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第4章 少年期〜青年期 学園3学年〜卒業編

26話 酒は飲んでも飲まれるな3

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(あぁ、可哀想に、これでもう社交界では生きていけなくなったな・・・南無(・人・))

 この時、横から見えたシベラスおじ様の顔はこれからこのターゲットのご令嬢をどう正論で叩きのめそうかと、楽しそうに目を輝かせていたのを僕はうっかり目撃してしまったので、心の中で合掌をしたのだった・・・・

シベラスおじ様「しかし、困りました。貴女の仰っている要求は通りません」

酒乱ご令嬢「何故よ!!それぐらいの誠意を見せるべきでしょう!?あの女は良くて私が駄目なんて言わせませんからね!」

シベラスおじ様「まず、基本的なことですが、我が国では余程の事がないと重婚する事はできません。ですので、ご存知でしょうが、カイヤトは今日すでに結婚をしております。これは我が国の司法で定められていますので、要求にお答えできないと申し上げているのです」

(あー、なんで急に弁償にカイ兄様と結婚させろなんて言い出したかと思ったら、そう言えば帝国は重婚OKの国だった、しかも男女どちらも養う経済力があれば人数も問わないって、結構適当な制度だったな(*´Д`*)・・・でも、うちの国は基本一夫一妻制だけど、特殊な血筋の場合その血筋を絶させない為に重婚できるって法律もあったな、それに多種族の風習とかでも許可が出れば重婚可能だったかな?他にも本家筋の子供ができないって時とかも許可があればできたはず・・・( ´ ▽ ` )しかし、今回はそのどれにも嵌まらないから無理ってね、てか、ただドレスが汚れただけでその要求は行き過ぎだし、そもそも、自分の投げたグラスのお酒が跳ね返ってきただけだし、それまでの間に自分が暴れて汚した部分や破れた箇所も人のせいにされても困るんだけど・・・(*´ー`*))

ジュール『それに、さっきまで自分が散々暴れて壊した物の弁償もしてないのに汚れたドレスの弁償のことだけ言うのはフェアじゃないよねぇ~』

夜月『全くだ、祝いの席の空気を台無しにしておいて図々しいな』

(そうだよねぇ~~( ^∀^))

 と、脳内でメッタメタにこき下ろしている内に、ご令嬢はさらにヒートアップしてきた。

酒乱ご令嬢「!!では、今すぐに離婚させればいいじゃない!そして私と結婚すればなんの問題はないはずよ!!それで、そこの子供が犯した無礼を無かったことにしてあげるわ!!」

「「「「「うわぁ・・・」」」」」

 いいことを思いついたと言わんばかりに、顔を真っ赤にさせた状態で渾身のドヤ顔をしたご令嬢、だが、この発言に周りで聞いたていた人達はドン引き、いくら酔っていても言って良い事と悪い事の分別もつかなくなっては、貴族令嬢として、いや人として失格だろうと、その場の全員が思った事だろう・・・

「・・・・・・」(何言ってんだこの人・・・)

 僕もこの発言には呆れてものが言えなくなった、そんな時、シベラスおじ様は・・・

シベラスおじ様「・・・時に、ダンシャンスー公爵令嬢、貴女先程、弁償と仰いましたが、こちらからも貴女様に弁償を問いたいものがあるのですが、よろしいですか?」

 と、笑顔のスルーの上で別の追求をし始めた。

酒乱ご令嬢「な、何よ!?何を私に弁償しろと!?私のドレス以上に高級なものはないはずよ!!それより私の要求に応えないの!?応えるの!?どっちなのよ!要求に応えない場合はそこの子供の罪をこの国の裁判で裁いて貰いますわよ!!」

「「「「「えっ!?」」」」」

シベラスおじ様「・・・なんと、そんな事を・・・」

 自分の周りの状態に気づきもせず、ご令嬢が自信満々に言い放った言葉に、僕のことを知っている全員が絶句、シベラスおじ様は眉根に皺つけて険しい表情をした。

酒乱ご令嬢「ふふんっ、ほらどうするのよ?いいの?そんな小さい子供と言っても、他国の高位貴族令嬢に無礼を働けば極刑だってあり得るのよ!?」

 ご令嬢はさらに得意げに話しているが、この場の誰もがこのご令嬢の言った言葉の愚かさに呆然としていることに気づいていなかった。

 そんな空気感の中、話題の元である僕はただジッとご令嬢を見ながら脳内で天華達と呑気に会話をしていたのだった・・・

(んー・・・、もしかして、このご令嬢、僕の事全然知らない?もしくはちゃんと認識できてない?( ̄▽ ̄))

