。」
 だいたい予想がつくので。でも、お菓子の家じゃないんだ。
「美味しそうだったから、私たちも交ざって食べたの。暫くして、宮殿の主が出てきたの。誰が食べたって聞いてきたの。そしたら一緒に食べていた子たちがそろって私たちの方を指差したの。もちろん違うって、みんなも食べたって言ったのに……誰1人聞いてくれなかった。」
「だからここまで逃げてお菓子を食べないって決めたんだ。」
 そう素っ気なく男の子が言った。
「でも何も食べないとお腹が空くから、木の実を探していたの。パンはもう無くなっちゃったから。でも街はお菓子の匂いがするところもあるから行けないんだ。」
 そっか…よし。
「じゃあ、わたしが何か探してくる。2人はここで待っていて!」
「え…でも………」
「いいの!あ、あなたたちの名前は……」
「わたしはエレン」と、赤い女の子。
「……アレン」と、青い男の子が言った。

 お城を出てきた時に比べれば、もう暗くなっていた。木の実を届けたら帰ろう。そう考えていると
「あ!おいしそう……!」
 真っ赤に熟れたリンゴがなった木が森をつくっていた。いくつか採ろうとしたその時。
「誰……わたしの森に勝手に入らないで………!」
 強い口調でどこからか声が聞こえてきた。気がつくと、リンゴを採ろうと上げていた手が下がらなくなっていた。
「!?……なにこれっ……!?」
 森の奥から声の主であろう人影が出てきた。その姿は………





 「毒リンゴは誰にもあげないよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...