天華『そうですね、酔っていて視界がちゃんと定まってないかもしれませんね?』

  本来なら、ご令嬢が言っている事はやや強引であるが、普通の貴族子息がご令嬢のような他国の代表として結婚式に参加している人、それも皇族の血を引く公爵家のご令嬢と言う地位の高い人に、わざとお酒をかけたとなれば国際問題となって、その貴族子息は貴族席から外され庶民落ち、爵位の低い貴族子息だった場合、最悪極刑になることもある、だが今回はそこに至るまでの経緯と酒をかけた相手である子息、つまり僕であったことで、話は違ってくる・・・、その事が僕はよく分かっているから冷静に今のご令嬢の状態を分析して、この場合どう決着を付けるべきか考えていると・・・

(そうかぁ、でもさっき目が合ったと思ったんだけどなぁ、凄い睨まれたし・・・あ、でも、僕を見て固まらなかったし、僕の事を髪色で呼んでたから、僕の顔をよく見てなかった?いや見えてなかったのかも…て事は、僕がカイ兄様の弟って事もまだ気付いてないかも?(*´Д`*))

天華『そうかも知れませんね・・・まぁそれはどうでもいいのですが、そろそろこのご令嬢に神罰を与えてもいいでしょうか?』

(おっとぉ?急にだね?罰与えるのは確定?ただの酔っ払いだよ?(*´ー`*))

 和やかに会話をしていると思っていたら急に殺意高めに“神罰“の執行の有無を聞かれて、僕は焦りつつ“神罰“は確定なのか確かめた。

ジュール『急じゃないよ!さっきからずーーっと我慢してたんだよ!あの人アトリーに理不尽な要求してくるんだもん!だからイライラしてたんだよ!でも、アトリーはあんな人でもただの酔っ払いの言ってることだからって、絶対、“自分からは神罰下さない“でしょう?だから、私達我慢してたんだもん!でも、あの人さっき、アトリーを裁判にかけて極刑にするとかって言ってたもん!だからもう我慢の限界!』

 どうやらジュール達は最初からご令嬢の態度にご立腹だったらしく、僕のどうせ酔っ払いが言ってるだけだからって、気にせず罪に問う気もないことを察して、ご令嬢の数々の暴言にも我慢をしてくれていたようだが、ついにさっきの発言で我慢の限界がきて、殺意高めに“神罰“を下そうとしていたらしい、でも、皆んなは勝手に“神罰“を下さずに、律儀にも僕に確認をしてくれて、ちょっと嬉しくなって顔が綻んだ。

(あらあら、我慢の限界かぁ・・・ん?今、ジュール、僕が“自分で神罰下さない“って言った?・・・僕って“神罰“下せるの??)

夜月『あぁ、さっき“神力“の使い方の説明で言い忘れていたが、アトリーはもうすでに“現人神“という神の一種となっているから、当然“神罰“を下す事ができる、だがそれは天上の神々が下す“神罰“より制限があるので、今回は主神様が下すから心配するなと、仰ってるぞ』

(!?ちょっ、ちょっと待って!Σ('◉⌓◉’))

ジュール達『『『ん??』』』

(その“神罰“まった!なんか、凄い軽く説明されて、さらに軽くご令嬢の“神罰“決行を言い渡さないでくれるかな!?まずは“神罰“の詳しい説明を先にお願いします!!そして、ご令嬢への“神罰“の内容は要相談で!!( ゚д゚))

 憤るジュール達をこれからどう宥めようかと考えていると、ふと、ジュールの言葉から聞き逃せないワードを聞いてしまった僕は、サクサク話を進めようとしてくる夜月に僕は慌てて待ったをかけた。
 待ったをかけた時に同時に振り向いて首を傾げる3人は可愛いがそれどころでは無かった・・・

 僕がそんなやり取りをしている間にソルやシベラスおじ様と、その他の周囲の人達は恐る恐る僕の反応を伺っていた。その事に気づいた僕はおじ様に向けてちょっと待ってと手を挙げて、こちらにも待ったをかけたまま“神罰“に関する説明を天華達から聞く事に、そして僕のハンドサインを理解したおじ様は頷いてまたご令嬢と向き合った。

「よし、じゃあ、教えてくれるかな?」

 僕はそれを見てその場でしゃがんでジュール達との目線を合わせて、スキルの“並列思考“を発動させ説明をまった。

天華『では、まず・・・・』

 と、心の内側で始まった説明とは別に、僕は外側の思考でシベラスおじ様のご令嬢とのやり取りをもちゃんと見聞きしていた、それがこのやり取りです・・・

シベラスおじ様「・・・ふぅ、まだ猶予はあるようですね・・・ダンシャンスー公爵令嬢、先程の発言を取り下げるなら今ですよ、いくら貴女でも言って良い事と悪い事があります」

酒乱ご令嬢「何ですって!?私に非があるとでも!?」

シベラスおじ様「貴女は今本当にこの状況が理解できていますか?」

 シベラスおじ様はご令嬢に親切心から警告を出したが、いまだに自分の置かれている状況が見えてないご令嬢に、険しく真剣な表情でゆっくりと確認した。

酒乱ご令嬢「えっ、はぁ?な、何の事?」

シベラスおじ様「貴女が裁判にかけると言っている子供が誰か本当に分かってないんですか?」

 ご令嬢はシベラスおじ様の真剣な表情を見て、少し戸惑ったがそれでもまだ理解ができていないようだったので、おじ様は質問を変えて再度ご令嬢に確認を取った。

酒乱ご令嬢「子供?あの銀髪の?・・・白っぽい銀髪・・・っ!?も、もしかして!?」

 と、暴れて少し酔いが覚めてきたのか、それともシベラスおじ様の話をちゃんと聞く気になったのかは分からないが、今の問いかけでやっと理解が追いついてきたようだ。銀髪の子供と言うワードで自身が不敬罪で裁判にかけようとしていた子供の正体にようやく思い至ったのだろう、サッと顔色を青ざめさせ、ガタガタと震え始めた。

シベラスおじ様「ようやく、酔いが覚めて来られたようですね。ご想像の通り、あの子はデューキス公爵家当主の三男、アメトリン・ノブル・デューキスです。ご存知の通り、神々から多大な寵愛を受けています。そんなあの子に貴女は理不尽な要求を迫ったのですよ。お覚悟はよろしいですか?」

酒乱ご令嬢「ひっ!・・・そ、そんな、私にお酒を掛けたのはあの子なのに・・・・」

シベラスおじ様「・・・まだ自分の置かれている状況を理解できていませんか?よくご自分の周りをご覧なさい」

酒乱ご令嬢「え?・・・・っ!?こ、これは・・・私が?・・・」

シベラスおじ様「そうです。貴女がこの場をこのような惨状にしたのですよ?お酒を嗜まれるのは構いませんが、限度というものがあります。それに貴女は覚えているか分かりませんが、先程会場を回っていたカイヤト夫婦にも絡んでおられたのですよ?「えっ!?・・・あっ・・・」多少は思い出されたようですね。ではその調子でご自身がなさった事を辿って思い起こしてみてください」

 と、僕の正体に気づいてもなお、保身に入ろうとしたご令嬢に、シベラスおじ様は畳み掛けるようにご令嬢に自分がした現実を突きつけていく。そしてご令嬢はみるみる顔色を青から白へともっと血の気が引いて行って、最後には座り込んで頭を抱えてしまった。

酒乱ご令嬢「そんな、そんな、私もうお終いだわ、お父様になんて言えば・・・こんな醜態を・・・」ぶつぶつっ

 頭を抱えたままぶつぶつと悲壮感漂う声で自身の醜態を自覚し涙を流しながら呟いていた。周囲の人達は自業自得だとった表情や哀れみを含む視線で、そのご令嬢を遠巻きに見ていたのだった・・・

シベラスおじ様「はぁ、気づくのが遅すぎましたね。ですがご自身のなさった事の重大性はもうお分かりになりましたね?では、後はこれからご自身に降りかかる“神罰“をただ粛々と受け止めて反省なさってください。それが今、貴女にできる最後の選択肢です」

 そう突き放すように言ったシベラスおじ様は、ご令嬢を哀れんだ目で冷たく見つめたのだった・・・・

(シベラスおじ様マジ容赦ないな・・・ご令嬢魂抜けとるんじゃないか?(*´Д`*))

 僕はこの時ちょっぴりご令嬢に同情してしまった。


















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